「学歴別初任給」廃止で問われる人事の実力 〜新卒の給与決めは難しい〜

2017.03.23

昨日よりラック社の ”新規卒業者採用における「学歴別初任給制」廃止を決定”のニュースが話題になっています。本件について代表の個人的な思いを書きたいと思います。

ネット上では賛否両論

ネット上でも賛否両論ですが、ネガティブな反応としては下記のようなものがあります。

・2017年卒を対象にしているが後出しジャンケン感がある
・学歴の価値を低く見過ぎている

逆に前向きな議論としては下記のようなものがあるようです。

・大学教育の真価が問われる
・高度情報処理技術者資格やIT競技会での成績など実力主義を歓迎

今、このタイミングで2017年4月の新卒についてのリリースを出すには少し遅いというのはネット上の意見の通りですが、その他の大学教育の真価が問われるなどは本質的な問いで非常に有意義な議論だと感じました。

ちなみにこのあたりの詳細はねとらぼの以下の記事に詳しいです。

学歴初任給制を廃止するとともに、業務能力や専門能力に応じて初任給額を増額する制度。
ラックの学歴別初任給制廃止で波紋 “院卒初任給が下がる”指摘に担当者「院卒初任... - ねとらぼ

 

「学歴別初任給制」の廃止は今後増えていく

賛否両論はあれど、「学歴別初任給制」の廃止は今後増えていくと思います。例えば、10年前の就職活動では、リーマンショック前なので、外資系の金融機関や戦略コンサルが人気絶頂でそこには多くの優秀な大学生・大学院生が集まっていました。もちろん職種としての魅力もありますが、当然大手商社やメーカーより新卒給与は高いですし、その後も実力次第で早く給与が上がることもあって人気が高い印象でした。ただ、この時点では「学歴別初任給制」は維持されており、日系大手企業との比較感でした。

その後、ソシャゲブームの際にゲーム大手が新卒年収を1000~1500万円までを上限とする企業が出現し、ある種「学歴別初任給制」はゲーム業界で一度廃止に近い状態になっています。

「売り上げも利益も2倍」「利益率70%は当たり前」「儲かりすぎてヤバイ」。かつてのバブルの頃ではない、今のスマホ周辺業界の話だ。この1年で一気に爆発したスマホ業界で、何が起こっているのか。 スマホの代表格
DeNAの初任給1000万円、グリー1500万円で分かるスマホブーム - ライブドアニュース - ライブドアニュース

 

また、以下の記事にもある通り、Googleが東大院生を1500万円以上で採用しにきているという話も出ていています。

『グーグル:東大で「青田買い」 AI技術流出に日本危機感』という毎日新聞の記事を読んだ。 私はGoogleの人事・給与体系についてなにも知らないし、人工知能を研究する東大の院生に15万ドルの給与を提示したという話の真偽も分からない。ただ、私は事実であって欲...
Googleが東大院生を15万ドルで「青田買い」することについて - 辺境社会研究室

 

特にスキルがある程度デジタルに測れる”エンジニア”や”アカウンティング”、”研究者”などは、新卒でも能力値が見えやすいので実力による給与決定に取り組みやすい職種です。従って、これらの職種で初任給制度を廃止した上で、給与も含めて優秀な大学生、大学院生に魅力付けを目指すことは採用上の大きな差別化になっていくはずです。

「学歴別初任給制」の廃止は採用・人事担当者の力量が問われる

採用・人事側の見解としては、この取り組みを通して一番感じることは、実力で新卒の給与を決めるのは難易度が高く採用・人事担当の実力を問うものになると感じます。

最近、大手の製造業や金融系がAIやIoTの文脈でソフトウェア人材を積極的に採用している話を伺います。その中で課題となるのが給与テーブルが既存社員と合わないことだそうです。特に外資系の企業で活躍していた人は、年収が高い傾向にあり、日系大手に転職すると最初から年収を下げること求められるため、検討の対象にならないといった話も聞いています。

これは、中途採用であっても給与テーブルを守らずに優秀な人材を採用することがいかに調整難易度が高いかを物語っています。

新卒については入社後の同期や同僚との給与差に対する不満や本人に対する納得性を醸成する上でも非常に難易度の高い挑戦になると思います。

大学の真価が問われる

大学の価値が問われるようになるというのは日本社会にとって非常に価値のあることだと思います。

以下の代表ブログにも書いていますが、日本はジョブディスクリプション(職務記述書)が曖昧で機能しておらず、”仕事”と大学での”学び”があまりにつながっていないことを強く危惧しています。またその結果、大学生が大学で真剣に勉強する価値がない問題が発生しています。

今週、共同創業者と1日時間をとり、Findy(ファインディ)のミッションについて話そうと思っています。まずは、その前提となる自分の考えをまとめてみました。今日はタイトルの通り、なぜ起業しようと思ったか、そのきっかけについて書きたいと思います。 仕事と学びを...
仕事と学びをつなぐために起業した | Findyブログ - Findyブログ

初任給制度が廃止されると、”学び”の価値がそのまま就職先やそこで給与水準に紐付くので当然、やる気も変わってくるし、大学の評価もよりシビアなものになっていくと思います。

実力を身につけた学生には有利な時代

今後、日本社会が人口減少時代に入る中で、優秀な若手を採用することの難易度が加速度的に上がっていくと感じています。実際に採用の現場でも優秀な若手の採用は常にトップイシューです。

以下の個人ブログにも書いた通り、先を見据えて動いている最近の学生はめちゃめちゃ優秀です。学生時代の前半に海外で事業立ち上げを経験した上で、帰国後にプログラミングを学んで、といった社会人以上にはるかにできる人もいます。


404 File Not Found - yuichiro826.com

 

出せる価値に応じて給与や機会を提供できる会社でなければ、彼らを魅きつけることはできません。一方で学生にもそうした選択肢があって選べるというのが大切だと思います。

以上、昨日より話題になっているラック社の「学歴別初任給制」廃止に関しての個人的な意見でした。リリースのタイミングの課題は改善が必要ですが、こうした取り組みとそれに基づく議論が起きることは非常に良い傾向だと思っています。いよいよ人事は”大変”だけど、新しい仕組みを作るやりがいある時代になってきますね。

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