星野リゾート、JapanTaxiが推進するデジタルトランスフォーメーションの取り組みとは?【DX-Lab #2 イベントレポート】

2019年12月10日、社内でのIT・Web戦略やエンジニア組織づくり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む方に向けたイベント「「宿泊体験・移動体験のデジタル化。星野リゾート、JapanTaxiが推進するデジタルトランスフォーメーションの取り組みとは?【DX-Lab #2】」」がdock-Kamiyacho にて開催されました。

エンジニア採用支援サービス「Findy」のリリース後、1000社以上のクライアント企業とお会いする中で、特に大手企業やIT・Web業界以外の企業の方から、エンジニア組織づくりやプロダクト内製化、社内のデジタル化において、まだまだ多くの課題があることを伺いました。

一方で、サービスに登録しているエンジニアユーザーも、新たな価値貢献の場として、上記のような企業における採用・評価・育成なども担うエンジニア組織づくりや、DX推進担当に興味を持つ方も増えてきています。

そこで今回、ホテル産業・タクシー産業のDXを牽引する星野リゾートとJapanTaxiにおける、システム開発内製化やエンジニア組織立ち上げの成功事例や苦労などを共有いただくイベントを開催。それぞれのゲストからの発表、そしてパネルディスカッションを行いました。そのイベントの模様をお届けします!

■登壇者プロフィール


藤井 崇介/株式会社星野リゾート
開発会社でWebシステム関連の開発を経験後、星野リゾートに入社。現在は、星野リゾートの予約・販売関連のシステム開発責任者を担当している。入社後は、DevOps分野に興味を持っており、社内のスクラム導入なども行っている。

吉田 翔/JapanTaxi株式会社
情報系大学院修了後、大手システム開発会社にて通信インフラおよびキャリア系の基幹システム、業務システムの開発を経験。その後、SORABITO株式会社を共同設立、CTOとしてサービス開発全体をリード。
2017年12月にJapanTaxiへサーバーサイドエンジニアとしてジョイン、その後、VP of Engineeringを経て、2019年10月より執行役員 兼CX部長も担当。

■モデレーター


山田裕一朗/ファインディ株式会社
同志社大学経済学部卒業後、三菱重工業、ボストン コンサルティング グループを経て2010年、創業期のレアジョブ入社。レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携等を担当。その後、ファインディ株式会社を創業。また、現在もHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)としてレアジョブに関わっている。

内製化に消極的だった星野リゾートの「エンジニア採用の競争戦略」

――本日は、星野リゾートの藤井さん、JapanTaxiの吉田さんのお二人にお越しいただきました。まずは、両社のDXへの取り組みについて、それぞれ10分ほどで発表いただきます。まずは、藤井さんからよろしくお願い致します。


藤井:

皆さま、こんにちは。星野リゾートの藤井です。私は、システム開発の会社で約10年ほど働いた後、星野リゾートに入社しまして、現在2年目。宿泊予約システム開発の責任者をさせていただいています。

星野リゾートは、実は私が入社する頃まで、エンジニアがいないような組織でした。そこからどうやってエンジニアを増やしていったのか、何のために増やしていったのか。今回は「エンジニア採用の競争戦略」というタイトルで、お話していきたいと思います。

私たち星野リゾートは、全国で約40近くのホテルを運営している会社です。私たちは数年にわたって、ひそかにデジタル化を進めてきました。多くのシステムを独自に開発していまして、予約システムや販売管理だけでなく、スタッフ稼働の生産性を分析するシステムや、財務管理や勤怠管理といったものも作っています。

ただ、もともとエンジニアの内製化については消極的でした。なぜかと言うと、星野リゾートはあくまでリゾートの運営会社。エンジニアが自社の中にいるイメージがまったくなく、「餅は餅屋」と考えられていました。つまりは、開発は専門とする外部のエンジニアに発注すべきだと。常日頃からそう言われていたために、内製化がまったく進んでいなかったんです。

一方で、外注でのシステム開発が、DX推進を妨げる要因になっていました。その背景の1つは、ビジネスの変化がここ数年でとても早くなったこと。ビジネスを拡張する時に、外部に発注していると、どうしてもスピードが遅くなってしまいます。

もう1つは、開発条件が単純でなくなったこと。10年くらい前なら、紙ベースの物をシステムにすればよかったので、かなり明確だったんですよね。ただ、ここ数年でITの技術が発展し、開発環境もだんだん複雑になりました。結果として、外注ベースだと予算と品質が合わなくなってきてしまった。

こうした背景があり、DXを推進するためには、内製化を進めなければならないと。小回りの利くチームが必要だということになったんです。


そこで考えられた作戦が、「既成事実を作ってしまおう」というものでした。つまりは、経営層に1人まずは入れてしまって、内製開発をするとこれだけメリットがあるんだよ、という作戦ですね。

その1人をどういう人材にすべきと考えたかというと、まず1つは星野リゾートの組織文化やビジネスに興味がある、星野リゾートの社員として必要なマインドを持っている人。2つ目が、スピーディにシステムを開発できたり、業務をきちんと理解して正しいものを作れる人。こういう人材が必要だということで、私が入社することになりました。

入社した時は実は、こんなことを求められてるとは知らず(笑)。聞いてから、これはまずいと思って、とにかく頑張った1年でした。身を粉にして働き、毎週リリースを行って、システムを改善し続けました。私が入社してからはその他にも、経営層がいる場でスケジュールの合意ができるようになったり、社内にシステムの改善状況が可視化できるようになったりしました。

これで、代表からも「来てくれて良かった」と、言ってもらえたんですが。ちょっと頑張り過ぎて、痩せて心配されまして……(笑)。限界だから人を増やそうということで、エンジニア採用を頑張り始めたという次第です。

ただ、エンジニアを採用するにも、経営層にどういったエンジニアが必要かを説明する必要がありました。そこでまず作ったのが、エンジニアの分類です。これを使って、例えば「今回のイベントは、”開発リーダー/テックリード”クラスの人たちがいるので、頑張らせてください」とか。時には、「”業界の著名人”クラスの人たちが来るので、会ってください」と伝えたりしていきました。


とはいえ、いきなり”業界の著名人”クラスを狙うのは難しいので、これから技術を伸ばしたい若手とか、開発リーダーになるような層を狙っていきました。ただ、ターゲット絞っただけでは採用できませんから、戦略を考える必要があります。

実は星野リゾートでは、『マイケル・ポーターの競争戦略』の考え方を採用しています。この本には、「競争市場の中で、真似されにくい独自の姿を確立し、それを維持する方法」が重要だと書かれています。これには3つのステップがあり、1つ目は「生産性のフロンティアを達成する」。2つ目が、「トレードオフを伴う活動を選択する」。3つ目が「活動間にフィット感を生み出す」ことです。


生産性のフロンティアというのは、エンジニア業界で言えば、能力の高いエンジニアを採用するためには、エンジニアに提供する価値もそれに見合ったものでなければいけない、ということ。

その中にあるものとして、1つは「仕事の面白さ」。例えば、海外のビジネス展開に携われるとか、経営者に近いところで働けるとかですね。2つ目が「得られる技術」。エンジニアは当然、自身のスキルを伸ばしたいわけです。なので、新しい技術を使えたり、セミナーなどに参加しやすい環境を作りました。3つ目は、よく言われている「働きやすさ」ですね。希望を聞いてできる範囲で調整をおこなったり、制度を整える働きを社内にかけていきました。

ただ、ここで言っているのは、良いエンジニアを採用したいなら当然やらないといけないものです。それで重要になるのが、「トレードオフを伴う独自の活動を選択すること」。つまりは、どういったエンジニアを採用すべきかを絞っていくんですね。


例えば、私たちは特定の技術を追いかけるのではなく、技術を使ってビジネスを成功させる、ということに興味がある人を選んでいます。それ以外には、マーケットの業務やカスタマーサポートセンターに興味を持ったり、ビジネスの戦略を立てたり、そういうことをやる”マルチタスクエンジニア”を、どんどん採用してきました。

そして、ただこれをやるだけではダメで、3つ目の「活動間にフィット感を生み出す」ことが必要です。例えば、フラットな組織があるからこそ、ビジネスサイドの人や経営層の考えに触れて、ビジネス志向が身につきますし、それによって、今持っている技術に新しいビジネスが組み合わさって、イノベーションが生まれる、といった形ですね。


では、内製化を進めた結果どうなったか。まず1つ目に、1年くらいかかっていたサイト製作が、3ヵ月くらいで完了するようになりました。あと、システムの問い合わせが前までは、回答まで平均1週間も掛かっていたんですが、これが半日で終わるようになりました。

エンジニアが増えたので、平行して進められる案件もどんどん増えています。あと、重要なことが1つありまして、私が痩せた体重が元に戻りました(笑)。

この内製化で大きく効果が得られて、今は会社としてもどんどん内製化していこうと。そのために、どういうエンジニアが必要なのかということを、今ビジネスサイドの人たちと話し合っています。というわけで、このDX時代を生き抜くために、今後もエンジニアを採用していきたいと思っています。

開発30人だったJapanTaxiが、どのように組織を変えていったのか

――藤井さん、ありがとうございます。それでは、続きましてJapanTaxiの吉田さんから発表をお願いします。

吉田:
JapanTaxiの吉田です。私もSIer出身で、主に通信キャリア系の基幹システム、業務システムを作っていました。前職は、スタートアップで起業しています。その後、2年前にJapanTaxiに入りまして、もう一回サーバーサイドエンジニアからやり直そうと思っていたんですけど、またマネジメント職に戻って、VP of Engineeringという形でやらせていただいています。


今日は、ゼロイチというよりも、少し大きくなった組織をどう変えていったか、という話をできればと思っています。

私たちの会社は、メインのサービスとして「JapanTaxi」というタクシー配車アプリをやっております。今900万ダウンロードを超えていて、日本No.1のタクシー配車アプリです。
我々のミッションは、「移動で人を幸せに」。移動に関わるサービスの主軸として、タクシーをやらせていただいています。

現在、JapanTaxiは3つの事業を展開しています。1つ目の配車アプリ事業では、ユーザーさん向けのアプリケーションや、その注文を届けるためのタクシードライバーさん向けのアプリケーションなどの開発を行っています。

2つ目の事業は、タクシーのデジタル化。最近、後部座席に広告が配信されるタブレットがありますね。決済機を兼ねたもので、タクシーのキャッシュレス化を進めています。こうしたものを自社でハードウェアの設計から開発までやっていて、それによってタクシーの乗車体験を変えるということをやっています。

3つ目は、次世代モビリティです。もともとタクシーというのは、インターネットに繋がっていない世界だったのですが、配車アプリのおかげで、インターネットを繋げることができるようになったんですね。それで、タクシーが走ることによって収集できるデータを活かしていこう、という取り組みや自動運転関連の取り組みなどを行っているのが次世代モビリティ事業です。


それでは、我々がタクシー業界でどのようにDXを推進をしてきたか、についてお話していきたいと思います。私がジョインした2年前は、社員54名、うち開発が30名くらいでした。2019年10月時点で、社員165名。3倍近くメンバーが増えました。開発の人数は、正社員が80人くらい、業務委託の方が20名くらい。だいたい100名くらいの規模で開発しています。

ジョインした当時は、岩田というCTOが開発部長を兼任していて、副リーダーが2人。あとはフラットな組織でした。意思決定は、ほとんどその3人がしていて、技術に関しては、一般的なWebサービスの構成でした。

採用に関しては、書類選考を全部CTOがやって、面接は面接官次第。選考基準もあまり明確でなかったので、見直しをしました。そもそも30人以上に増やすのかという議論もあったのですが、ユーザー体験を良くしていくためには開発組織の強化が必要だということでメンバーを増やすことになりました。


当時、組織にはどういう課題があったかというと、新しくできた2つの部署がバラバラに動いてしまって、プロダクト間で仕様が連携できていませんでした。技術の面でも、勢い任せに作っていたことで技術負債が溜まって、UXを向上させるどころか、悪化させるようなことになっていたんです。それを踏まえて、実現させたいユーザー体験に合わせて組織を大きく入れ替えました。

配車アプリでは、決済と注文と配車ロジックの3部隊に構成を変えて、あとはタクシー会社さん向けの機能を別チームにしました。当時は人数もまだ少なかったのですが、業務特化のチームを作るために30人を一気に分けました。エキスパートな小さなチームにして、もう一度採用を強くしていく狙いでした。

技術に関しても、当時はサーバーサイドはRails一択という感じだったんですけど、それでは採用も進まないし、新しい課題に対応しにくい。そのため、2018年には多くの技術を検証して、新しい技術の導入は5人以上は使えることを条件に採用を認めていきました。

最後に、採用面に関して言うと、会社自体のPRができていなかったので、実際のハードウェアとソフトウェアを持って行って、主要なイベントに出るようにしました。最初は私が行っていたんですけど、やはりエンジニアはエンジニアを呼ぶということで、イベント等も楽しんで参加いるかどうかが重要で、意欲的なメンバーを集めて運営してもらいました。

という感じで、30人の開発組織だったところから、組織と技術と採用について大きく見直しをしてきました。以上で発表を終わらせていただきます。

星野リゾートとJapanTaxi、それぞれにとってのデジタル化とは

――吉田さん、ありがとうございました。それでは、ここからパネルディスカッションに移りたいと思います。まず1つ目のテーマは、「御社にとってDXとは、デジタル化とは?」です。


藤井:
難しいテーマですが、私たちはあくまで旅や宿泊の体験を提供していて、デジタル化はそれを支えるものかなと思っています。例えば、これまでは宿というと単純に泊まって寝るだけの場所でした。それがだんだん旅行して思い出を作る、皆に共有する、という時代になってきています。

それを支えるために、綺麗な写真をいかに撮るとか、周辺スポットはどこに行くといいのかといったことを、簡単にわかりやすく説明する。そういったところがDX、デジタル化なのかなと思っています。

――先ほどのお話では、社内のシステムもDXを推進されているということでしたね。

藤井:
そうですね。デジタル化するだけで、これまで3時間掛かっていたものが5分で終わるような業務もたくさんあります。そういうところにも役立っていますね。

他部門のメンバーと話す時に「最近どうですか?」と聞くと、結構課題が出てきたりして。それを解決するとやはり喜ばれるので、何がストレスになっているかなどはよく聞いています。

――続いて、吉田さんはいかがでしょうか。

吉田:
我々は移動サービスを提供しているので、リアルとデジタルはどうしても接続をしなくてはいけない。極めていくべきところかなと思っています。

従来、タクシーは電話で呼ぶものでしたが、それがスマートフォンアプリに変わることによって時間的コストが削減されるようになりました。例えば、寒い冬に外でタクシーを待っていたのが、暖かい部屋で待って到着したら乗るだけになる。たった数分のことですが、貴重な時間になっているかなと。

また、台風のような非常時にも、安心して乗れる乗り物というところを担っていけると思っています。そういう時に電話だと絶対に繋がらないんですよね。アプリにすることによって、それを超越した体験ができるところが大きい。

人がやらなければならない部分と、システムによってサポートできる部分の組み合わせが重要で、その必要な部分のデジタル化を進めることによって、ユーザー体験を向上させています。

――JapanTaxiさんも星野リゾートさんも、グローバルでいうとUberやAirbnbのような、ディスラプトプレイヤーがいる業界ですよね。それに関連して、社内や経営陣からDX推進について何かキーワードが挙がることはありますか?

藤井:
やっぱり「他のサイトはこんな風にできてるけど、うちでもできないの?」とかはありますね。ただ、私たちしかできないこともあるんですよ。例えば、予約サイトって予約するところまでは皆できるんですよね。

予約した後、そのホテルに泊まるまでのスケジュールを立てて、予定が近くなるとわくわくするじゃないですか。この日は何をしようかなって。そういったところでも収益を上げたり、逆に宿泊後にそのフィードバックを受けて皆にアピールしたり。そういう部分は、強みになっています。

――先日、星野リゾートさんで宿泊を予約した方から、アクティビティ予約などまで充実したサイト設計になっているという話を聞きました。

藤井:
そうですね。まさにそこは、いわゆるOTAと言われる他社さんのサービスではできないところなので、差別化するポイントとして意識しています。


――JapanTaxiさんも、グローバルに強いプレイヤーがいて、開発競争も激しいのではと思います。そのあたり、どのように意識されていますか?

吉田:
海外と比較すると、まずエンジニアの規模が全然違いますね。某企業は3000人くらいエンジニアを抱えている中で、我々はまだ80名くらい。全然スケールが違う世界で戦っています。ただ、移動サービスはローカライズしないと勝てないので、国産だからこそ勝てるという側面もあります。

あと、良い影響も1つあって、日本では最近規制が緩和されて、新たに「事前確定運賃」が認可されました。国もITを使った移動という産業に興味を持ち始めていて、改革のプロセスを見ていると世の中の大きな変化を感じます。競合ができることで、世の中が変わっていくという意味では良いのかなと思っています。

エンジニア組織づくりに重要なのは、組織文化や現場への理解

――次のテーマは、「既存事業がある中で、どうやってエンジニア組織づくりをしてきたのか?」です。スタートアップであれば、何もないところから基盤を築いていけば良いですが、すでに強い既存事業があるからこそ大変な部分などもあったのではと思います。

藤井:
いくつかある中で、私たちが重要視していることは、企業の組織文化に合うかどうか。私たちはフラットな組織なので、誰かが言ったからやるのではなく、皆で話し合って自分たちで考えなければいけない。そういう文化に合う人を選んでいます。

ただ、エンジニアとしての強みも必ず持って欲しいと思っていて。このシステムをどう作ればいいか、どういう仕組みで動いているか、といった場で常に意見していけることを重要視していますね。

あと、特に星野リゾートの場合、現場で何年も積み重ねて来た人たちがいます。その人たちの考えや学んできたものを、どうエンジニアに伝えていくかが課題になっていて、共有会を開いたりしています。

吉田:
私は前職で、既存業界を破壊しにいくスタートアップを立ち上げていたんですが、それに対してJapanTaxiではグループ企業にタクシー会社があって、その中でやっていくことになります。なので、破壊的イノベーションができるかではなく、既存事業を尊重しつつ進めることが必要で、そこが難しく感じる時があります。

あとは、既存事業のタクシーというのは、”人”なんですね。例えば、タクシーが注文を受ける時にドライバーさんのタブレットに「注文が来ました」と通知されるんですが、実はそれで注文完了ではなく、ドライバーさんが受けるかどうかというボタンがあります。

そのボタンが押されて注文が成立するんですが、ドライバーさんが注文を受けてくれないケースがあるんです。例えば、目の前にお客さんがいる場合。エンジニアの目線では、アプリに来ている注文を受けてくれという話になるんですけど、リアル世界ではそうとは限らないのです。

実際に使っていただく方の気持ちにどれだけなれるか意識しなければなりません。そのため、定期的に我々も助手席に座らせていただいたりとか。

やっぱり現場理解ができないチームは良くないですから、そこはかなり意識してやっております。


――サービス志向なエンジニアというのがキーワードになってくると思うのですが、どういった採用で探していくのでしょうか?

吉田:
採用の時に、まずはJapanTaxiの事業ではなく、エンジニアとして何を達成したいか、3年後どんな人になりたいか、というのを聞き出すようにしています。30人から80人に増やしていく中で、最初は技術寄りではなく、少しマインド寄りのエンジニアを集めていました。

やっぱりユーザー体験を良くしていくためには、お客さんを理解してくれるメンバーがいないと長続きしないので。そういうエンジニアを一定数集めて、50人くらいになってから、技術特化のメンバーを集めてバランスを取っています。

藤井:
私たちはまだ組織を作っている最中なので、どちらかというとビジネスに興味がある人を選んでいますね。それこそ「旅は嫌いだけど、星野リゾートに入りたい」という人を選んでも、どうかなと思うので。ある程度は興味がある人、少なくとも抵抗はないという人を選んでいます。

あとは、採用の段階で、現場出身のメンバーに「この人、一緒に働けそう?」と聞いたりしていますね。

吉田:
ちなみに、星野リゾートさんって、エンジニアが実際に宿に泊まれたりするんですか?

藤井:
従業員割引はもちろんあります。エンジニアだからお得と言ったことはなく、一般の従業員と同じ割引率ですがかなりお得ではありますね。

吉田:
そうなんですね。やっぱりタクシーって高いので、なかなか乗らないという方もいらっしゃって。JapanTaxiでは、採用で「どうしてもこの方に乗っていただきたい」という場合には、その方にアプリのクーポンをお渡ししたりとか。

福利厚生でも、毎月1万円まで利用できる制度があって。いかに他社サービスの良いところを学べるかという所もあるので、競合も含めて乗ってもらう機会を作っていたりします。

DXの現場で働くエンジニアのキャリアとは?

――それでは最後に、「DXの現場で働くエンジニアのキャリアとは?」というテーマについてお話いただきたいと思います。


吉田:
私はずっと、リアル世界を変えることをテーマとしています。最初はSIerとして、基幹業務で5年から10年使われるシステムに携わっていました。それが良いところだったんですけど、ただお客様のものを作っていたので、自分で体験を変えたいと思っても、変えられないという側面がありました。

それを変えるために、自ら起業してみたり、JapanTaxiのようにそういったことを志すメンバーが集まっている会社を選んだりしてきました。キャリア的に、最初はテクノロジーベースの人間だったんですけど、最近はドメイン理解が重要だと考えています。特にリアルな世界で業務やサービスをきちんと理解しなければ、より良いシステムは作れないだろうと。

5年後をイメージできるサービスを作るという時に、技術は変わるかもしれないけれども、業務はそんなに変わらないんじゃないかなと思っていて。そういったところを意識できるエンジニアが、今リアル系のサービスには求められていると思います。

藤井:
私が入社した経緯をお話すると、もともとは開発会社として、星野リゾートのシステムを3年くらい開発していたんです。その中で、彼らがどういう戦略でいくか、宿泊をどう変えたいかがわかっていました。ただ一方で、正直に言えば、ITを使うのが上手くないなとも思っていて。私が入る事で、この会社がやりたいことを支えられると思って入りました。

3000人くらいの会社なんですけど、エンジニアはまだ10名くらい。やれることはたくさんあるし、今後は海外展開することで、海外の仕組みを作ることができます。なので、そういったところを考えられたら良いかなと思っています。

すごく可能性を秘めた業界なんですよね。その中で、自分が持っているものとビジネス的なマインドを掛け合わせることが、重要になっていくんじゃないかと考えています。

来場者からの質問に答える、質疑応答タイムへ


――ここからは来場者の方から頂いた質問に答えていただきたいと思います。まず1つ目は、経営陣はどのように説得しようと思いましたか?

藤井:
成果を出せばいけると思っていました。それをしっかり見える化していくことですね。

吉田:
そうですね。ただ「やりたいです」だけじゃダメで、プランを必ず出す。イメージを持たせられるかどうかだと思います。

――これは主に、JapanTaxiさんに向けての質問かと思います。組織の人数が爆発的に増加した要因は?

吉田:
プレスリリースをちゃんと出すことですね。転職をしようとしている方にとって、会社が生きているか死んでいるかって観測できないので。なので、そういう人に気づいてもらえるように、自分たちの会社をPRしていかなきゃいけない。

技術的に「こんな小さなことで」と思うようなところでも、それを見せることが重要かなと。やっぱり優れた方は、課題を解決したい欲求が高いと感じるので、特に少ない人数の時は、意外と課題を正直に伝えた方が効くと思います。

――働きやすさの面で、エンジニアのリモートワークなどに対して、既存の事業部から反発はあったりしますか?

藤井:
リモート自体は、もともとやっている部隊がいたので。ちゃんと理由をつけてやれば、大丈夫でした。

吉田:
結構ありますね。今サポートの部隊にいるんですけど、24時間365日の三交代制なので、一方でエンジニアはフレックスだというと、なかなか反発もあったりして。その辺は上手く話していかなきゃいけなくて、働きやすさって難しいなと今でも思っています。

藤井:
うちだと髪の色は黒という決まりがありますね。エンジニアでも髪を染めている場合は、黒くしてもらって……(笑)。

――短期間で組織が拡大して、大変だったことはありましたか?

藤井:
大変なことだらけですね。まず、評価制度がなかったので、評価をどうするのかというのがありました。最初は、エンジニアに私たちが作っているシステムを説明する図すらなかったので、それを作ったり。試行錯誤しながらだんだん良くなってきたという感じですね。

吉田:
実は先ほど言えなかったんですけど、JapanTaxiに入った時、離職も多い時期だったんです。その中でエンジニアを増やしていくという。結局、社内のマインドを整えるところからスタートしないと、変化に耐えられない状態だったので、そこが本当に大変だったなと思います。

――藤井さんが入社されてから、何人エンジニアを採用されたんですか?

藤井:
私が入ってからは、7人ですね。3人から、ようやく今年にかけて10人になりました。まだ、入社半年の人達ばかりです。

――非エンジニアの方と、どのようにして上手くコミュニケーションを取っていますか?

藤井:
エンジニアを採用する時点で、「あまり技術のことが分からない人と話したくない」とか、そういう人ではなく、積極的に現場の意見を聞ける人であることを重要視していますね。

例えばエンジニアではないのですが、情報システム部門にPMとして入社した中国人のスタッフが、現場を知りたいということで、現場に2週間研修に行って実際に現場の業務体験を行ったりだとか、そういうことをやってます。

吉田:
非エンジニアというよりは全社的に、社員理解を重要視しています。今、160人もいるんですけど、毎週週報があるんですよ。簡単にSlack上に貼るだけなんですけど、名前と部署を書いて、どんな業務をしているかを書いています。

もう1つ、ピアボーナス制度というものをやっています。毎週400ポイントあって、1ポイント1円換算。何か良いことがあったら「ありがとう」とメッセージを送り、それが月のお給料に反映される仕組みになっています。

Slackにも”ありがとうチャネル”があって、「あの人こんなことで褒められてたね」と、人物像が見えてくるんですよ。そうすると、エンジニアや非エンジニアに関係なく、相手の理解に繋がります。

あとは、MVPなどの制度にも全社的に取り組んでいますね。部門が多いので、どうしても分からない人も増えてしまう。なので、なるべくそういった制度を、全社的に展開していくように努力しています。

――ちなみに、Findyでは入社前に補助を出して、ビジネスサイドのメンバーもプログラミングを勉強してもらうという取り組みをしていたりします。それでは、パネルディスカッションは以上になります。貴重なお話をいただき、ありがとうございました!

パネルディスカッション後には、株式会社エクサウィザーズの木村さんによるLTが実施されました。また、イベント最後には、パネルディスカッション登壇者を含む懇親会を開催。賑やかにイベント来場者同士の交流が行われ、本イベントは終了となりました。

この機会にシステム開発内製化やエンジニア組織の強化のため、エンジニアを採用したいという方はお気軽にご連絡ください。
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