【前編】LayerX石黒さんに聞く、リモート・DX時代の採用/広報とは?-ウェビナーレポート

昨今では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、採用担当者に求められる役割や仕事内容は大きく変化しています。そこで今回、採用・人事の領域に深い知見を持つLayerX 執行役員・石黒卓弥さんをお招きし、ファインディ 代表の山田と「コロナで変わる採用の今」についてウェビナー形式で語り合いました。

参考
【LayerX×Findy】コロナで変わる採用の今〜リモート、DX時代の採用のあり方をQA形式で語るconnpass.com

本記事では、「コロナの影響で、採用にはどんな変化があった?」など、5つのテーマに沿ったトークセッションの後、参加者からの質問に答える質疑応答タイムへ。2人が語った”withコロナ時代の採用”について、そのトーク内容をお届けします。

前編では5つのテーマによるトークセッション、後編ではウェビナー参加者からの質疑応答への回答を中心に記事化しております。
後編記事はこちらから→【後編】LayerX石黒さんに聞く、リモート・DX時代の採用/広報とは?-ウェビナーレポート

登壇者プロフィール

株式会社LayerX 執行役員 (人事・広報担当)・石黒 卓弥

NTTドコモに新卒入社後、マーケティングのほか、営業・採用育成・人事制度を担当。また事業会社の立ち上げや新規事業開発なども手掛ける。
2015年1月、60名のメルカリに入社し人事部門の立上げ、5年で1800名規模までの組織拡大を牽引。採用広報や国内外の採用をメインとし、人材育成・組織開発・アナリティクスなど幅広い人事機能を歴任。2020年5月、LayerXに参画。FindyのAdviserとしても活動中。

ファインディ株式会社 代表取締役・山田 裕一朗

同志社大学経済学部卒業後、三菱重工業、ボストン コンサルティング グループを経て2010年、創業期のレアジョブ入社。レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携等を担当。
その後、ファインディ株式会社を創業。求人票の解析とアルゴリズムづくりが趣味。また、現在もHRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)としてレアジョブに関わっている。

登壇者2名の自己紹介からスタート

本日はよろしくお願いします。まずはお二人から簡単に自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか。

Findy 松岡

株式会社LayerX 石黒 卓弥

LayerXの石黒です。2015年にメルカリに入社して、ついこの間の4月末まで在籍していました。5月からLayerXに来て、やっと2ヶ月経ったくらいですね。私としては、領域がBtoCからBto Bになったことと、採用や人事だけでなく広報まで担当領域になったことが新しいチャレンジで、さらに範囲も広がって非常に楽しくやらせていただいています。

今日はせっかくの機会なので、皆さまのためになることがお伝えできればと思っています。よろしくお願いします。

Findyの山田です。本日はご参加いただきありがとうございます。私の前職は、株式会社レアジョブというオンライン英会話の会社で、人事やマーケティング、新規事業などを担当していたんですが、石黒さんとはその頃からお付き合いがあります。

当時、執行役員として人事に携わるにあたって、第一人者に会って知見を得ようと、石黒さんに採用面を中心に相談に通っていまして。Findyを起業してからも、Findyの社外取締役をやっていただいたり、今もいろいろとアドバイスをいただいています。

今回、こういった世の中の情勢が変化するタイミングにあたって、採用領域にどんな変化が起きているのか、改めて石黒さんにお聞きしながら、僕としても皆さまのお役に立つことをお伝えできればと思っています。よろしくお願いします。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

コロナの影響で、採用にはどんな変化があった?

ーー最初のテーマは、「コロナによって採用にはどんな変化があったか」について、お二人からお話いただければと思います。

株式会社LayerX 石黒 卓弥

マクロで見ると、コロナの影響で先行きが不透明になったことで、採用を止めるという判断をした会社が、テックジャイアント中心に多かった印象です。一方で、スタートアップの界隈では、採用を止めないところが結構多かった。特にソフトウェアエンジニアなどハイスキルな方々の採用は、引き続きやっている会社が多かったのかなと思います。

結局どんな時でも門戸を開けておかないと、なかなか採れるチャンスがないということで、常に張っている会社が多かったんじゃないかという印象がありますね。

僕はクライアント営業をさせていただいたり、投資家の方に向けた説明なんかもしているんですが、最近は開口一番だいたい「コロナの影響どう?」と聞かれます(笑)。

クライアントサイドとユーザーサイドで、それぞれ変化があるなと感じるんですが、クライアント企業側で言うと、問い合わせをいただく業界が変わりました。FinTechやAdが多かったところから、コ医療系の問い合わせがすごく増えていて。

あと、ECですね。それとDXの文脈で受託系の企業、巣籠もりの中でゲームなんかもやっぱり好調になってきているんだなとか。エンジニアの採用を強化していく業界の変遷は、世の中の景気動向を先取りする指標になったりもするので、そういう変化の面白さはありますね。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

あと、スタイルは変わりましたよね、圧倒的に。
そうですね、オンラインで面接をやり切れるかどうかとか。いち早く「採用を全部オンラインでやります」と言い切れる会社は採用も強いみたいな、そういう見え方もありますね。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

現実的な話としては、ニューノーマルな働き方やスタイルに合っているという、そういうポジション取りにいくという観点もあるので、皆それを意識した部分もあったのかなと。

自分たちの意思決定を世の中に伝えていくことで、自分たちの会社がどう見られるかというのも採用活動の一環なので、そこを意識して外に向けた発信をされていた会社も多かったのかなと思います。

LayerXさんは、オンラインで面接を完結するといった発信が早かったですよね。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

結局やれるかどうかを決めるのは自分たちなので、「やれないことはない」と思って始めてみるのがスタートだと思っています。その上で、もちろんやり切れる前提であるんですが、候補者の方にとっても会社を選ぶという観点があるわけで、そこは常にフェアであるべきだなと。

候補者の方が、自分の人生の1/3くらいの時間を費やす働く場所を、オフィスを見ずに決められるかというと、そうではないケースも当然あって。そういう場合は、例えばちゃんと検温やアルコール消毒をして、お互いに距離を取ってオフィスを案内する、といった個別対応をしていました。

候補者の側で言うと、エンジニアに限った話ではありますが、ユーザー層の変化も起きているなと感じていて。例えば、Findyの登録ユーザーだと、4月頃から現職の業績が悪化しているとか、フリーランスだと案件が続かないか心配なので正社員になりたいとか、これまでとは違った緊急性の高い転職が出てきたりしています。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

業界的に影響を受けやすいところにいらっしゃる方で、会社が踏ん張るところに責任を持つというのも当然大事だと思いますが、一方でご自身の成長を考えて成長する業界を選ばれる方もいますよね。

ただ、「どうしてこのタイミングなんですか」とよくお聞きしていくと、実はコロナはまったく関係ないという方もいたりして。なので、しっかり深堀って聞くというのは大事にしています。

世の中の大きな変化の中で、業界というのがこれまで以上にキーワードになってきているかもしれないですね。どの業界を選ぶかによって、ここまで極端に成長性が変わるなんて、僕らが生まれてから今までなかったことだと思うので。どの業界がこれから伸びるのか、これまで以上に我々もユーザーの方から聞かれるようになっています。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

今年、採用にかけられるお金はどう変わる?

続いてのテーマは、「2020年、採用にかけられるお金はどう変わるか」です。業界による部分もあるとは思いますが、いかがでしょうか?

Findy 松岡

株式会社LayerX 石黒 卓弥

LayerXの話をすると、資金調達のリリースをした前後に、一度すべて見直そうということで、採用系のサービスの利用についても再検討しました。
例えば、RPOでLinkedInなどのソーシングを手伝っていただいていたところは、契約期間満了をもって継続しないと判断したりとか。それは5月くらいの話なんですけど、会社の予算があるかないかは別として、必要か必要じゃないかということを、そのタイミングでかなり早く判断しました。
参加者の皆さんからも結構、「断捨離しました」というコメントをいただいていますね。我々としては、サービスの利用を中止されるかもしれない側の視点でお話します(笑)。やっぱり全体として予算は減少傾向にあるということは、営業で回りながら感じていて、まさに断捨離と裏返しの選別されていく立場にあるなと感じています。

これは当たり前といえば当たり前のことで、使い続けていただくためには価値のあるサービスである必要がありますから、僕らとしてはサービスをさらに磨き込んでいかなければと強く感じています。

それから、ビジネスサイドの採用はストップしても、エンジニアの採用は維持している会社も一定数あって、そういう意味では予算の使いどころを各社さん明確にされているのかなと。採用に強い会社さんなんかは、こういうタイミングで一気に予算をかけて攻勢に出る、みたいなパターンもあったりして面白いなと思います。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

予算をなくした時に、パッと自分たちで手を動かせるかどうかがポイントだと思いますね。外に依存していないかどうかを、改めて見直す機会にもなると思いますし。

あとは、意外と皆さんが考えないところでいうと、「紹介手数料の35%って正しいんだっけ?」と疑問を持つとかも必要かなと思いますね。一度決めたものって、皆さん変えたくないものだと思うので、ある意味で自分がスタンダード作る側に回る覚悟を持つ必要はあるのかなと。すごく難易度の高い話だとは思うんですけど。

ビジネスモデルの変革は、制限がかかった方が起こりやすいみたいなところもありますからね。4~5月に比べると、6月に入って状況としては元に戻りつつありますが、採用予算が減っている中でいうと、我々としてもそういったところに取り組んでいきたいなと思います。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

採用と広報、2つの領域を担当する理由

次のテーマですが、ここからは僕から石黒さんに質問する形式で進行できればと思います。
今回、採用と広報の両方を担当する執行役員としてジョインされたと思うんですが、「なぜ採用と広報がセットなのか」といった背景などを、ぜひご共有いただければなと。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

自分のミッションとして広報も担当するというのは新しい挑戦です。私がLayerXにジョインした理由の1つでもあるんですが、自分自身のキャリアを考えるにあたって、「石黒さんもチャレンジがあった方が絶対面白いですよね」とLayerX経営陣から話を受けて、「ぜひやらせて欲しい」と返事をしました。

採用と広報は非常に共通点が多くて、信用を積み上げていくところなんかがそうですね。信用がない会社なんて誰も就職したくないし、取引もしたくないわけですから。あとは、単に露出しただけでは意味がないところなども、すごく関連性が深いなと思います。

広報も担当されるようになって、改めて見方が変わる部分などはありましたか?

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

メルカリの時は to Bがほとんどなかったんですけど、LayerXでは事業のインバウンドに繋がる広報というのもあるので、なかなか難しさもありますし、やりがいがあるなと思いますね。

例えば1つのプレスリリースを書く時に、候補者や社員もそうだし、to Bのクライアントさんや未来のクライアントさんを意識して書くので、どうやって書くべきか、SEO的にどういうタイトル使っておくと後々検索されやすいか、といったことをかなり意識するようになりました。

マーケティング視点もより強くなってくる感じですね。広報のキャリアについては、もともと考えられていたんですか?

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

これは初めて外に言いますけど、メルカリの社内で広報に異動するのもいいかなと、1年半や2年前くらいに考えたことはありました。そのくらい隣接している領域だけど、実は知らないことが山のようにあるなと。

LayerXへの入社が決まって広報をやることになった時に、メルカリの矢嶋さんに「オススメの本を教えてください!」と聞いて教えてもらった大量の本を買って、本当にイロハのイから学んでいる感じです。

採用におけるDXとは、結局何なのか?

次の質問は「採用におけるDXとは、結局何なのか?」。DXの本丸とも言えるLayerXさんから見た採用におけるDXについて、ぜひ語っていただければと思います。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

これは採用に限らずなんですけれども、ベタなところで言うと”見える化”ですよね。具体的な例でお伝えすると、この状況下でオンラインの面接が増えていますが、皆さん悩まれているのが、「Zoomって録画して良いんでしたっけ?」みたいな問題。

もちろん黙って録画するのはありえないとして、候補者の方にちゃんとご説明して理解を得られた前提であれば、面接官のスキル向上やブラックボックス化しないという観点で、私はすごく良いと思っています。

あとは、例えば1人を採用した時に、そのメンバーの給料がいくらだから、どれくらいの利益が必要なのか、といったところを可視化して繋げていくとかですね。どうしても人と人なので、いつまで経ってもアナログで聖域化されがちな部分だと思うんですけど、1人が入社することで会社にどういう影響があるのかを、デジタルで分析できるようにするというのはいつも考えています。

Findyでは「テクノロジードリブンな事業成長を増やす」というビジョンを掲げていて、マッチングの最適化だけではなく、その後も含めて価値のあるサービスにしていきたいと思っています。

先ほどの話と近いところで、まだプロダクトとしては改善の余地が大いにあるんですけれども、「Findy Teams」という、エンジニア組織におけるパフォーマンスを見える化するサービスを作っています。

営業でCTOの方々とお会いする中で、「本当に活躍している人は誰なのかを見える化したい」というコメントをよくもらっていて。特に大きい会社だと、CTOが面接をした後に現場と接する機会が少なくなってしまうけれど、その人を採用した後の活躍もしっかり見える化したい、といった話を実際にいただいたりしていますね。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

2020年、今後の採用はどうなっていく?

それでは、最後の質問は「2020年、今後の採用はどうなっていくのか」です。まずは石黒さんの視点からお話いただいて、僕の視点からもお話できればと思います。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

いろんな切り口があると思うんですけど、エンジニアにはエントリークラスからリードエンジニア、CTOやVPoEまで幅広い層がいますよね。どの層の方を採るにはどんなサービスがいいのかを知っていくと、すごく効率的に採用ができるんじゃないかと思っています。

例えば、Twitter採用がトレンドだと聞くと、そこに全振りしてしまう方もいらっしゃると思うんですが、いろんなプラットフォームの特徴を知ることがすごく大事で、その上で選んでいかれると良いんじゃないかなと。

あと、いくつかのスタートアップで人事や採用をご支援していて感じるのは、プラットフォームをパッと使って「このサービスは良い人いないですね」と判断される方が結構多い。プラットフォームを使うとなったら、私はそのプラットフォームをハックして1番になるくらいの気概でやっています。

株式会社LayerX 石黒 卓弥

1番というのは、もちろん採用の数もそうですし、例えばカスタマーサポートの方に、「1番質問多いですね」と言われるくらい聞くとか。メルカリの時を振り返ってみると2015年の夏から秋ごろ、WantedlyのPV数や募集数で常に1番か2番に名前があるような状態だったんです。そうすると、もはやプラットフォームよりも強くなれる。つまり、「メルカリに応募するためにWantedlyに登録する」みたいな人が出てくるわけです。

株式会社LayerX 石黒 卓弥

なので、まずはプラットフォームの特徴を知るということと、プラットフォームを少し触っただけで判断せずに、1つこれだと決めたら深く掘り下げていくことは、すごく大事だと思っています。

それから、私たちが一番欲しい人は誰なのかというと、社内にいるエンジニアそのもの。なので、彼らをよく知ることも大事です。私はメルカリに入って、まず最初に社内のエンジニア20人全員と1on1して、「なぜこの会社に入ったんですか?」と聞きました。改めて、”1番欲しい人は社内にいる”ということを、見つめて活動していくと良いかなと思います。

まさに、”やり切る”というのは、僕も採用をやっていて大事だなと感じますね。そういう意味では最近、弊社のクライアントもスタートアップだけではなく、いわゆる日系大手企業とか、GAFAみたいな企業が入ってきていたりするんですけど、彼らのやり切りって結構すごくて。大手でも、1週間で全ての面接プロセスをやり切る会社さんとかもいたりします。

僕もともと三菱重工出身なんですけど、三菱重工はものすごく利用スピードが早くて、営業に行ったらその場で導入意向をいただ、「早く利用開始して良い人がいたら採用したい」と。僕が新卒で入った頃に比べると驚くような変化なんですが、大手がそういうスピード感で進めてくるっていうことが今起きている。逆に言えば、スタートアップ側で採用していく中で僕ら自身、かなり工夫していく必要があるなと感じています。

ファインディ株式会社 山田 裕一朗

株式会社LayerX 石黒 卓弥

あとは、こちらからエンジニアに新しい可能性を提示することも意識していますね。技術的な判断はエンジニアチームに相談していくわけですが、その人にどういうキャリアが提示できるのかを一緒に考えるのは僕たちの仕事なのかなと思っていて。

例えば、業界最高峰のCTOの方に「うちでCTOやって下さい」と言っても、「またCTOか」と思うかもしれない。でも、その方に「COOとして事業も含めて見てください」みたいなご提案ができると、見方が変わるわけです。ご本人さえ考えていなかった可能性を提案するというのは人事の役割だと思っていて、そういうことも常日頃考えていますね。

後編記事はこちらから→【後編】LayerX石黒さんに聞く、リモート・DX時代の採用/広報とは?-ウェビナーレポート