建築業界を本気で変えたい。だから謙虚に学び続ける——建築SaaS「ANDPAD」のエンジニア組織
クラウド型の建築・建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供する株式会社アンドパッド。2016年3月のリリース以来、利用ユーザーは14万人、利用社数は50,000社を突破しました。
巨大な産業にも関わらず、IT化が進んでいない建築業界に変革をもたらすサービスは、どのようなエンジニアによって支えられているのでしょうか。株式会社アンドパッド開発部エンジニアの川原万季さん、開発部シニアエンジニアの早田大輔さんに、入社の理由やエンジニア組織の特徴についてお話を伺いました。
建設業界の課題解決にゼロベースで挑める環境
—まずはお二人がアンドパッドに入社したきっかけを教えてください。
川原さん:
元々アンドパッドについては「RubyKaigiのスポンサー」とか「技術顧問に松田さん(※)がいる企業」として認知はしていて。転職のタイミングで改めて調べて、面談を受けたんです。
※日本で唯一のRuby on Railsコミッター兼Rubyコミッターの松田明氏。2019年7月に技術顧問として就任
社長や他のメンバーと話すなかで「非IT領域をより良くする」という思いに強く共感しました。例えば建築業界では、未だにファックスで書類をやり取りする話を聞いて、前職の飲食業界での経験を思い出したんです。飲食も割と何でも紙で管理する世界だったので面倒な場面が沢山あったな、と。同時にアンドパッドなら不要な煩雑さを無くし、建築業界を変えていけるとワクワクしました。
あとは面談で出会ったエンジニアから技術への愛を感じましたね。一次面接でテックリードの金近と福間とRubyのENVオブジェクトの話で盛り上がったんです。雑談のように楽しみながら、真面目に技術の話ができる雰囲気に惹かれました。その後、二人から「Ruby愛を感じて一緒に働きたいと思いました」とフィードバックをもらったことも決め手でしたね。
—早田さんはいかがですか?
早田さん:
転職エージェントから紹介を受けたのがきっかけですね。アンドパッドの存在は以前から知っていたのですが、対峙している業界のイメージで体育会系のイメージがあって興味を持っていませんでした。
そこから、面談を重ねるなかで体育会系のイメージが見事に覆され(笑)、アンドパッドのビジョンやミッションへの理解も深まりました。特に社長の稲田との面談は、もはや「稲田が業界の課題について教えてくれる会」でしたね。
川原も話した通り、建築業界は一、二を争うほど、IT化の進んでいない業界です。IT化はこれからの段階で課題はいくつもあって。アンドパッドはそれらをゼロベースで解決している。具体的な課題や解決に向けたビジョンを聞くなかで携わりたい気持ちが膨らんでいきました。
業界を知るために徹底して現場に寄り添う姿勢
—お二人とも非IT領域における課題解決に関心があったのですね。入社してからはどのような仕事を担当されているのですか?
川原さん:セキュリティチームに所属し、新しい認証基盤の導入を担当しています。
早田さん:引合粗利管理システムの開発チームで、システム概要設計からコーディングまでやります。また、EMとしてエンジニア組織の課題解決に向けて施策を行うこともあります。
—それぞれの業務ではどのくらい建築業界のドメイン知識が必要になるのでしょうか?
川原さん:セキュリティチームではそこまで業界知識が求められることはないですね。
強いて言えば、前職まではto Cのサービスに携わる機会が多かったので、to Bかつ歴史の長い業界だからこそ、より慎重に開発しなければいけない場面は増えた気がします。
早田さん:引合粗利管理システムに携わる場合、建築業界ならではの会計の仕組みなどはキャッチアップが不可欠ですね。例えば家を建てた後、建築会社に入金されるのが数ヶ月後とか特殊なケースもありますから。
ただ、僕は大工として働いていた経験が少しあり、過去にも建築業界の会計系システムを担当していたので、まだましな方だとは思うのですが。業界知識ゼロで入社していたら割と大変だったかもなと思います。
—知識ゼロで入社したエンジニアの方々はどのようにドメイン知識をインプットされてるのでしょうか?
早田さん:全社員向けの研修に加え、担当するサービスごとに必要な知識のインプットは行います。
加えて、大切にしているのは直接ユーザーの声を聞く機会のセットですね。カスタマーサポートが集めた意見から勉強したり、新型コロナウィルスが拡大する以前は、エンジニアが自主的にユーザー企業へ出向いてヒアリングを行うこともありました。
—エンジニアが直接声を聞きにいくほど徹底されているんですね!
早田さん:ユーザーの声を聞く文化は徹底していますね。
やはり本気で業界全体をより良くするには、僕たちがユーザーの多様な悩みをひとつずつ理解し、抽象化し、サービスに反映し続けていく必要があります。
そのためには具体的な悩みを圧倒的に解像度高く理解しければいけない。その方法のひとつが、実際に誰がいつどのように困っているのかを直で体験させてもらうことだと思います。
そうすると業界の理解も深まるし、何より「課題だらけだ」とも気づける(笑)それがとても面白いし、やりがいだと思っています。
さらなる高みを目指すエンジニア組織のチャレンジ
—「課題だらけ」であることを前向きに捉えてらっしゃるのですね。アンドパッドでは、ドメイン知識のインプット含め、勉強会が盛んだとお伺いしました。
川原さん:そうですね。毎朝何かしら勉強会が開催されています。技術にまつわる勉強会だけでなく、非エンジニア向けにHTMLやCSS、SQLの基本を学ぶもくもく会、建築業界について学ぶ会など色々やってます。
Ruby on Railsの勉強会に松田さんが来てくれて、ANDPADの開発における現状と課題を指摘してくれています。技術顧問として交流する機会があるのはとてもありがたいなと思います。
—松田さんとは実際の業務で関わる場面もあるのでしょうか?
川原さん:そうですね。勉強会以外にも普段からSlackに常駐してくれていますし、プルリクを出したらコードレビューして、コメントも残してくれることもあります。
実は、現状のコードは結構負債があるので、松田さん自身もコードを書いてくださっています。松田さんが手を動かしている現状自体は歓迎すべきではないのですが、プロダクションコードで見られるのはなかなか無いと思うので福利厚生の1つとしてありがたく学ばせてもらっています(笑)
早田さん:同感です。「アドバイスの前に標準化」と言わんばかりの勢いで、自分たちも頑張らなければと思います。
—コードの負債や標準化の話が出ました。今後アンドパッドとして取り組みたい技術的課題やエンジニアの組織における課題はありますか?
早田さん:ひとつはコードの品質向上ですね。特に保守性を高めていくための動きは全社をあげて推進していく予定です。サービスや会社が軌道に乗り始めていても、謙虚にひとつずつ負債を減らしていきたいですね。
CTOも含め、現場の意見をオープンに聞いてくれる環境なので、「ここイケてないよね」を見逃さず改善して、サービスとして満点の状態を目指したいですね。
—技術選定なども現場の意見が聞き入れられやすいのでしょうか?
早田さん:基本、メンバーには社内で多様な経験を積んでほしいと思っているので、極端にニッチな技術以外は、現場の意見を尊重しますね。例えば今サーバーサイドで一部Goを使ってるのも、CDOの山下が「Goで開発してみたい」と言ったからだったりします。
—探究心を尊重してくれる環境なのですね。川原さんはアンドパッドのエンジニア組織にとって課題だと感じることはありますか?
川原さん:早田さんと同じく技術的負債は大きな課題ですね。単純なバグを減らす取り組みとしては、隔週で「バグマッシュ」の日を設定して、一日単位で潰せる小さなバグを潰しています。ただ一日では対応できない課題もあるので、その辺りは別で腰を据えて取り組んでいきたいです。やりたいことは山ほどあるので。
早田さん:まさにそうですよね。加えて、EMとして感じている課題としては人数増加に伴うマネジメントですね。やりたいことが山ほどあるなかで組織規模が大きくなっているのは良いこと。一方、ボードメンバーと同じ質とスピード感で組織が動いていくための仕組みは試行錯誤が必要になると思います。
先ほど話したようなドメイン知識を入れるための取り組みや必要な資料の整理など、組織拡大を見据えた準備もやっていきたいですね。
多様な目標に向けて前進できる人と働きたい
—最後に、そんな急成長を遂げるエンジニア組織のなかで、お二人が今後どのような人と一緒に働きたいかを教えてください。
川原さん:アンドパッドは「依頼はされるが管理はされない」環境だと思っています。上司に「A案とB案どちらにしましょう?」と聞いたら「どっちが良いと思う?」と逆に聞かれます。なので「これがやりたいです」と手を挙げて、自ら前進していける人が向いていると思います。
あとは何より技術が好きな人。課題も楽しみながら挑戦できる人と一緒に働けたら嬉しいです。
早田さん:自らの目標を向かって四苦八苦できる人ですね。これは個人的な考えなのですが、会社は多様な意見、多様な「やりたい」が集まっているほど強いと思っていて。アンドパッドもそうであれば良いなと。
また、アンドパッドは意志さえあれば自らキャリアを切り拓いていきやすい環境です。アプリエンジニアからPMに転向した社員もいたりと、信頼と意志があれば叶えることができますね。僕自身、面談ではエンジニアマネージャーの前に「リードエンジニアもどう?」とオファーされていて。「どっちもやりたいからやらせてくれないか?」と伝えたら受け入れてもらえました。
やりたいことは必ずしも「建築業界をよりよくする」でなくても良いんです。EMとしてスキルを磨きたいでも、技術力を伸ばしたいでも大歓迎です。自ら目標を立てて、徹底してアクションできる人と、ぜひ一度お話しできたらと思います!