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インタビュー

「楽しみ」から生まれる商売を技術で支える。heyが大切にするカルチャーと求めるエンジニア像

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STORES 株式会社

ネットショップ開設サービスの「STORES」、キャッシュレス決済の「STORES 決済」をはじめとし、お商売のデジタル化を支援する「STORES デジタルストアプラットフォーム」を開発・提供する。オンラインストア開設サービス「STORES」と、キャッシュレス決済サービス「STORES 決済」を開発・提供する、ヘイ株式会社。2018年2月に、コイニー社とストアーズ・ドット・ジェーピー社の経営統合によって生まれたヘイ株式会社は、2020年8月に70億円超の資金調達を行うなど、さらなる事業の展開を進めています。

今回は、ヘイ株式会社でCTOを務める藤村大介さんにインタビュー。大切にしているカルチャーや求めるエンジニア像、そして今後取り組んでいく「STORES デジタルストアプラットフォーム」の構想や、それに伴う技術的なチャレンジなどについて、お話を伺いました。

■プロフィール
ヘイ株式会社 CTO・藤村 大介
早稲田大学第一文学部総合人文学科哲学専修卒。スタートアップ業界でエンジニアとして活躍。また、マネジメントとしてチームビルディング、メンタリング、採用、技術戦略策定、クライアントとの折衝を経験。Aiming、Quipper、マチマチ等でプロジェクト、プロダクト、チームの立ち上げを担当し成功に導く。

自分が夢中になれることを生業にしていく

──まず最初に、藤村さんのご経歴や入社された背景について教えていただけますか?

藤村:
もともと僕は、中高生の頃からとにかく音楽が好きで、バイト代を全部CDとレコードにつぎ込み、ライブハウスやクラブに入り浸るような、音楽が中心の生活を送っていました。

大学を卒業して、新卒でSAPというパッケージソフト導入の下請けの会社に入ったのですが、そこで「仕事をしないとお金を稼げない」ことと、「お金を稼ぐためには自分が夢中になれることじゃないとツラい」ことに気付きます。

一方で、音楽関係の人たちには、自分たちでレコードやグッズを作ったりと、クリエイティブな活動をしている人が多かったんですね。でも、当時は「STORES」のような簡単にECサイトを作れるサービスもなく、そういう事業をやろうと試みるものの、志半ばにして普通の仕事に戻っていくような姿も見ていました。

やっぱり好きなことを仕事にするのは難しいんだなと。僕自身も、仕事で触れることになったプログラミングにどんどんハマっていき、「音楽は音楽、仕事は仕事で頑張ろう」と思いながら、仕事に夢中になっていったんです。

下請けの会社を辞めた後は、スタートアップ数社でRuby on Railsのエンジニアとして経験を積みました。その後、起業したりフリーランスで働いたりして「次はどうしよう」と思っていたタイミングで副社長の佐俣から連絡をもらい、heyを手伝うことになったんです。

そして、代表の佐藤とも話していくうちに、テクノロジーやデバイスの進化によって、僕が半ば諦めていた”好きなことを生業にしていく”ところに、世の中が追いついてきたんだなと。それをheyの事業でサポートして、さらに加速させていける。僕が昔やってきたことと、一時はそれを諦めて磨いてきた自分の技術が、交差するポイントがheyにはあると思って入社を決めました。

heyが掲げるミッションは「Just for Fun」

──実際にご入社された後、外から見ていたイメージとのギャップを感じた部分はありましたか?

藤村:
入る前は、経営陣がアロハシャツを着ている写真のイメージがあって、すごく浮ついた会社だなと(笑)。もちろん経営陣の経歴や人となりはある程度知っていたので、ちゃんとやっているんだろうけれど、そういう見え方にしているなという印象がありました。

実際に入ってみると、まったく逆で。質実剛健というか、みんなオーナーさんのためになることを、とにかく真っ直ぐに丁寧にやっているんですよね。入社した人にとって、良い意味で印象が変わる部分なんじゃないかと思います。

──現在展開されているプロダクトのミッションについて教えてください。

藤村:
heyでは「Just for Fun」というミッションを掲げています。こだわりや好きなものを突き詰めて、夢中で何かをされている方のお商売を支えていく。そういうツールを提供し続けることで彼らができることを増やし、「Just for Fun」でやっていることに集中できる環境を作るというのが、プロダクトミッションの1つです。それはECの「STORES」でも、実店舗決済の「STORES 決済」でも同じです。

額に入っているのは、heyが展開するプロダクトのイメージカラー

「役に立ちたい」という素直なモチベーションで働ける

──heyのプロダクトは、カスタマイズ性の高さなど非常にUI/UXを重視されている印象です。ユーザー目線で開発するために、どのような工夫をされているのでしょうか?

藤村:
プロダクトの作り手である僕らも実際に「STORES」で買い物をするし、「STORES 決済」で決済もするし、どちらもユーザーさんとの距離がすぐそこなんですよね。

そういうプロダクトの性質もありますし、そもそも全社共通で、とにかくみんなオーナーさんのことが好きなんですよ。最近では社員同士で大阪へ旅行にいって、オーナーさんに会いに行ったという話もありました。

常日頃から、みんなオーナーさんのことを気にかけているんですよね。そうすると、オーナーさんが普段お商売されている中で、どこに課題意識があるのかにも自然と目が向く。それがプロダクトにも反映されていると思います。

──素晴らしいですね。そういった文化は、どんなところから生まれたものなのでしょうか?

藤村:
僕も後から入って、その熱気に飲まれていったので、それがどこから発生したのかというのは、正直うまくお伝えできないんです。ただ、日々まわりで一緒に働いている人たちを見ていると、みんな本当によく考えているなって。「なんでこんなに一生懸命、オーナーさんのことを考えられるんだろう?」と思う時があるくらい。とても良い文化だと心から思います。

仕事の成果には、間接的なものと直接的なものとがありますが、「オーナーさんの役に立ちたい」という素直なモチベーションで働けるのは、仕事の環境としてとても恵まれているなと思いますね。


オフィスにはさまざまなアーティストの作品が飾られている

heyが目指すエンジニア組織の在り方とカルチャー

──今後、どのようなエンジニア組織を作っていきたいと考えていますか?

藤村:
heyのエンジニア組織の在り方について、最近エンジニアマネージャー4人全員が集まって話す機会があったんですが、あまり流行っているものに飛びついたり、突飛なことをしたりせず、中長期でベストな組織のつくり方を、その時々で選択していこうという話になりました。

カルチャーに関しては、オーナーさんから学ぶ姿勢ですね。僕らにはできないようなすごい事業をやっている方々がいらっしゃって、オーナーさんから学ぶことがとても多いんです。なので、常にオーナーさんを尊敬し学んでいく。そういうもともとheyにあった文化を引き継ぎ、絶やさずにいたいと思っています。

エンジニアリング的には、まだものすごく特色がある会社とは言えないところもあるので、これから良い形で色が出てくると楽しいなと。どこかに強く誘導していくつもりもないので、今いるメンバーの色が出つつ、かつ「Just for Fun」というミッションを掲げる組織としてベストな形に導いていけたらと思っています。

──今、エンジニア組織において課題だと感じている部分はありますか?

藤村:
課題はたくさんあるんですが、今あまり良い意味で突っ走るタイプのエンジニアがいないんですよね。エンジニアって勝手に何か作ってくるようなタイプもいると思うんですけど、僕としては、そういう人に場を荒らさない程度に暴れて欲しいなって(笑)。そういうエンジニアが来てくれると、僕らに足りないものをもたらしてくれるんじゃないかと思っています。

さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが活躍

──今いらっしゃるエンジニアメンバーの方は、どういったご経歴の方が多いですか?

藤村:
あまり傾向がなくて、思い当たるようなところはだいたいいますね。いわゆるコンピューターの仕事をやってきたSIer出身の方もいるし、受託の製作会社や企画の会社にいた人もいるし、スタートアップにいた人もいるし、わりと千差万別です。

──多様なメンバーの方がご活躍されていらっしゃる中で、マインド面など何か共通項はありますか?

藤村:
やっぱりスモールビジネスをされている方の作っているものに、何かしら興味がある人が多いですね。食べ物だったり洋服だったり、食器とかのクラフト的なものだったり。heyに入ると、俄然面白いオーナーさんが見つかるので、だんだん好きになっていく人も多いです。あとこれは余談なんですが、バンドマンが非常に多いですね。ギタリストだけで何人いるんだろうって(笑)。

──面白いですね。そこにも何か共通項がありそうです。

藤村:
自分たちで何かを作ったり楽しんだりするために、面倒なことも大変なことも乗り越えてやっていく、という考え方が通じているところはあるかもしれません。

もともと「Just for Fun」という言葉は、リーナス・トーバルズというLinuxの開発者が書いた本のタイトルから、代表の佐藤がとった言葉なんです。その本には、決して簡単ではないし大変なこともたくさんあるんだけれども、楽しいからやっているんだというLinux開発のエピソードが書かれているんですね。それは音楽にも似たところがあると思います。

もちろん全員がそういう人間というわけではなく、いろんなタイプの人が活躍していますから、一概にそうというわけではないんですけどね。


藤村さんも気に入っているという、おしゃれなオフィスの入り口

より統合されたプロダクトを目指し、技術的なチャレンジも

──直近では大型の資金調達もありましたが、プロダクトについて今後どのような戦略や方向性を考えられていますか?

藤村:
今までは、「STORES」と「STORES 決済」という事業を、それぞれに展開してきました。今後は、それを1つの「STORES デジタルストアプラットフォーム」として、オンラインとオフラインを繋いでお商売のいろいろな側面を支えていく、より統合されたプロダクトを提供していくことを目指しています。

プロダクトを統合していく上で、当然ながら裏側にあるアプリケーションの部分、フロントエンドやバックエンドも統合していく必要があり、いわゆる共通基盤化を進めていかなければなりません。

これは技術的にも難易度が高く、なかなかチャレンジングな部分が増えてきています。今まで以上にテクニカルな新たな課題が増えてくるので、そういったところに向き合って、一緒に戦える方が来てくださると嬉しいですね。

──共通基盤化していくにあたって、特にどういった点が技術的に難しいのでしょうか?

藤村:
複数のサービスが協調して、1つのシステムになるものを作る必要があります。弊社ではまだこの言葉をあまり使っていないんですが、率直に言えばマイクロサービスアーキテクチャをやらないといけないんですよね。

これは考えるべきことがかなり多くて、マイクロサービスを展開していくにあたってのテクニカルな問題もそうですし、その中には例えばプロトコルの話とか、規格の詳細な話とかも入ってくるので、より技術的な精度が求められる場面が増えています。最近は、RFCを読む勉強会などが開催されたりしていますね。

──勉強会を含め、技術力向上のために行われている社内の取り組みについて教えてください。

藤村:
「STORES」と「STORES 決済」、それぞれのチームごとに取り組みが行われています。例えば、「STORES 決済」のチームでは、2週間に1度のテックデ―という日があり、負債解消であったり新しい技術の調査だったりを1dayでやっています。

「STORES」の方は、勉強会が多く行われている状況ですね。例えば、実際のアプリケーションコードの難しい部分に関しての勉強会や、設計の勉強会やプロトコルの勉強会など。こうした勉強会は、メンバーから自発的に行われることが多いです。

──共通基盤化の他に、決済やセキュリティなどの面も技術的に難易度が高いポイントのように感じますが、その辺りはいかがですか?

藤村:
STORES 決済のセキュリティに関しては、PCI DSSという規格を取ってしまえば、一通りクリアできるというところがあります。今後やっていきたいのは、例えば与信のところですね。

プロダクト利用にあたっての審査や不正検知に関するところで与信の話が出てくるので、これまで僕らがやっていなかったエンジニアリング、例えば機械学習を使って精度を上げていく場面なんかがこれからあると思っていて。その辺は面白いところだと思いますね。

──与信というのは、「STORES」の中での利用履歴を分析して、信用を調査していくようなイメージでしょうか?

藤村:
一つはそうです。かなりデータ量も要りますし、機械学習でモデルを作って、それを運用して永続的に改善していくというのは、サイエンスの力もエンジニアリングの力も必要です。さらに、それ全体のオペレーションを回していくことも必要になってくるので、総合格闘技的な難しさがあるなと。でも、上手くいけばインパクトがあるし、チャレンジングで良いなと思っているところですね。

求めるのは「Just for Fun」な感覚を持つエンジニア

──今後どのようなエンジニアを求めているかについて、改めて教えていただけますか?

藤村:
「Just for Fun」のお商売を支えていく、というところに魅力を感じてもらえる方に来ていただけると嬉しいです。これはもともと興味を持っていたかどうかに関わらず、「そういうのあるんだ、いいね」という感じでも、何らかの形でそこに魅力を感じてくれる方が入ってくださると良いなと。

それから、プログラミングも「Just for Fun」の1つだと思っていて。コードを書いて問題を解決するって面倒なこともたくさんあるんですけど、楽しくて夢中になってしまうものだと思うんです。そういう意味で、プログラミングに夢中になれる感覚がある人に来てもらえると嬉しいですね。

エンジニアがいかにプログラミングに夢中になれるか、というところに貢献していくのは、僕のCTOとしての裏ミッションでもあると考えています。

──それでは最後に、エンジニアの方に向けてメッセージをお願いします。

藤村:
オーナーさんに喜んでもらうことを仕事にでき、しかもそれをテクノロジーという僕らが好きな道具で支えることができて、僕自身も技術者として素直に楽しく仕事ができています。職業人生は長いですが、限られた時間でもあります。その限られた時間を使うには、heyはすごく良いところだと思います。良い仕事をする環境は整っていますので、ぜひ一緒に良い仕事ができたらと思っています。