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インタビュー

実体験を活かして「くらし」と「はたらく」を自由にデザインできる世界を目指すACALLの挑戦

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Acall株式会社

「毎日同じ時間に、満員電車に揺られながらオフィスに向かう」という社会の常識への疑問から始まったACALL株式会社。

同社が開発・提供している法人向けスマートオフィスプラットフォーム『WorkstyleOS』は、センターオフィスやシェアオフィス、自宅などの様々なスポットへのチェックイン体験をデジタル化することで、多様なワークスタイルを実現するプロダクトとして、これまでに5000社以上に導入されています。

2020年9月には累計8.3億円の資金調達を達成し、働き方改革を推進する企業として、更なるグロースに向けて走り出すフェーズに突入。

今回は、CEO長沼様とCTO藤原様に『WorkstyleOS』の開発秘話、ACALL株式会社の未来への展望について伺いました。

CEO 長沼斉寿
2004年神戸大学経営学部卒業後、日本IBMでITエンジニアおよび金融市場向けIBMグローバルソフトウェアの日本国内でのコンサルティングセールス職等を経て、2010年に現ACALL(株)を設立。企業向けソフトウェア開発事業、メンタルヘルスwebサービス事業等を経て、2016年7月に現事業を開始。

CTO 藤原弘行
2001年にフリーランスプログラマーとして独立し、多数の開発プロジェクトに携わる。
当社設立時に参画。Rubyを使ったWebアプリケーション開発を中心に、各種システムのアーキテクチャ設計・実装を行う。唎酒師(ききさけし)の資格を持つ。

プロダクト誕生の原点は学生時代に持った違和感

──ACALLはもともと長沼さんと藤原さんのお二人で始められたそうですね。起業されたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

長沼:
そもそもの原点は学生時代かもしれません。電車通学中に、これから出社するであろう社会人の方を見た時に、働く場所の選択肢がなく全員が機械的にオフィスへ出社するのは、非人間的だな、と感じ始めていました。

そういった思いをどこかで抱えながら社会人になり、前職で入社した会社のオフィスが、とても先進的でかっこよかったんです。そして、実際に働く中で「働くスペース」と「働く気持ち」には、密接に相関性があると確信を持ちました。次第に「働く」「テクノロジー」「楽しい」の3つを掛け合わせた事業をしたいという思いが強くなり、起業することにしました。

藤原:
私は創業する前、フリーランスとしてWebサイトやプロダクトの開発をしていました。そのご縁で長沼に出会って「こんなに面白いことを考えている人はなかなかいないな」と。話を聞いていると、長沼のアイディアと私の技術を合わせれば良いものを作れるところが見えたので一緒にやることにしました。

長沼がしっかりとビジョンを持っていてくれるので、私は技術を持ってそれをいかに実現するか、にひたすら集中させてもらっています。

長沼:
先のようなきっかけから、私たちは始まり、今「Life in Work and Work in Life for Happiness」というビジョンを持って進んでいます。「場のデジタル化」によって、働く場の選択肢を広げることで、くらしと仕事を自由にデザインできる社会を目指しています。

良い体験を作り、得たデータを還元し、最適化する

──『WorkstyleOS』の概要をお聞かせください。

長沼:
『WorkstyleOS』は、ユーザーが“今働いているチェックインスポット”と“その時何をした”というデータを蓄積して、どんな時にどのスポットで働くことがベストなのかがわかる仕組みづくりを目指しているプロダクトです。

特徴の1つに、会社の中のシステムに入り込んでいることがあります。GoogleやOutlook、Slackなどさまざまなシステムとシームレスに連携させられるので、より良い「働く体験」に繋げられていると思います。

また、最近ではシェアオフィスやホテル、カフェなどでのチェックインスポットのカバー対象を拡大しています。ワークスペースの拡大は、今年から来年にかけて、さらに進むと考えており、『WorkstyleOS』は、これからが本領を発揮できる段階です。

──「先にサービスを提供し、集まったデータから働く場所に関するベストプラクティスを見つける」というのは、他ではあまり例のないアプローチだなと感じました。ACALLはなぜそのような方法を取っているのでしょうか?

長沼:
体験に根ざしてサービスをつくっているからだと思います。ワーカーの導線に紐づかせているとデータが溜まりやすいんですよ。Beaconなどでデータをとるという手段もあるのですが、それってデータをとることが目的になってしまいがちで、監視されているような感覚がしますよね。私たちは監視社会はつくりたくない。

私たちのビジョンにあるように、Happinessのためにテクノロジーを使いたい。じゃあどうやってスマートな体験を作っていくのか?と考えた時に、“ユーザーが求めているサービスを作ることが先決”だろうと。

だからまずは、オフィスでの困りごとの解決からプロダクトはスタートしています。「ACALL MEETING」では、会議室の予約が取れないための時間の無駄の解消ができたり、「ACALL WORK」では、業務の可視化によって連絡を取りたい相手の居場所を見つけたり、と。
快適な働き方を実現していくプロダクトとして『WorkstyleOS』に価値を見出していただければ、次に繋がる。そのために、いただいたデータを使って、より良い働き方の提案に還元していく仕組みが大切だと考えています。

──現在はリモートワークを推奨する企業も多くなってきて、どのようにお考えでしょうか?

長沼:
海外の企業が提唱しているようなハイブリットワークスタイルが日本でも早急に根付く必要があると考えています。

そのためにはリモートワークとオフィス、シェアオフィス、サテライトオフィスなど、統合的にデータとして捉えておく必要がある。それぞれの“体験の良さ”というところの追求をしていくためにも『WorkstyleOS』の開発を進めています。

私たちは「スマートオフィスのプラットフォームをつくっている」会社だと考えており、オフィスでも働く意義はあると考えています。

スマートオフィスとは、テクノロジーによって価値を高められたオフィス。働き方を可視化することで、それぞれの業務に最適な環境をつくり出したい。自宅では体験できないような、オフィスにも行きたくなるような最高の働く体験を『WorkstyleOS』が作っていけると思っています。

ゆくゆくは、ユーザーが『WorkstyleOS』の使用によって蓄積されたデータを活用し、ヘルスケアマネジメントもできるようにしていこうとも考えています。

▲新しくオープンした東京オフィスの一角で作業中のお二人

働き方の体験を元にしたプロダクトづくり

──『WorkstyleOS』の今後について藤原さんのエンジニア目線でお聞かせ下さい。

藤原:
長沼が冒頭で話していた「どのスポットで働くことがベストなのかがわかるような仕組みをつくる」ことはもちろん、私個人としてはさらに一歩踏み込んで「働き方をレコメンドする機能」があったらいいなと。

「どこでチェックインをして、どこで何時間ぐらい働いて、それがどのような成果を生んだのか」という情報を『WorkstyleOS』が保持していくので、そのデータをもとに「〇〇の仕事は〇〇でするのがおすすめです」といったレコメンドができると思うんですね。今後はそういうデータ基盤や機械学習のエンジンを作っていこうと考えています。

もうひとつは、ツールやサービス、あるいはIoT機器と繋がっていくようなハブとしての役割を現時点でも持っているんですが、さらに機能を追加していきたいですね。

──今後のプロダクト開発に、どのようなおもしろさを感じていますか?

藤原:
おもしろいところでいうと、働き方を自分たちで考えて変えていくところがポイントになると思っています。エンジニアとしては、やはり自分たちの作ったものを使ってもらうことで、お客様の働き方がよくなっていく過程を目の前で見られるのでやりがいがあります。

それって、遡っていくと「自分たちの働き方をどう変えていくか」という我々のビジョン・ミッションに直結しているところなんですね。

私たちのチームでは、自分たちの体験からスタートして、お客様にこういう機能を提供すればより働き方が良くなるんじゃないかという意見を持ち寄ってプロダクトを作っています。そして、お客様に実際に使っていただき、評価をいただく。その声をもとにさらに新しい働き方を考え、作っていく……。

こうした一連の流れは、理想ではありますがなかなか実践できている会社は少ないのではないかと思っています。私たちは現時点でその流れを実現できていて、自分たちのやりたいことがそのままプロダクトに直結している。そこがまずは一番おもしろいところかなと私は思います。

離れていても業務が可視化できれば、雇用が生まれる

藤原:
ソフトウェア開発って正直どこにいても出来るんですよね。自宅でもオフィスでも、あるいはカフェなり公園なり、どこでもいいわけなんです。でも、どの場所を選ぶのか、どういった理由でその場所を選ぶかが大切だと思っています。

邪魔されずに集中したければ、自宅でやっていいと思います。新しい機能を開発するにあたって、顔を突き合わせてディスカッションしたければ、オフィスに集う。その選択肢のある環境を構築する考え方が広がるよう、我々のプロダクトがお手伝いができれば良いなと考えています。

長沼:
仕事がソロワークだけで完結するんだったら、100%全部リモートワークでできるだろうと思います。でも仕事ってさまざまな人が関わりますし、職種の特性ももちろんありますが、ソロワークとグループワークをうまく噛み合わせて進んでいくと思うんですね。

ロジカルに考えていくと、ソロワークの方がいいよねという見方の方が現在は強いかもしれませんが、グループワークには可視化されてない価値があるはずなんです。『WorkstyleOS』でデータを集めていく中で、そういった価値についても見出していきたいと思っています。

──グループワークの価値を見出すというのはおもしろいキーワードですね。

長沼:
今起こっているのは、“場所の解放”だと思うんですよ。どの場所で働くと効率がいいのかというところがまだわからないから、その答えを見つけるために僕たちが開発を進めているというのが一つ。

あと、次に起こるテーマとしては“雇用の開放”があると思っています。1社だけじゃなく複数の会社に所属したり、フリーランスのような働き方をする方がより増えてくると。

でも、一緒に働く人のパフォーマンスが可視化できていないから、フリーランスの方が大企業の案件や世の中にインパクトのある仕事を受けづらい環境があるのかな、と思っていて。僕たちはそこを可視化できるプロダクトにしたいと考えています。

そうすると、より良い仕事、より大きな仕事、単価の大きい仕事についても個人で請けられて、なおかつグループの仕事がより良くできる関係性が出来てくる。そうすると社会全体が豊かになると思いますし、ひいては地域の活性にもゆくゆくは繋がると思うんです。

場所を選ぶ判断基準をつくる

──実体験を活かされているということで、ACALLでは実際にどのような働き方を推奨されているんでしょうか?

藤原:
コロナウイルスの問題が起きる前から、フルリモート・フルフレックス制度を取り入れて実行していました。

「自らがいち早く新しいワークスタイルを実践し、試行錯誤した経験を社会に発信します。」とミッションでも掲げ、新しい働き方の一つを「自分たちでやってみる」ことがすごく大切だと思っています。

フルリモートワークを経験して、働く人がどのような気持ちになるのか、どういう働き方ができるのか、フルフレックスでどのような業務影響が出るのか、という点について実感を持てました。その実感をもとに、PDCAを自分たちで回して開発を進められたので、会社としてもとても良い財産になっているなと思います。

──先ほど長沼さんからもお話がありましたが、実際にフルリモート、フルフレックスを導入されたことで得られた課題とは何だったんでしょうか?

藤原:
日々の会議についてはツールを使いエンジニアは問題なく順調に進んでいたんですよ。でも、ある程度時間が経ってくると、コミュニケーションがギクシャクし始めて……。

仕事が味気ないといいますか、ちょっと面白くなくなってきた。それが何でなのかをみんなで分析をしている時に「みんなの様子が全くわからない」って意見が出たんです。

「ちょっと今日体調悪そうだね」とか「最近どう?」など、今までオフィスで一緒に顔を突き合わせることで自然と生まれていた雑談が、リモートワークだと全くなくなる。そういったコミュニケーションはモチベーションにも繋がり、雑談を生むようなリアルが重要だった、ということを改めて自分たちで実感できました。

現在も基本的にリモートワークを続けていて、Discordで常時ボイスチャットでつながっている状態で業務を進めています。集中して開発したい場合にはスイッチをオフにできるルールです。出社するときには、開発に集中しに行くよりもコミュニケーションを取ることに重きを置いて切り替えてもらっています。

繰り返しになりますが、場所は選択できる。それをどんな基準で何を目的として選択するのかが大事だということを、自分たちの実感として捉えることができました。

拡大していく事業に合わせ、新しい価値提供をしていくグロースフェーズ

──最後に、ACALLに興味をお持ちのエンジニアにメッセージをお願いします。

長沼:
「『くらし』と『はたらく』を自由にデザインする」という想いに共感し、主体的にワークスタイルをデザインしていける方と一緒にはたらきたいと思っています。

私たちは、自分たちがいいと思ったものを提供するためにプロダクトを開発し、全員で挑戦していくということを大切にしています。プラクティスチャンネルというのを社内でつくっていて、そこに「こういう働き方があったらもっといいよね」という案をどんどん出し合っているんです。そこに新たな『WorkstyleOS』のヒントが生まれて来ていて、とてもいい循環が起こってきています。

試行錯誤を繰り返し、みんなで共有して開発を進めていくという流れを楽しめる方は、合うんじゃないかと思います。

藤原:
長沼が言う通り、我々が掲げているビジョン、ミッション、バリューに共感していただけるというのが1番大切なところですね。

最初の頃は、お客様にどういったサービスがフィットするのか手探りな状態でしたが、最近は『WorkstyleOS』が目指すべき方向がしっかり定まってきて、大手のお客様にもしっかり受け入れられるような状況になってきました。

プロダクト開発においては、最新のマイクロサービスアーキテクチャも取り入れながら、安定した基盤で新しい価値提供をしていく、という難しくもおもしろいフェーズです。

働き方に対する自分なりの問題意識を持って「技術でどう解決していくのか?」を、突き詰めて考えられる方とプロダクトについてお話したいと思っています。