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インタビュー

プロトコルレベルの課題解決から次世代送金実現へ―国際機関と挑むブロックチェーンと金融の未来

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株式会社Datachain

株式会社Datachainの設立は2018年。同じくブロックチェーンをキーテクノロジーとしたスタートアップ企業が多数設立した、日本のブロックチェーン黎明期でもありました。上場企業の株式会社Speee傘下である利点を活かし、腰を据えて取り組んできたR&Dがグローバルでも高く評価されたほか、国内外の大手企業や3大メガバンクとの提携事業を次々と発表し、金融市場に大きなインパクトを与え始めています。

R&Dを経て今まさにプロダクト開発にも取り組む同社では、ブロックチェーンのプロトコルレイヤーのコア領域の開発エンジニアに加え、ウェブアプリケーション開発エンジニアの募集枠をさらに広げ、積極採用中でもあります。創業期から同社のR&Dを牽引してきたリードエンジニアの佐藤怜さんと松宮康二さん、そしてメルペイ、カケハシを経て先月入社したエンジニアリングマネージャー新田智啓さんに、同社の仕事のおもしろさを聞きました。

プロフィール

エンジニアリングマネージャー

新田智啓(しんでんともひろ)さん

中小SI企業でエンジニアとして数社を経験。 その後、サイバーエージェントで開発責任者、メルペイでエンジニアリングマネージャーを担い、組織開発や開発プロジェクトを推進。 カケハシで薬局向け新規事業の立ち上げ開発チームでエンジニアリングマネージャーを担う。2024年6月にDatachainに入社し、エンジニアリングマネージャーを担当。

リードエンジニア

佐藤怜(さとうりょう)さん

大学在学中より関わりのあったソフトウェア開発企業にて、光学機器や生命情報科学系の統計解析、機械学習プロジェクトにおいて設計から開発まで幅広く携わる。Datachainには、創業から間もない2018年に入社。リードエンジニアとして、R&D領域も含め、ブロックチェーンを活用したプロダクトデザイン、設計、実装を手掛ける。

リードエンジニア

松宮康二(まつみやこうじ)さん

新卒でマイクロアドに入社。アドプラットフォームのサーバーサイド、ストリーミング処理基盤の開発を担い、スクラムマスター、テックリードとしてチームを牽引。2020年にDatachainに入社し、バックエンド領域のリードエンジニアを務める。

ブロックチェーンは既存技術の積み重ね

2024年現在、ブロックチェーン技術に馴染みのあるエンジニアは多くありません。これまでのWebアプリケーションの概念とは一線を画す非中央集権型のモデルに、畑の違いを感じるかもしれません。しかし佐藤さん、松宮さんに聞けば、「既存技術の積み重ねでできているから、知っている事も多々ある」と口を揃えました。

ブロックチェーン技術について語る佐藤さん
ブロックチェーン技術について語る佐藤さん

「ブロックチェーン技術は、ぽっと出の新しい技術と思いがちなのですが、実は多くの部分は基礎的な情報技術でつくられています」(佐藤さん)

「たとえば公開鍵暗号やハッシュ、デジタル署名などのセキュリティ技術や、マークルツリーといったデータ構造の考え方など、 大学で履修したような基礎技術がブロックチェーンの根幹に使われているんです」(松宮さん)

両名ともに入社前からブロックチェーン技術に明るかったわけではないと言います。選考の過程でブロックチェーン技術の深みを知り、技術者としての探究心を刺激されたそう。

「暗中模索でもがくというより、ある瞬間に『点と点が線で繋がったな』って感覚があるんです。それも勉強を始めた早い段階で。持っているバックグラウンドによって、それを体感するポイントは異なると思いますが、エンジニアなら誰しもがキャリアの連続性を感じられると思いますよ」(松宮さん)

勉強方法について両名に聞くと、書籍よりも公式ドキュメントを参照したり、スタック・オーバーフローで質問したりすることが多かったそうです。当時は英語文献ばかりでしたが、今では日本語の文献も増えているとのことで、少し安心感がありますね。

「つまずくポイントは、世界中の誰かがすでに経験済みの場合がほとんどです。だから大抵のことは、コミュニティに立ったイシューから解決の糸口を見つけることができます。思い返しても、情報収集に困ったという記憶はないですね」(松宮さん)

前例がない取り組みに失敗はない。あるのは進歩のみ

とはいえ両氏が行ってきたPoC(概念実証)では、世界で初めての技術的な取り組みと対峙することになります。松宮さんは昨年経験した開発案件を振り返り「前例がないことに、むしろ安心感を覚えた」と涼しい顔で答えていたのが印象的でした。

「技術的にチャレンジングなことがしたかった」と入社の動機を語る松宮さん
「技術的にチャレンジングなことがしたかった」と入社の動機を語る松宮さん

「入社当初は持っている知識で戦おうとしたけど、それでは通用しないとすぐにわかりました。だから開き直りの境地ですね(笑)僕だけじゃなく、誰も知らないんだから、ひとつずつ解決していくしかありません」(松宮さん)

当該案件における最終的な山場は、これまで開発してきた個々のコンポーネントの結合でした。* それぞれ単体では成立しており、理論上では全体も通るはずだが、誰も試したことがなく、結果が読みづらい状況でした。そのためテスト期間を予め長めに設け、ひとつ進んでは修正、ひとつ進んでは修正…、と地道な修正作業を繰り返したそう。成功した時には、大きな達成感と安堵感に包まれたといいます。

* 技術の詳細についてはこちらをご確認ください

「僕もそのマインドセットには共感しますね。松宮の事例のように前例のない開発をする前に、それが実現できそうか調査をすることも僕たちの仕事です。こうしたフィジビリティをつけにいく過程に、当社ではしっかり時間をかけることができるんです。調査の結果『不可能である』という結論が出たとしても、それは失敗ではありません。不可能だということがわかった、重要な進歩ですから」(佐藤さん)

ブロックチェーンの技術で「安全な取引」を実現させる

そもそもこれまでのブロックチェーン技術は、現実世界から遮断された仮想空間でのみ存在していたと言えます。ブロックチェーン間の取引を実用化できない理由の一つに、脆弱性という面で大きな課題があったからです。

「ブロックチェーンの世界では、毎月100億円もの単位で暗号資産の流出が発生しています。つまり多額の資産が繰り返し、ハッカーに攻撃され盗まれているんです。中でも特に狙われやすいのは、『クロスチェーンメッセージ』と言われる、異なるブロックチェーンをまたぐコミュニケーションの部分でした」(佐藤さん)

同社ではこの部分の安全性を高めるため IBC(インターブロックチェーン・コミュニケーション)を用いたインターオペラビリティ(相互運用性)技術のインフラ/プロトコルレイヤーを開発し、今や世界最大級のコントリビューターとなっています。

「YUI」
YUI 画像提供:株式会社Datachain

世界をリードするステーブルコインの整備と利活用

暗号資産の注目度は高く、ステーブルコイン(法定通貨のように市場価値が安定している暗号資産。以下、SC)の市場規模は25兆円までに急成長していますが、法定通貨に比べるとまだ0.5%にしかすぎません。この割合が増えれば、貨幣の歴史を変える大きなインパクトとなるのですが、そのためには信頼して利用できる根拠となる法的整備が不十分でした。この点で世界をリードしているのが、日本であり、同社の取り組みなのです。

「日本は2023年6月に、先進国で初めてステーブルコインを規制する法律『改正資金決済法(通称:ステーブルコイン法)』を施行しました。これに伴い当社は、日本3大メガバンクグループなどと共同で、デジタル証券やステーブルコイン等のデジタルアセットのプラットフォームを提供する『Progmat(プログマ)』を設立し、高額な法人間決済でも信頼して使用できるステーブルコインを整備しています」(新田さん)

法律に準拠したステーブルコインの誕生によって期待される、世界的な課題解決の一つに、182兆ドルという莫大な市場規模を誇るクロスボーダー送金(国際送金)があります。

「現在の国際送金の仕組みでは多くの場合、コルレス銀行と呼ばれる中継銀行をバケツリレー形式で介しています。時差や言語の問題などもあいまって、特に新興国への送金においては、1つの送金をするのに数日から長い場合は1週間以上かかることもあるのです。

分散台帳、つまり透明性が高くトレーサブルなブロックチェーンの特性を生かし、コルレス銀行(中継銀行)を経由しない送金を実現することで、より早く・より安い国際送金の実現が可能となります」(松宮さん)

同社では、現行の国際的な送金インフラであるSwift(国際銀行間通信協会)と連携することで、既存の仕組みを生かすスキームを提案し、世界初となるステーブルコインを用いたクロスボーダー送金の基盤構築プロジェクトを進めています。

Progmat「Progmat」 画像提供:株式会社Datachain

「ブロックチェーンと聞くと暗号資産の不安定さや、メタバース空間のような抽象的なイメージが先行しがちですが、私たちが扱うのはもっと地に足のついたところ。現行の金融機関の仕組みと手を取り合い、共存しながら、ブロックチェーン技術で社会をいかに便利にできるか、という視点からグローバル規模の事業展開をしていることが特徴です」(新田さん)

メルペイ、カケハシの経験を活かした組織・文化づくり

R&DやPoCが中心だったこれまでは、複数社が参画する臨時的なプロジェクトチームとして、集結と解散を繰り返してきました。しかし今後は、中長期に及ぶ自社事業の開発業務が大きなウェイトを占めます。徐々に開発チームが大きくなる中で組織の文化や組織づくりの重要性が浮き彫りになった同社で、そのミッションを担うのがEM新田さんです。新田さんはメルペイ、カケハシの経験を生かして、「技術者がより技術に集中できる組織にしていきたい」と意気込みを語りました。

「真っ白な組織・文化に挑戦するのはおもしろそう」と、入社した新田さん
「真っ白な組織・文化に挑戦するのはおもしろそう」と、入社した新田さん

「今回の転職は、年齢的にもチャレンジができる最後の機会かなと考えていました。エンジニア贔屓の私にとっては、技術先行でそのユースケースから事業を生み出している点にとても魅力を感じましたね。特にブロックチェーン技術は、どこか一国へ市場開拓をするのではなく、全世界のスタンダードをつくることができるという意味で、グローバル展開の規模感が桁違いだとも思いました。

そんな社会的な影響力を秘めた企業が、組織制度や文化づくりを必要としていると聞き、役に立てそうだという実感と、これまで以上にスキルが広がる可能性を感じ、入社を決めました」(新田さん)

組織づくりという面では、今まさにブロックチェーンを開発するエンジニアとウェブアプリケーション開発エンジニアの採用を強化しています。いずれもブロックチェーン技術に絡むので、ウェブアプリケーション開発の次のキャリアを考えている人におすすめしたい求人です。

入社前にブロックチェーンの知識がなくても大丈夫。新しい領域に足を踏み入れることは不安もあるかもしれませんが、もし合わなかったとしてもその挑戦はエンジニアとして必ずプラスになります。

なぜならブロックチェーン技術のキャッチアップには、基礎的な技術の理解を深めることが必要になるからです。この経験はこれからのエンジニアのキャリアに役立つことはあっても、キャリアを狭めてしまうとか、無駄な努力になってしまうことはありません」(新田さん)

普段はリモートワークが中心。オンライン・オフライン問わず雰囲気は和やか
普段はリモートワークが中心。オンライン・オフライン問わず雰囲気は和やか

取材に応じてくれた3名から発せられる言葉は、どれも前向きで力強く心に残りました。それは純粋に、技術者としての探究心が満たされる環境にあるからこそなのかもしれません。本稿では企業の成長性や技術の詳細について、書ききれない部分も多くありました。ぜひカジュアル面談や選考ステップで対話を通して感じてください。


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クロスボーダーステーブルコイン送金基盤構築プロジェクト
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000055051.html


Swiftと連携したステーブルコインPJでグローバル市場を取りにいく話
https://note.com/hisata/n/n004c3e4fbec1


グローバルレベルでのインパクトを起こすワクワクする開発組織をつくる
https://note.datachain.jp/n/n9807113172e5