2026年で創業10年。エンジニアの課題解決をする会社としての次の一手とは
インタビュイー
佐藤 将高さん
取締役 CTO
東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻(*)卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ立上げに伴い取締役CTO就任。
*大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。
創業に駆り立てた「技術立国日本を取り戻す」という熱き想い
― まずは創業メンバーである佐藤さんと山田さんの出会いについて教えてください。
佐藤 2010年前後だったかと思いますが、山田さんが前職のレアジョブ社に在籍しているタイミングで、私も学生インターンとして関わっていたことが出会いのきっかけになっています。
当時の山田さんはマーケティングチーム、私はエンジニアチームに所属していたため、業務で直接関わることはさほど多くなかったと思います。山田さんとの関係が深まったきっかけは、フィリピンに出張に一緒に行く機会がありまして、そこで2人で会社が主催する現地のクリスマスパーティーに参加した時だったと思います。
― レアジョブ社でお二人は出会っているのですね。その後佐藤さんはグリー社にご入社されていらっしゃると思いますが、山田さんとは引き続き連絡を取り合う関係だったのですか?
佐藤 年に1度程度は、お互いの近況報告も兼ねて連絡を取り合っていました。最初はカフェや居酒屋でお互いの近況報告をするのみの関係性でしたが、途中から山田さんのビジネスアイデアに対して、私がエンジニアの立場からフィードバックをする等の会話が増えてきました。
そこで、2013年頃だったかと思いますが、実際に一緒にビジネスを立ち上げてみようという話になりかけたことがありました。ですが、諸々の事情からそのタイミングでは一緒にスタートすることは諦め、2016年のファインディの創業に至るという流れになっています。
― 佐藤さんはどのような背景や想いから、ファインディの創業を決意されたのですか?
佐藤 私が育った環境から来るものと、私自身の課題感から来るものの2点があります。
育った環境のお話からしますと、私の祖父は工務店を創業し、父が2代目として継いでいる家庭で育っています。そんな家庭で育ってきたので、自分自身の手でビジネスを立ち上げ、育てるという手段が人より身近に感じられる環境でした。
今でこそ、起業や転職といった選択肢が以前と比較しカジュアルなものとして受け入れられる社会にはなっていますが、生まれた時からそれが当たり前の環境に身を置いていたので、自分もいつかは祖父や父のようにチャレンジをするタイミングが来るだろうと漠然と感じていたことがあります。
そして、私自身の課題感のお話をしますと「技術立国日本を取り戻す」というキーワードが今もファインディには存在していますが、製造業で世界を席巻した日本が、ソフトウェアの世界では遅れを取っている現状に私自身も課題を感じていましたし、なんとかせねばという想いを持っていました。山田さんとのディスカッションの中でこのキーワードが出てきた瞬間に「自分の人生を賭けてでもチャレンジしたい領域だ」と直感的に感じ、どのような手段でそれを実現していくかは度外視で、まずは山田さんと共にスタートしてみたいという気持ちが芽生えたことを覚えています。
― 創業をされた後、まずどのようなビジネスからスタートされたのですか?
佐藤 「技術立国日本を取り戻す」という想いは山田さんと私で共通のものではありましたが、足元何から手をつけていくかという点はまだ具体的になっていませんでした。
そこで、山田さんがレアジョブ社で人事部長を務めていた際に感じた採用領域の課題に対するアプローチからまずスタートしてみようとなりました。優秀なエンジニアが有望な企業と適切に出会うことで、日本の成長に繋がっていくであろうという点は確信していたので。
まず何からスタートしたかと言いますと「求人票採点サービス」です。採用担当の皆様は非常に多忙です。では何が多忙の原因になっているかを分析した時に「人材紹介会社と企業のコミュニケーション」の生産性が低いのではという仮説を持ちました。人材紹介会社と企業の間では、日々採用ターゲットのすり合わせが行われています。できるだけ自社にフィットした候補者を紹介してもらうことで、自社の採用における生産性を向上させる必要があるためです。
ですが、求人票に記載の条件等が明確でないことが原因で、共通言語化がされておらず、上手くすり合わせができていないが故に、ターゲットとズレた方が紹介されてしまい、結果採用担当の皆様の工数が圧迫されているという事象が発生しているように思いました。求職者の皆様にとっても、求人票のクオリティが上がることで、自分が働きたい企業を見つけやすくなることから、全てのステークホルダーにとって価値を提供できるサービスになるのではと思い、スタートしました。
― 「求人票採点サービス」からスタートされたということですが、今のファインディの人材マッチングのビジネスにはどう繋がってきたのですか?
佐藤 求人票採点サービスは、結果的にそれだけでは上手くいかなかったのです。確かにそこに課題は存在していたのですが、利用いただいた企業様にヒアリングをしたところ「確かに良い考えだとは思うけど、これだけで採用が上手くいくわけではないですよね?」というお声が多くありました。では利用いただいた企業様の真のニーズはどこにあるのかと問うていくと「単純に、優秀なエンジニアが採用できるのであればそれで良い」というもので、至ってシンプルなものでした。
また、実際に自分の知り合いの優秀なエンジニアの方々にも転職における課題感をヒアリングしたところ、テンプレートと思われるスカウトがたくさん来て困っていたり、どんな会社が良い会社なのかわからない、といった課題が多々見つかりました。ここは良質な情報が記載された求人票をつくるという求人票採点サービスの思想を活かすことでよりマッチ度合いが高い世界観をつくれるかもしれないと考えました。
エンジニアが真に欲しい転職サービスが存在していないのではないかという仮説を立て、エンジニアにとっても採用担当にとっても嬉しくなるような、エンジニアの方も企業も全てのユーザーが求めるプラットフォームをつくると決め、それが今のFindyの原型になっています。
2026年で創業から10年に。次のチャレンジに向けて、今やるべきことは「価値の最大化」
― Findyは今や企業がエンジニア採用を行う上でなくてはならないサービスに育ってきていると思います。見える景色も変わってきている中で、佐藤さんは今どのような想いで日々挑戦されていらっしゃるのですか?
佐藤 根っこの「技術立国日本を取り戻す」という想いは変わっていません。自動車産業も含め、日本の強みは「リバースエンジニアリング力」。つまり、海外で生まれたものを、より良い形にアップデートをして市場に再投入する力だと思っています。実際にそれで世界を席巻した時代があるわけですから、ソフトウェアやアルゴリズムの領域でも同じことが実現できると信じています。
それを実現するためにファインディが今何をやるべきかを考えると、まずは「エンジニアが適切に評価され、認められる環境をつくること」だと思っています。例えば私たちが開発している「スキル偏差値」はまさにこの部分を解消したくて展開しているわけですが、エンジニアのスキルという見えづらく判断しづらい部分を多角的に可視化し、才能が埋もれない状態をつくっていくことで、日本の技術力を向上させるお手伝いができると思っています。
最終的には、私たちのサービスが、エンジニアのスキルの証明書代わりとなり、当たり前に活用されている社会がつくれると良いなと思っています。
― 「いつまでにどのような状態になっていたい」という具体的な道筋は何かありますか?
佐藤 2026年に創業10年を迎えます。まずは2026年を迎えるまでに、価値を最大化しておきたいというのが想いとしてはあります。
この価値の最大化の焦点はどこにあるのかと言いますと、一つのキーワードは「海外」です。ファインディの設立趣意書には、先ほどからお話している「技術立国日本を取り戻す」以外に「そしてファインディも海外へ」と記載しています。リバースエンジニアリング力を用いて、海外で成功する日本企業を輩出していくことはもちろんですが、ファインディのサービス自体も将来的には海外で勝負できるものにしていきたいと思っています。そのためには、既存事業をきちんと急成長させながら、投資家の皆様にもより信頼されている状態をつくり、上場を通過点としながら、万全の状態で海外で勝負できる事業・組織の構築が重要だと考えています。
事業・組織の状態は良好。一方でより成長角度を上げるためには、優秀な仲間が必要
― 今お話いただいた道筋の実現に向けて、現時点における事業の状態はいかがですか?
佐藤 過去からの成長という観点では、とてもポジティブに捉えています。主軸事業のFindyを中心に、今では4事業を展開できていますし、各事業が順調に伸びています。2023年時点で社員数も150名を超え、優秀な人材が育ってきている状況です。弊社のサービスを活用いただいているCTOの方々に「めちゃくちゃ良いサービスをつくってますよね」と仰っていただけることも増えていますし、感謝のお言葉をいただくことも多くあります。
ただ、まだまだやれることはあるなというのも率直に思っています。4事業のシナジーをどのように育んでいくのかもそうですし、関連する新規事業の立ち上げももっと加速していきたいと思っています。良い形で成長できていることは間違いないですが、ここからもう一踏ん張り、貪欲に成長角度を高めていくような動きができると良いなと思っています。
― 組織の状態はいかがですか?
佐藤 主に私が見ているのはエンジニア組織になりますが、非常に開発生産性が高い状態で動けている点は良い部分だと捉えています。現時点においては、最適な状態を構築できていると思っています。
一方で、今後新規事業等が増え、事業ラインが複雑化していくことも鑑みると、エンジニア組織を事業の成長に応じてどのようにスケールさせていくかという観点はこれからより強化していかねばと思っています。
また、今開発生産性が高いというお話をしましたが、高い生産性をエンジニアリングに閉じたものではなく、プロダクト全体の生産性という点でより向上させていきたいと思っています。セールスやマーケティング等のメンバーとの会話で発生したプロダクトの課題を、いかにスピーディにお客様に提供できる状態にしていくかという点では、開発組織だけでなく、他部署との横断的な連携を強化していく必要があると考えています。
― 踏まえて、どのような方を今採用したいと考えていらっしゃいますか?
佐藤 事業が伸びているので、採用は積極的に行っています。「エンジニアリングが好きで、とにかくそこに向き合い続けたい」と考えている方も採用したいですし「エンジニアリングは好きだけど、より事業側でサービスのグロースに向き合いたい」と考えている人もウェルカムです。エンジニアとしてコードを書きたい方はもちろん、PM、PdM、EMといった職種を希望されている方々もウェルカムですね。
ファインディは、エンジニアに向けたプラットフォーマーとして複数の事業を展開しながら成長していく企業です。そのため、各事業を俯瞰して全体の成長を推進していく目線を養うこともできれば、現場のことを物凄く大事にするカルチャーも根付いているので、どのようなキャリアを目指す方であってもバランスの良い会社だと思っています。
どちらの方が優先度が高いという優劣はなく、優秀な方が採用できればできるほど、事業の成長角度が高められると思っているので、是非興味のある方はカジュアルにお話させてもらえればと思っています。
広がりが物凄く大きい環境だからこそ、面白いし成長できる
― 最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。
佐藤 ファインディはプラットフォーマーとしての成長を志しています。よく「人材サービスの会社なんですよね?」と候補者の方からご質問を受けることがありますが、それだけではありません。「エンジニア」というバーティカルな領域でビジネスを展開する会社として、これからも「エンジニア×社会課題」の解決に向けたサービスを次々とつくっていきます。
だからこそ、広がりが物凄く大きい環境が存在しています。広がりが物凄く大きいからこそ、やりたいことが日々出てきますが、まだまだ時間やリソースが十分ではありません。多角的な事業づくりが経験でき、かつ全てのサービスにシナジーがあるという面白さを一緒に味わいながら、会社と個人の成長を共に実現していける環境で、是非皆さんと一緒にチャレンジしていきたいと思っています。