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インタビュー

「課題は星の数ほどある」から面白い。急成長企業タイミーのプロダクト開発の「舞台裏」

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株式会社タイミー

「『働く』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに掲げ、スキマバイトアプリ「タイミー(Timee)」などの事業を展開している株式会社タイミー。

2018年8月にサービスをリリースし、2022年3月時点での登録者数は約245万人に達しました。数字だけを見ると順風満帆に成長をしている印象を受けるものの、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、コロナ禍前と比べて売上が3分の1まで激減した時期もあったのだとか。

苦戦を強いられたものの、落ち込んだ業績をわずか半年でV字回復させ、2021年には1年間でユーザー数が約60万人も増加。また同年にシリーズDラウンドで53億円の資金調達を実施し、累計調達額は約90億円に到達しました。

今回は、常に話題が絶えず注目を集めているスタートアップ企業 タイミーの開発を支えるCTO 亀田彗さんと2020年6月にジョインした岡野兼也さんに、プロダクト開発の「舞台裏」と同社でエンジニアが働く醍醐味や魅力を伺いました。

■プロフィール
亀田彗(トップ写真の向かって左)
株式会社タイミー CTO
大学時代、スタートアップやメガベンチャー企業でインターンを経験した後、2017年、ピクシブ株式会社へ入社。アプリエンジニアとしてiOSアプリ開発へ従事する傍ら、メンターとしてタイミーをサポート。2019年6月、タイミーへCPOとしてジョイン。エンジニア採用や開発組織の構築に携わっている。2020年8月、CTOへ就任。

岡野兼也(トップ写真の向かって右)
株式会社タイミー ソフトウェアエンジニア
タイミーでのマッチング領域の問題を解決するチームに所属し、サーバサイドとクラウドインフラの開発・運用をしています。最近は関心の分離や物事の計測が好きです。

持続可能な開発環境があった

──はじめに岡野さんがタイミーに入社を決めた理由を教えてください。

岡野:自分が理想とする、持続可能な開発ができる環境だったからです。

どういうことかというと、例えば技術トレンドの変化に対して、ひとつの技術に囚われて開発すれば、顧客体験や品質の低下を招いてしまう可能性があると思います。

しかしタイミーで働くエンジニアは、細かい技術や組織構造に強いこだわりを持たず、プロダクトときちんと向き合っている組織でした。また、開発から運用まで一気通貫で責任を持っているため、変化を感じやすい体制に魅力を感じましたね。

大学時代の先輩からの紹介で、当時はCPOを務めていた亀田とフラットに対話する機会を設けてもらえたことも入社を決めた理由の一つです。中長期の未来を描きながら組織の在り方を考えていることや、いま抱えている課題意識についても率直に話してもらえたことで、自分の軸とタイミーの未来が重なっていることがわかり、入社を決意しました。

亀田:開発と運用、どちらも重視するタイミーの価値観は、今後組織拡大するうえでも大切なポイントだと考えています。

エンジニアリング組織は開発フェーズにスポットライトが当てられることが多いですが、それを維持したり、改善したりする運用フェーズも非常に重要なポイントです。

また岡野さんに限らず、タイミーに入社する方は皆さん何かしらの得意なスキルを持っているため、私の役割は一人ひとりのスキルの可能性を最大限に発揮させることだと考えています。

トップダウンで細かく指示したり、決めたりするのではなく、一人ひとりのエンジニアが専門性を活かし、自発的に成長できるような組織にすることが、私の最大のミッションですね。

グローバル市場を狙う

──昨年は経営体制を強化したという発表もされていて、会社としての勢いが増している印象を受けます。

亀田:2021年は1→10の事業拡大フェーズに突入した年であり、経営体制の強化と中長期の事業計画の策定は必須でしたね。

というのも、コロナ禍前のタイミーは飲食業界の顧客を中心に事業展開を行っていたため、コロナ禍で売り上げが激減した時期がありました。そのため違う領域での展開を模索する必要があり、物流業界への人材支援を始めたのです。結果、過去最高売上を更新するほどのV字回復を達成し、現在は飲食業界の売り上げも徐々に回復しつつある状況にあります。

学生起業からスタートしたタイミーには、走り出した際に明確な事業の筋道があったわけではありません。それにも関わらずここまで成長できたことは、プロダクトとしての可能性を強く感じるとともに、自分達への自信にも繋がりました。

──経営体制の強化、中長期の事業計画を策定したことで、組織にはどのような影響がありましたか。

亀田:事業戦略の時間軸が伸び、解像度も上がりました。経営陣が見つけたマーケットやその可能性に対して、自分たちなりに仮説を出し、さまざまなチームからアウトプットが生まれている。こうした現象の積み重ねが組織に好循環を生み出していると感じますし、今後より面白い組織になっていくだろうと思っています。

──具体的には、今後どのような変化が生まれると思いますか。

亀田:タイミーの事業は、海外ではオンデマンドスタッフィングと呼ばれています。いわゆるユーザーが求める時(働きたい時)に、その要求に応じてサービス(求人)を提供するビジネスという意味です。

実はその領域の規模感でいうと、タイミーは現在世界で1、2位を争うポジションにいます。グローバルでのスケールを十分に狙える位置にいるんですよ。

その証拠に、昨年53億を資金調達しましたが、そのなかには海外機関投資家も含まれている。日本だけでなく、グローバルのビジネスシーンに認知されているのだと自負しています。

現状のグローバル市場で影響力を持つポジションにいることに加えて、フラットで強いエンジニアリング組織を作ることができれば、タイミーは今後ますます可能性のあるチームになるでしょう。また同時に、メンバーにも希少な体験を提供できるだろうと考えています。

権限委譲をベースにした組織構造

──現在のタイミーが置かれているフェーズの魅力を教えてください。

岡野:常に変化するマーケットや顧客ニーズに対して、組織が変わらなければ価値を提供しつづけることはできません。

たとえばこれまでの組織構造では、システム障害が軽微なものだった場合、誰かが空き時間で自主的に対応するといった改善の仕方でした。これはまさに属人的な解決方法であり、持続可能性があるとは言えません。言い換えると、当時は個人で解決できる程度の事象だったということでもあります。

現在はマーケットの規模変更や企業成長に伴い、生じる問題の難易度が高くなってきたため、組織構造を変えました。そういった変化の手触り感を会社全体が感じています。非常にフラットな状態で変化を楽しめる風土があるとも言えるのではないでしょうか。

亀田:会社において組織が常に変わり続けることは、その都度メンバーの環境や仕事の内容が変わってしまうことにも繋がりますし、通常はネガティブな反応が起こるものだと思います。しかしタイミーには、プロダクトに真摯に向き合い、柔軟に対応できる人が揃っているんです。組織としてのフラットさは、非常に高いと自負しているところですね。

またこれは弊社のユニークな点なのですが、代表の小川が24歳と若いこともあり、トップダウンではなく権限委譲をベースにした組織構造になっています。そのため、経営層だけで情報をクローズドにして、現場にはトップダウンの指示しか降りてこないというようなことはありません。

「個人」と「事業」のつながりが強い環境

──開発体制についてお聞かせください。

亀田:現在25名程のメンバーで構成されています。コンセプトとしては、それぞれの小さなチームで開発から運用、フロントエンドからいわゆるSREのような領域まで、開発から運用すべてのフェーズを担える組織を目指しています。

岡野:現在私が所属するマッチング領域では、複数のチームで協働しともにプロダクトをスクラム開発するLeSS(Large-Scale Scrum)を導入しています。

マッチング領域には約12人のメンバーが所属しており、PdMが1人、SMが1人、その他10人の開発者がそれぞれ5人の2チームに分かれています。技術スタックとしては、Android、iOS、デザイン、アナリティクス、バックエンドの1つあるいは複数の専門性を持ったメンバーがチームにいる状態です。

各メンバーがチームの目標を達成するため、アプリの開発や運用はもちろん、開発内容の検討や結果の確認を行っています。要は、提案から開発、運用、結果検証までを行うフルサイクルなチームです。成果物への反応を見て、対応しながら2週間のスプリントを回すことで、生産的かつ納得度の高いプロダクト開発ができていると思っています。

──どのようなポイントに組織の魅力を感じますか。

亀田:スタートアップの面白さは「個人」と「事業」のつながりが密接な部分にあると思うんです。

個人の行動と事業拡大の連動性を肌で感じとれる距離でプロダクト開発ができることは、エンジニアにとって貴重な経験だと言えるのではないでしょうか。これはトップダウンではなく、タイミーが権限分散型の組織だからこそ、より強く感じることができるのだと思います。

岡野:過去に、弊社でマイクロサービスとしてチャットボットをリリースしましたが、継続的な開発・運用を行えない状況に陥っていたことがありました。

しかしユーザー体験を高めるためには非常に重要な機能になると感じていたため、現状の体制でも開発を進められるように、アーキテクチャを従来のモノリスに戻す判断を、経営陣ではなくチームの意思決定で進めた実績があります。

プロダクトの未来や顧客視点で開発を進められるカルチャーが根底にあり、それを実現するフラットな環境が用意されているのは魅力ですね。

──技術的な部分ではどのような特徴がありますか。

岡野:そこまで難しい技術は使用していませんが、きちんと観測をして必要なときに必要な量の対応をすることを心がけています。私たちのビジネスモデル上、アプリのファーストビューに求人の情報や応募期限といったデータが集まります。トップページまでのアクセスが遅いアプリはユーザー体験として優れていませんし、ファーストビューの速度には基準を設けています。

基準を超えた場合、ユーザー体験向上のためにクエリの調整や、DBを大きくするなどのサイクルを細かく回しています。増大するトラフィックに対し、いかにサービスのレベルを維持するか。このあたりの技術的改善の塩梅は、重点的に意識しているポイントです。

亀田:「ちょうど良い塩梅」の技術の使用は、タイミーとして大切にしているポイントでもあります。

意思決定の基準として、開発から未来の運用フェーズまでを予測した中長期の視点で考え、はたしてそれに見合う技術か否か、本当に良い意思決定かを、常にメンバーが考える習慣が組織として根づいていますね。

課題は星の数ほどある

──今後の組織拡大成功を左右するカギについてはどのようにお考えでしょうか。

亀田:タイミーの事業を担う二つのチームに、より専門性を持たせることができるかどうかがカギになると考えています。

一つ目は、アプリ上でユーザー側と企業側の双方向にメリットがあるマッチングを実現することを追及する「マッチング領域」を担うチーム。

二つ目は、ユーザーの勤怠管理・給与計算や支払を代行し、ユーザーが安心かつスムーズに働けるバックグランドの構築を担う「スポットワークシステム領域」を担うチームです。

成長に伴い登録者数が増加しているのは喜ばしいことですが、ユーザー側のサービスを見る目が肥えてくるフェーズだとも言えます。したがって、あくまでフラットな風土は変えず、各領域に明確な境界を設けて専門性を強化し、プロダクトのアップデートを加速する環境を整える必要がある。

組織の拡大・再編は容易に成功するものではありませんし、現状に自惚れることなく未来に向けた組織開発を実現していきたいと思います。

──エンジニア視点で思う課題についてもお話いただけますか。

岡野:課題は星の数ほどありますが、現時点では「処理速度の改善」が急務です。

現時点での計算上、毎年3倍ぐらいユーザーが増えていく見込みですが、既に既存のシステムでの限界は見えています。早急なフィードバックサイクルの改善が求められていますね。

前述した通り、これまでは個の力で対応できていたケースもありましたが、今後はより持続的な解決方法を模索しながら開発に向き合う必要があると感じています。

亀田:どこまでいっても「開発だけではなく運用まで担う組織」が、我々が目指すゴールであることに変わりはありません。例えチームが自律的でも適切な情報にアクセスできなければ最適な意思決定はできませんし、細かいスパンで開発と運用を繰り返すサイクルを作ることが、最も重要だと考えています。

一人ひとりの個性を発揮できる場所

──求めるエンジニア像のイメージはありますか。

亀田:「思考を止めない人」です。

起きた事象に対して、常に自分の思考を構造化、言語化し、アウトプットできる方にジョインいただければ、組織においても間違いなく良い影響をもたらすと考えています。

自分の未来や目の前の課題に対して、思考を止めない方と一緒に働けると嬉しいですね。

岡野:私は「常に向上心を持っている人」と一緒に働きたいです。

現状に甘えず常に今を超える状態を目指さなければ、プロダクトも組織も必ず停滞します。高い向上心を持ち続けられる人と一緒に働きたいですね。

──最後にエンジニアの方々にメッセージをお願いいたします。

亀田:この記事をFindyで読んでくださっている皆さん、まずはカジュアル面談しましょう(笑)。現時点でタイミーに興味がないのであれば、キャリアの相談でも構いません。

一度カジュアルにお話させてもらえる機会をいただければ、タイミーの魅力についてよりお伝えできると思います。

岡野:タイミーには星の数ほど課題があります。星の数ほどある課題を解決できる環境が整っていることがタイミーの魅力であり、エンジニアとしてこれほど挑戦ができる場所もないと思います。

タイミーはどのような人でも個性を発揮できるような土壌がありますし、ぜひ私たちのカルチャーや価値観に共感いただけた方と一緒に働けると嬉しく思います。