
挑戦できる“今”を逃さないために。──SIerから事業会社への転職
プロフィール
吉田 禎倫
先行企画部 新技術開発室 2G(グループ)
SIerに入社後、グローバルでの金融系のWebシステム開発~運用と生成AIに関する研究開発から、開発やグローバルでの働き方やコミュニケーションを経験し、2025年4月にトヨタコネクティッド入社。
鴇田 博紀
先行企画部 新技術開発室 2G(グループ) マネージャー
大学(理工学部情報工学科)で自然言語処理を活用した質問応答システムを研究後、クラウド基盤やWebサービスの開発〜運用、情報セキュリティなど幅広く経験し、2024年4月にトヨタコネクティッド入社。
トヨタコネクティッド株式会社
トヨタコネクティッドは、「人とクルマと社会をつないで、豊かで心ときめくモビリティ社会を創造する」ことをビジョンに、コネクティッド、MaaS、デジタルマーケティング、ディーラー・インテグレーション事業を展開しています。先行企画部では、新規事業創出に挑戦。中でも新技術開発室はITエンジニア集団として、先端技術で未来を変えることにチャレンジしています。
「責任ある仕事を任せてもらっていましたし、不満もありませんでした。でも、夜遅くまで働く日々が続く中で『このままでいいのか?』と考える瞬間が増えていったんです」
やりがいを感じながらも、心の中で生まれた葛藤。そして外から耳にした「35歳」という言葉が、自分の中で漠然とした区切りになっていった。そんな吉田さんと、入社後に上司となった鴇田さんにお話を伺いました。
この先、挑戦が億劫になる前に踏み出した決断
──吉田さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
吉田:新卒でIT業界に入り、Webアプリケーションの開発を担当しました。その後はSIerに転職し、金融系システムの開発や研究開発に携わりました。特に海外の金融インフラを構築するプロジェクトでは、現地の方に技術を伝えながら国の仕組みを支える仕事ができ、「自分の仕事が社会に役立っている」と強く実感できました。その経験は今でも印象に残っています。
──転職を考え始めたきっかけについて教えてください。
吉田:前職に不満があったわけではありません。責任ある役割を任せてもらっていましたし、やりがいもありました。ただ夜遅くまで働く日々が続く中で、「このままの働き方をずっと続けるのは難しいかもしれない」という不安はありました。10年後も同じように働けるのかと考えると、自信は持てませんでした。
そんなこともあって、漠然とですが『35歳までに腰を据えて働ける場所を見つけたい』と思うようになりました。35歳というのは自分の中でいろんな意味があって、もちろんこの先も同じように働けるのかという不安もありましたが、同時にこれ以上歳を重ねると新しい挑戦が難しくなってしまうのでは、という気持ちもありました。だからこそ”今”しっかり向き合いたいと思い、本格的に転職活動を始めました。
──実際に転職活動を始めてみていかがでしたか?
吉田:前職は出社が基本で残業も多く、仕事と転職活動の両立は本当に大変でした。前職がかなり忙しかったこともあり、職務経歴書などの書類の準備は休日に行っていました。また、面談を受けるには時間を調整しないといけなかったので、夜にオンラインで面談を入れたり、日中の場合は有給を取る必要がありました。なので、たくさんの企業を受けることは難しいと思い、面談を受ける企業を絞って転職活動を進めました。
──そうなんですね、実際に吉田さんが今回の転職活動で大事にしていた軸はありますか?
吉田:大きく3つありました。社会に貢献できる事業であること、自分の経験を活かせること、文化や雰囲気が合うことです。その中でも特に重視していたのは社会貢献でした。先ほどもお伝えしましたが、最初に携わった金融インフラのプロジェクトで「自分の仕事が社会に役立っている」と実感できた経験があり、それが自分にとって大きなやりがいにつながっていました。
また、今回の転職活動では『事業会社に行く』ことも重視していました。前職のSIerには非常に愛着があり、他のSIerに転職するくらいなら現職に留まれば良いと思っていましたので、どうせ転職するなら自らビジネスを営んでいる企業に転職したいと思いました。先ほどもお話ししましたが環境を変えるなら、これまでと同じ延長線上ではなく新しい挑戦に意味を見出したい。自分にとってその挑戦は事業会社だったんだと思います。
カジュアル面談で変わった印象
──トヨタコネクティッド社とのカジュアル面談はいかがでしたか?
吉田:最初にスカウトをいただいたときは、正直「自分にはレベルが高すぎるのでは」と思いました。トヨタの関係会社という名前の大きさもあり、求められるスキルが高いのではと不安だったんです。事業内容も詳しくは知らず、応募する気持ちはあまりありませんでした。
それでも、せっかくの機会だからとカジュアル面談に参加しました。そこで、車両データを活用したユーザー向けのサービスであるコネクティッド事業だけではなく、世界中のコネクティッドカーから集約される車両ビッグデータを活用し社会課題の解決等、幅広く取り組んでいることを知りました。
また、面談では「なぜ自分に声をかけてくれたのか」を具体的に聞くことができました。正直話を聞くまでは、自分がこの会社で活躍・貢献できるイメージを持てていなかったのですが、これまでの経験を評価して声をかけてくれたことが大きな安心材料になりましたし、「ここで挑戦したい」と自然に思えるきっかけとなりました。
──鴇田さんはカジュアル面談を担当されたそうですが、どのような点をみて吉田さんにお声がけしたんでしょうか?
鴇田:私たちの先行企画部はグループにおける新規事業の創出に向けて、様々な開発をしています。なので、「こういうものを作ろう」という正解がない中で開発をしていくような事業部になります。いわば研究開発のような動き方をすることが多く、吉田さんに研究開発の経験を見てお声がけしました。
──ありがとうございます。実際にカジュアル面談での印象はいかがでしたか?
鴇田:とても話しやすい方でしたし、準備をしっかりしてきてくださっていたのが伝わってきました。先ほどもお伝えしましたが、チームの特性上開発のほとんどは機密性が高く、社外に具体的な情報を発信することはできません。そうした中でも、個人に焦点を当てた記事は発信しているのですが、吉田さんはそのnoteなどを事前に読んできてくれていました。その上で質問してくださったのが印象的で、単に情報を確認するだけでなく「自分の経験とどう重ねられるのか」を考えてくれていると感じました。会話も自然に深まりましたし、経歴だけでなく人柄の面でも『この方と一緒に働きたい』と思いました。その印象は入社後も変わっていません。
──その後選考に進まれたと思うのですが、吉田さんの中で選考で印象に残った出来事はありますか?
吉田:選考でも様々な方とお話しさせていただき、最終的にオファーをいただくことができました。ただ、オファーをいただいた後に「本当にスキルが合うのか不安です」と正直に相談しました。新しい環境で自分が役に立てるのか、想定している内容とズレていないかが気になっていたんです。
その時人事の方に追加で面談を設定してもらい、具体的に「どの経験がどう活かせるのか」を一緒に整理してくれました。もちろん一概には言えませんが、相談しても『大丈夫ですよ』と一言で終わるケースもあると思います。ですが、ここでは時間をかけて丁寧に向き合ってくれました。その誠実さが、最終的な決め手になりました。
──鴇田さんはそのお話があった当時を覚えていますか?
鴇田:はい、当時その話を人事宛にもらったのを覚えています。自分の不安をオープンに話してくれるのは簡単なことではありません。それを率直に言葉にして相談してくれたのは、信頼関係を築く上でも大切な姿勢だと思います。オファー後のやりとりから見えた誠実さが、そのまま今の働き方にもつながっていると感じます。
正直、人柄の良さというのはなかなか言語化しづらいのですが、やり取りの中で自然と伝わってくるものがありますよね。このエピソードだけでも、その人柄の良さは十分に伝わると思います(笑)。技術や経験だけでなく、人として信頼できるというのは大きな強みだと思います。
入社後に感じた文化の違いと、これからの挑戦
──実際に入社してみて、ギャップはありましたか?
吉田:一番大きく感じたのは、立場に関係なく協力して取り組む文化です。前職では社員と協力会社で役割がはっきり分かれていて、「ここから先はあなたの領域」という線引きがありました。でもトヨタコネクティッドではその境界が驚くほど低くて、自然と「一緒にやろう」という雰囲気になります。押し付け合うのではなく、お互いが足りないところを補い合う空気があるのはとても心地よいですね。
もう一つ印象的だったのは、大企業でありながら上司との距離が近いことです。役員クラスの方に直接研究内容を報告したりチャットで気軽に相談できるのは、最初は正直戸惑いました。でもやってみると話しやすいし、こちらの声をしっかり聞いてもらえる。今では「安心して挑戦できる環境だ」と強く感じています。大きな組織なのにスタートアップのような柔軟さがあるのは、いい意味でのギャップでした。
──鴇田さんから見て、文化や雰囲気の特徴はどう感じていますか?
鴇田:私も同じ印象を持っています。特に役職や立場を意識せずに意見を言える空気は、大企業の中では珍しいと思います。本部長とも気軽に話せますし、現場のメンバーが経営層と直接やりとりできるのは大きな魅力です。私も転職してきた時は正直驚きました(笑)。
それから、部署を超えて協力する雰囲気も強いですね。新しい領域に取り組むときは、ひとつの部署だけで完結できないことが多いのですが、「それはうちの担当じゃない」と線を引くのではなく、「一緒に考えよう」と巻き込んで進めていくスタイルが根付いています。吉田さんもすぐにその文化に馴染んで、自分から他部署に声をかけて動いてくれているので、とても助かっています。
──ありがとうございます。それでは鴇田さんから今後吉田さんに期待することを教えてください。
鴇田:入社してまだ数ヶ月ですが、すでに新しい領域に積極的に取り組んで成果を出してくれています。先ほどもお伝えしましたが、新規事業創出に向けて取り組むということは正解がわからない中でも進む必要があるので、難しい部分も多いと思います。しかし吉田さんはこちらがお願いしたことをしっかりやり遂げるだけでなく、「自分からどう挑戦するか」という姿勢が見えているのはとても心強いですね。
今後は、もっと自信を持ってテーマを引っ張っていってほしいと思っています。新規事業の現場は正解がないことばかりなので、自分の仮説を立て周囲を巻き込みながら進めていく力が必要になります。吉田さんならそれができると感じていますし、その姿をロールモデルとして示してくれることを期待しています。
──それでは最後に、吉田さんが今後挑戦したいことを教えてください。
吉田:まだ入社して間もないですが、今後は自分でテーマを立てて研究開発を提案し、社会に貢献できる成果につなげていきたいと思っています。与えられたテーマに取り組むだけでなく、自分で課題を設定し解決まで進める力をつけていきたいです。
もちろん不安もあります。新しいテーマを立ち上げるには知識も経験もさらに必要ですし、うまくいかないことも多いと思います。でも、鴇田さんもそうですし会社全体としてそんなチャレンジを推進してくれる環境があるので、色んなことに挑戦できればと思っています。
──吉田さん、鴇田さんありがとうございました。
