【本編】優秀なエンジニアを採用するための母集団形成と媒体運用

近年、大手企業のDX投資の増加やスタートアップの大規模調達の復調も見られ、エンジニア需要はさらに上がっています。そうしたなかで、認知度が高くない企業でのエンジニアの採用・母集団形成は、より難易度が高くなっています。しかし、認知度を上げる施策には時間がかかるため、目下の採用に向けた取り組みとして、何をすべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。

株式会社スリーシェイクでは、リクルーティングチームの立ち上げによりエンジニア採用を本格化し、約2年半で62名のエンジニア採用に成功しています。今回は、エンジニア採用を牽引する代表の吉田さんに、 スリーシェイクで取り組んでいる母集団形成や媒体活用についてお話を伺いました。

登壇者プロフィール

株式会社スリーシェイク 代表取締役社長 吉田拓真さん

2011年株式会社ディー・エヌ・エーに入社後、グループ会社のインフラを担当。AWS日本進出時からのユーザー。2013年にソシャゲスタートアップに参画、システム統括しつつ、ゲームプロデューサー、事業戦略室室長など、ベンチャー創業期の技術・事業・経営を全般的にリード。2015年1月に株式会社スリーシェイクを設立。

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・ハイグレード層の採用にあたり媒体やスカウトで意識していることは?
・スカウトに工数面で注力できない時期はどうしてますか?
・求人票改善の頻度とそのポイントは?

 

──最初に、吉田さんの自己紹介をお願いいたします。

吉田:株式会社スリーシェイク代表取締役の吉田と申します。もともとは新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、インフラエンジニアをしていました。そこから2社を経て、2015年にスリーシェイクを立ち上げ、現在は9期目を迎えています。

スリーシェイクを立ち上げてから、しばらくはずっとエンジニアをしていて、3年ほど前まではSRE業務を行っていました。直近は別の業務をしています。今日は良い機会になればと思いますので、よろしくお願いします。

──まずは、吉田さんからスリーシェイクのエンジニア採用における取り組みについてお話いただき、後ほど参加者の方からの質問にお答えいただければと思います。それでは、よろしくお願いいたします。

吉田:今回は、エンジニア採用に向けた母集団形成と媒体運用にフォーカスして、お話させていただきます。いろいろ苦労してきたこともありますので、弊社の知見を皆さんにお伝えできたらと思っております。

私たちスリーシェイクはテック企業で、創業以来SREを専門として、プロフェッショナルサービスを中心に会社を大きくしてきました。2020年ごろにSaaS事業を立ち上げて、開発エンジニアを複数名募集、2021年ごろからはエージェント事業を始めて、ビジネスサイドの採用も積極的に行ってきました。

2015年に会社を立ち上げた当初は1人でしたが、2016年から2018年までは私が直接スカウトしてエンジニアを採用していました。
2019年〜2020年にかけては、RPOの方々と一緒に活動を進めて、エンジニア採用が1年に15名くらいの規模に拡大しています。

リクルーティングチームを立ち上げ、採用をより拡大

資金調達を行った2021年には採用活動を内製化。リクルーティングチームを立ち上げ、すべて自分たちで戦略を考えて実行するようになりました。ここからエンジニア採用が急激に増加し、1年で25名近くコンスタントに採用していきました。

2022年ごろには、少しずつ我々の知名度も上がってきたので、リファラル採用を開始しました。2023年は9月1日時点までで、エンジニアの採用が約20名。今年はおよそ30名、来年は40名のエンジニア採用を目指したいと考えています。なお、スリーシェイクの離職率は、業界平均以下になっています。

網羅的な募集掲載と、継続的なスカウトで量を確保する

吉田:もう1つ、私たちが意識しているのは、媒体を絞らないこと。なぜかというと、媒体によって時期的な要素があるからです。例えば、「Findy」はリリース当初、母集団にスタートアップの方が多かったですが、今はエンタープライズの方も多くいます。そのように媒体の母集団は日々変わっていくので、特定の媒体に集中せず、しっかり手を広げ続けていくことが大事だと考えています。

また、スカウト送信は基本的に、月曜日と金曜日を避けています。どちらも多くの会社がスカウトを送るタイミングで、スカウトが埋もれてしまうからですね。そのため、私たちは水曜日から木曜日の夕方に送ることを意識するようにしました。

スカウトの数については、データに基づいて計画を立てます。スカウトの返信率から逆算して、週次でスカウト数を担保していく。営業マーケティングと同じ考え方ですね。なので、媒体の量とスカウトの量、この両軸をきっちり確保していくことが大事です。「Findy」の“いいね”も、毎週上限いっぱいまで送っていました。

しかし、3~5年運用していると、立ちはだかるのが母集団の枯渇です。これは非常に深刻なのですが、どの媒体でも起きます。その場合は、スカウトの再送を軸に運用して行くことが大切です。

最後に、カスタムスカウトですね。本などにも、カスタムした文章を送るべきだとよく書いてありますが、私は表面的なカスタム文章は逆効果だと考えています。例えば、Goのエンジニアで、フルスタックで5年経験と書いている人に、「Goのご経験があって、フルスタックの経験が豊富なのでご連絡させていただきました」とメッセージを送っても、エンジニアからすればそのまま書いただけにしか見えません。

なので、絶対に会いたいと思う人には、しっかりとその思いを伝えること。そのためには、その思いを伝えられる人に書いてもらうことが大事ですね。

例えば、ブログを見たと伝える場合も、「自分はこういう経験をしていて、あのブログがすごく役に立ったんです」というところまで書いていれば、やはり返信は来ます。このように思いをしっかりと伝えることがスカウトでは大事だと思います。

採用の流れのなかで、細かく体制を変えながら対応

吉田:続いて、エンジニアリクルーティングの体制についてお話します。求人票作成やターゲット整理、スカウト、面談、オファーやアトラクトという採用の流れのなかで、我々は細かく体制を変えています。

求人票作成

弊社では求人票の作成に、とても力を入れています。採用が必要になったとき、エンジニア事業部長や技術的要件を把握しているリーダーと、HRの採用マネージャー、そして私の3人でディスカッションの機会を設けて、ターゲット整理を行います。難しいターゲットの場合、特にハイグレードのエンジニアは年数だけでは測れない部分があるので、具体的に求める経験についても全員で認識合わせをします。そして、求人票のひな形をつくり、まわし読みしながら内容をすり合わせていきます。期間としては、記事のひな形を1つ作るのに、1週間くらいかけていますね。

スカウト

スカウトは、HRのリクルーティング担当とオペレーション担当・私の3名で行っています。
スカウトに返信があったら、まず最初に対応するのはオペレーション担当。できる限り早くレスポンスし、日程調整などの連絡をしています。

面談

カジュアル面談は、現状エンジニアに関しては私が全部出ています。カジュアル面談で注力しているのは、会社についてしっかりと知っていただくこと。相手の経歴や転職意欲などについての話は、あえてしません。45分のカジュアル面談のうち、会社の説明と私への質問タイムが95%を占めていて、残りの5%くらいで今の状況をフランクに聞く程度にとどめています。

その後、応募したいとご連絡をいただいた場合は、HRの方で一次選考を行います。ここで見ているのは、主にカルチャー的な部分や転職意欲、定着性など。1次選考をクリアした方には、現場のエンジニアとお話いただいて、技術的にマッチングするかを見ていきます。そして、最後に事業部長とお話しいただく、という流れになっています。

オファー/アトラクト

選考後のオファー面談では、基本的に雇用契約書をお見せしながら読み合わせを行います。その場には、HRの採用マネージャーと私が同席して、雇用条件や評価など、細かな質問にも丁寧にお答えしていきます。最後に、必ず私や現場の部長など、なるべくトップレイヤーに近い人が、熱烈なオファーをお伝えして終わるという形にしています。

ここで、各事業部のメンバーからの熱いラブレターを書いてお渡しするようなケースもあると思うのですが、それを気恥ずかしく感じるエンジニアの方もいます。なので、弊社ではしっかり口頭で熱意を伝えることを意識しています。

オファーを出してから入社まで期間が空き、希望される方には、現場エンジニアと話せる機会をつくったり、会社に来て見学していただいたり、社内イベントがあれば参加していただいたりしています。

ただ、我々の場合はアトラクトがあったから採用につながった、というケースはあまり多くありません。それよりも、現場選考のときに技術的な選考をしつつ、ちゃんと会社の魅力をお伝えして、ポジションや期待値をすり合わせることを意識しています。

ジョブディスクリプションに応じて、細かな記事分けを実施

吉田:続いては、母集団形成のポイントとなる、ジョブディスクリプションに応じた求人票の掲載についてです。

求人票は、「開発エンジニア募集」と1つの記事に詰め込むのではなく、なるべく細かく分けて出すことが重要です。そして、フェーズによって求められるジョブディスクリプションは変わっていくので、事業部と話し合いながら更新していくことも必要です。

求人票に盛り込む内容は、まずエンジニアにとっての魅力。
ジョインしたらどのようなメリットを享受できるのかについて、エンジニア視点で書きます。これは、エンジニアでなくとも書くことができます。相手の立場に立って、どんなキャリアが積めるのか、どんな選択肢が生まれるのかを書き、エンジニアの目線でどう思うかを、社内のエンジニアにレビューしてもらうことが大事だと思います。

また、あまり世の中の求人票には書かれていないと感じる内容があります。それは、創業者やプロジェクトリーダー、プロダクトオーナーといった人たちが、いかに熱意を込めて携わっているのかという、熱い想いです。これがないと、どんなに会社の知名度があっても、あまり刺さりません。なので、求人票を作るときは、しっかり生の声をインタビューするといいと思います。

あとは、期待値ですね。そのポジションに会社が求める期待値を書くと、特にハイグレード層の方は、よりイメージしやすくなります。ただ、スタートアップのゼロイチのフェーズでは、そこがあまり具体的にならないケースが多いでしょう。なので、より組織化が進んで、ポジションに対する期待値が細分化されたら、明記していくとハイグレードの方々に届きやすくなると思います。

 

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