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インタビュー

不満はない。でも、このままでいいのか?──安定を抜け出した30代エンジニアのリアルな決断

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株式会社Hacobu

プロフィール

高山 比福

エンジニアリングマネージャー

セキュリティ関連のSaaSベンダーにて、開発チームのマネジメントに従事。2025年3月にHacobuへ入社し、現在はMOVO Vistaの開発チームのエンジニアリングマネージャーを務める。

戸井田 裕貴

執行役員 CTO

株式会社gloopsにて、ソーシャルゲームの新規立ち上げや運用、エンジニアリングマネージャーに従事。その後、2人目のエンジニアとして株式会社Candeeに入社し、ライブコマースを新規立ち上げ。ライブ動画配信インフラ・バックエンド・フロントエンドを1人で担う。2019年1月より株式会社Hacobuに入社、CTOとしてオープンプラットフォーム開発に従事。

新卒から15年間、社員数100名から450名規模へと成長した企業で、副部長としてマネジメントにも従事。会社への不満はなく、安定した環境で働いていた高山さんが、30代半ばで転職を決めたのはなぜか。入社後に直面した壁と、そこからの歩みも含めて、高山さんと株式会社Hacobu CTOの戸井田さんに伺いました。

「不満はなかった」——でも、挑戦をやめたら自分が停滞してしまう気がした

高山:前職は、新卒で入社し15年ほど経過していました。プロダクトも事業も組織も安定していて、本当に働きやすい環境だったので不満はなかったんです。でもどこかで自分自身、“成長できていないな”と。

──実際に転職に動き出すきっかけや出来事はあったんですか?

高山:私の場合は、何か特別なことがあったというよりは、じわじわと気持ちが湧いてきた方ですね。当時、それなりに経験も積んでいたので「今の職場だったら、特に勉強しなくてもあと10年は食べていけるだろうな」という感覚はありました。一方で、このままチャレンジしなかったらエンジニアとして停滞するかもしれないという漠然とした危機感はありました。

あとはシンプルに、今以上にお客様の役に立つとか世の中の役に立つためのものづくりに携わりたいという想いはずっとありました。

──初めてのカジュアル面談がHacobuさんだったんですよね

高山:カジュアル面談は、迎える側として参加したことはあったんですが、人生で初めて受ける側になったので、直前は正直震えてました。

戸井田:そうだったんだ。全然そんな感じはしなかったな

高山:実は、そうだったんですよ(笑)。現職に不満があるわけでもなく、急いで転職したいというよりは外の環境を見てみて良い会社があればと思っていたので、そんなに多くの企業にはお会いしていないんです。カジュアル面談も3社のみ受けました。

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──カジュアル面談後、Hacobuさんだけ選考を希望されたそうですが最初の印象はどうでしたか?

高山:HacobuはFindyのユーザーサクセスの方から紹介されて知りまして、事業内容や会社のバリューを見て、すごく面白そうな会社だなと思いました。特に惹かれたのはバリューの部分でした。前職でも大切にされていた価値観と近しいものを感じましたし、前職の文化はとても好きだったので、まずは話だけでも聞いてみようかなと思いました。

カジュアル面談ではゆーき(戸井田)さんと話をしましたが、「すごく熱い人だな」という印象を受けました。特にHacobuのバリューのひとつである「Respect Others」を感じたんですよね。ゆーきさんが面談の中で1つの図を見せてくれたのですが、お客様が一番上にいて、その下でエンジニアが支え、さらにその下にEM、最下層にCTOがいるという逆三角形の図でした。これを見た時に「あっ、この考え方すごく好きだな」と感じて、面談の中で「ぜひ選考に進みたいです」とお伝えしました。

──なるほど。戸井田さんは、カジュアル面談で高山さんにお会いしてどのような印象を持たれましたか?

戸井田:私の第一印象は「人格者」でしたね。話した内容もですが、言葉の端々に他者へのリスペクトを感じて。正直、技術的に不足している部分もありそうだったんですけど、カジュアル面談が終わって「この人、通過してくれるといいな」と思ったことを覚えています。

──人格者というのは具体的にどういった部分から感じましたか?

戸井田:一番印象に残っているのは、失敗談を赤裸々に語ってくれたことですね。前職時代にプロジェクト運営で失敗した話をしてくれたんですが、過去の失敗経験をしっかり自責で語るのって意外と難しいと思っているんですよ。またその経験を経て、リーダーとしてのメンバーへの向き合い方を学んでいるとも感じましたし、そういう他の人に話しづらい話をオープンにしてくれたというところからも、素直さや人への向き合い方の真摯さを感じましたね。

入社後のギャップと苦悩:「自分の常識が通じない」

──実際ご入社された後の高山さんは、期待された活躍をされていらっしゃいますか?

戸井田:それでいうと、最初の数ヶ月は大変だったよね。

高山:はい、正直うまくいきませんでした。

具体的には、チームメンバーと信頼関係を築く前に、前職と同じようにトップダウンで仕事を進めようとしてしまったんです。それが原因で、チームメンバーから「としさん、ちょっとズレてますよ」と言われてしまって。

そこからは、他のEMやゆーきさんにフォローしてもらいながら軌道修正していったんですが、立て直しには一定時間がかかってしまいました。

戸井田:とし(高山)さんの場合、前職でかなりご経験はされていたと思うんですけど、それでもその会社の中という前提だったので、そこに囚われてしまうという部分はありました。1つの会社でキャリアを積むと言うのはポジティブな部分もあれば、逆に足枷になる部分もあると思っているんですが、今回がまさにその部分だったかなと思います。

ただ、彼がすごいなと思ったのは、チームメンバーに対し「自分が間違っていた」「自分はこういう人間で、こういう背景でこんな話をしてしまった」とちゃんと資料を作って真摯に説明していたんですよ。

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高山:お恥ずかしい話ですが、ネットで調べたりして「なるほど、まずは信頼関係を築く必要があるのか」と。今さらながら勉強してましたね。

前職はどちらかというと、マネージャーが方針を決めてから初めて全員で動き出すというスタイルでした。なので自分がまずは決めなければいけない、という意識が強かったんです。ただHacobuでは、同じバリューに共感した人たちが集まっているので、みんなそれぞれの意見を持ってアイデアや意見を交換するということが行われていました。選考時には「前職と似ている」と感じていたんですが、実際に入社してみると、イメージと異なる点もありました。

戸井田:本当?違った?

高山:文化や価値観にギャップは感じなかったんですけど、カジュアル面談でゆーきさんから「うちは全然整っていないので、一緒に色々と環境を整備してほしい」と言われて。「まあ、ベンチャーだから整ってないのは当然で、なんとかするわ」という気持ちでいたんですけど、実際には想像以上に整理されていましたね。「ゆーきさん、今から何かできることありますか・・・?」て思わず聞いてしまいました(笑)

戸井田:そうだったんだね。自分の観点だと「100年後も、この会社・組織が生き残ってほしい」と思っていて、その基準で考えると”まだまだ整っていない”と感じる。

その人の経験や所属してきた組織によって、価値観や状態を測る”物差し”が変わってくるのは当然だと思うんだけど、としさんが苦戦していたのはそこのチューニングだったかもね。

──リアルなエピソードをありがとうございます。話を少し転職活動に戻したいのですが、高山さんのように1つの会社に長くいらっしゃる方にとっては”転職”というものへの抵抗感や不安をお持ちの方もいらっしゃると思うのですが、その辺はどうだったでしょう?

高山:自分の場合、「もしうまくいかなくても現職に残ればいいや」という割り切りがあったので、そこまで不安はなかったんですが、それでも選考を受ける前は異常に緊張しましたね。

特にHacobuは技術的にも進んだ環境という印象があって、技術の面を質問されたらどうしよう、と不安でした。

──そうなんですね!実際に面接では質問がありましたか?

高山:2次面接で技術的な質問を受けたんですが、自分があまり触れていない領域の内容だったので「すみません、わかりません」と伝えました。その後、技術面に関して課題認識を持っていたことは、入社後にゆーきさんからフィードバックをもらいました。

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ピープルマネジメントを専門とする「ピュアマネージャー」という新しい道

──なるほど。先ほど「1社しか経験がない中で物差しのチューニングが大変だった」という失敗談もありましたが、戸井田さんは採用時にその点を懸念されたりはしなかったんでしょうか?

戸井田:そうですね、これはとしさんご本人にも伝えていなかったんですが、キャッチアップに時間がかかるのではないかという点で迷いはありました。面接プロセスの中でも議論をした上で、最後は自分が「採用する」ことを決めました。

高山:そうだったんですね、初めて聞きました。

戸井田:技術的な面も含めて、それより以前のタイミングであれば採用しない意思決定をしていた可能性の方が高かったかもしれないけど、ちょうどプレイングマネージャーとピュアマネージャーを定義している最中で、そんな時にとしさんに出会いました。

理想のEM像が「スーパープレイヤー兼スーパーマネージャー」みたいになっていて、期待値がバグっているという課題感を持っていました。技術もできて、ピープルマネジメントもできて、ビジネスもわかるみたいな。そんな人いないです。仮にいたとしても、その人が抜けたらすぐに組織が弱くなってしまう且つ後任はいない、組織の中でバランスをみながら適切に分業化し、持続可能な組織を目指す、ということは重要なテーマだと思っています。

あとは、技術は後天的に身につけやすいけど、人格はなかなか難しいという特徴もあると思ってます。としさんが前職で開発マネージャーを何人か育てられていて、すごく貴重な経験だと思いました。

なので今後としさんには、ピュアマネージャーとしてのロールモデルになってほしいと思っています。実現できれば、開発組織にとって大きいことだと思っています。

──なるほど、ありがとうございます!それでは最後に、高山さんが今後実現していきたいことについてお聞かせください

高山:急速にスケールするHacobuのプロダクトやチームにおいて、今まで以上にメンバーが活躍できる環境、選択肢を増やしていくことに向き合っていきたいと思っています。例えばバックエンドからフロントエンドに挑戦したい、という想いを持ったメンバーがいる時に、できる限り実現できるような機会や仕組みを作っていきたいんです。プロダクトの成長はもちろん大切ですが、それ以上に、チーム全体でともに成長していくことを大事にしたいと思っています。

──高山さん、戸井田さん、お話しいただきありがとうございました。