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インタビュー

全国の先生の“声”を直接聞く――現場主義を貫くHandy開発チームのユーザー訪問に同行

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ハンディ株式会社

現在、全国3,000校以上の高校・専門学校で導入されているプロダクトがあります。それが2021年にリリースされた求人票管理システム「Handy進路指導室」です。このプロダクトの開発を手掛けるハンディ株式会社では創業以来、学校現場のリアルな悩みや課題を重視。営業はもちろん開発メンバーも積極的に学校を訪問し、ユーザーから得たフィードバックをプロダクトづくりに活かしてきました。

そこで今回は、ハンディのテックリードによるユーザーインタビューに同行。お邪魔したのは、1900年創立の東京都立墨田工科高等学校。実践的な技術者育成の実績が大手メーカーからも高く評価され、毎年数千件の求人票が届くと言います。そんな同校の進路指導部はどのような課題を感じ、その声をエンジニアはどう捉えるのでしょうか。

プロフィール

加賀江 優幸さん

シニアテックリード

新卒でpixivに入社し、iOS/Androidアプリの開発を担当。リーダーを務めた後、新しい挑戦を求めてスタジアムに転職。新規事業としてスタートした「Handy進路指導室」に開発メンバーとして参画。開発体制が外部委託から内製中心へと切り替わるタイミングで、プロダクトを自分たちの手で進化させていく挑戦に惹かれ、ハンディ株式会社への参画を決意。現在は「Handy進路指導室 就職版」の開発全般を担当している。

小島 宗一郎さん

テックリード

教育系の大学院を卒業後、教育系ベンチャー企業に就職。教室長として中高生向けスクール事業の開発・運営、塾長業務に従事。生徒の学習記録や成績を管理するシステムの効果の高さを実感し、アベリオシステムズに転職。大学向け授業管理システムの開発などに携わる。2024年4月、ハンディに入社。現在は「Handy進路指導室 専門学校版」のテックリードを担当。

柳澤 力也さん

東京都立墨田工科高等学校

建築科 主幹教諭 進路指導部 主任

東京都立墨田工科高等学校教諭。工科高校の現場で、生徒一人ひとりの進路実現を支援しながら、企業や地域との連携を通じたキャリア教育に取り組む。ものづくり教育と実社会をつなぐ実践的な学びを重視し、高校生が自らの可能性を広げられる環境づくりを推進。進学・就職の双方を見据えた進路指導に携わり、生徒に寄り添う伴走型の支援を大切にしている。

学校で体感した“衝撃”が、開発のヒントに

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―― 柳澤先生、まずは墨田工科高校の進路指導部の体制を伺えますか

柳澤:現在、進路指導部は私を含め8人の教員が担当しています。当校には機械科、自動車科、電気科、建築科と4つの学科があり、クラスごとに進路指導を担う専任教員を設けていて、私は進路指導部全体のまとめをしています。また、インターンシップの手続きや企業対応を中心に手掛ける教員もいます。

当校の特徴として挙げられるのが、生徒の約9割が就職希望であること。実際、毎年の就職希望者は100名以上を数えます。さらに企業の求人募集も年々増加しており、昨年度は6,000件を超える求人をいただきました。そのため、求人票の受付や管理は部署全員で一丸となって取り組んでいます。

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加賀江:6,000件以上というのは、かなり大規模だと思いますが「Handy進路指導室」の導入はいつ頃決められたのでしょうか?

柳澤:4年ほど前に導入しました。まずは求人票の管理からスタートし、翌年からは生徒への情報公開にも利用しています。「Handy進路指導室」の導入前は、40年以上同じデータベースソフトを使い続けており、まずデータを手入力して、次にスタンプで求人票や会社案内に通し番号を押し、さらに生徒の閲覧用にファイリングをして…と、大変な労力と時間を要していました。

加えて、就職活動の解禁日となる7月1日は、求人票を直接持参する企業の方もたくさんいらっしゃるので、その対応にも時間を取られます。その結果、本来最も時間をかけるべき、生徒一人ひとりとの関わりが難しくなる…というジレンマに陥っていました。

小島:他の導入校でも、「7月はとにかく時間との戦いだった」というお話はよく聞きます。

柳澤:7月下旬の終業式後には会社見学等が始まりますので、毎年10日前後には生徒が第一希望~第三希望を提出することになっています。生徒たちには事前に前年度の情報などを開示していましたが、最新の求人票がなければ最終的な判断はできません。進路指導部としても7月1日からの5日間ほどはまさに“勝負”という感覚でした。

加賀江:「Handy進路指導室」の導入効果はいかがでしたか?

柳澤:これまで手入力だったのが、スキャナーに通すだけで済むようになり、求人票のファイリングも廃止しました。おかげで作業時間は大幅に短縮されましたし、作業自体が圧倒的に楽になりましたね。

それに以前は廊下に張り出した企業の一覧表に生徒たちが群がり、指差し確認しながら通し番号をメモし、進路指導室でファイルを手動検索するのが7月の風物詩でした。しかし、今はスマートフォンで情報収集するのが基本になり、学校の風景も変わってきましたね。

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小島:私もハンディへの転職直後に学校訪問を行ったのですが、一番印象深かったのが、教育現場に根付く“紙の文化”です。ペーパーレスが進んで久しい時代に、教育現場は自分たちの学生時代とほとんど変わっていない。こうした状況をデジタルで変えていくのは意義深い仕事だと、力が入ったことをよく覚えています。

柳澤:おっしゃるとおり、学校はまだまだ紙を使っていますね。生徒は1人1台タブレットやPCを持つようになりましたが、テストや保護者向けの資料などは紙を使うことが大半です。

加賀江:私も入社1年後にある高校に伺いましたが、実際に大量の求人票を管理されている光景はもちろん、生徒が応募先企業を判断するための期間の短さにも衝撃を受けました。我々が経験してきた、大学生の就職活動とは全く違うんです。こうした物理的な大変さは資料やデータから認識はしていましたが、現場のリアルを目の当たりしなければ得られない示唆が多々あると感じています。

「あの機能に助けられた」――その言葉が何より嬉しい

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―― 柳澤先生は、「Handy進路指導室」の導入後に、ハンディの営業やCSに機能追加や改善要望などを相談されたことはありますか

柳澤:営業担当の方が密にコミュニケーションを取ってくれるので、色々な相談をしてきました。使っていてありがたいのは、そうした要望をもとにすごい勢いでシステムがアップデートされていくことです。

例えば、読み取りの精度。導入当初は文字がつぶれていると上手く読み取れず、応募先の住所の変換ミスが起こってしまい、教員で手分けして校正作業を行っていました。また、求人票には産業分類のための番号なども記載されており、各学校やハローワークはこの数字を就職実績などのデータ集計・分析に用いています。しかし、これも読み取りに難があったので、生徒たちの就職活動が一段落したタイミングで営業の方に相談したところ、翌年にはストレスなく使えるように改善されていました。

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加賀江:実はその機能改善を担当したのは私です。営業担当から話を聞き、まずはOCR(Optical Character Recognition)のモデル変更や裏側で稼働するSaaSの再選定と検証を行いました。

さらに、検知後の後処理に関しても改善を行いました。ユーザーからいただいた誤検知の情報をもとに、用紙の汚れをドットとして認識してしまう、文字間隔を誤ってスペースが入り込んでしまうなど、よくあるパターンを分析して、読み取りのルールをきめ細かく再設定していきました。

こうした取り組みも、「改善してほしい」という漠然とした相談だけでは対処に困りますが、全国から実物のエラーデータをいただけるおかげで、即座に具体的な対策を打つことができます。エンジニアとしては、非常に助かる環境です。

小島:営業からは、「前年度と比較して、ここが読み込めないというお問い合わせが一気に削減しました」と聞いています。こうした反響をリアルタイムにいただけることも、ハンディならではのやりがいだと思います。

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―― 小島さんは、学校訪問や先生方の声が開発に活きた経験はありますか

小島:入社後最初に携わった就職支援版のバーコード読み取り機能の開発は、まさに学校訪問で得た体験がきっかけでした。

先ほど柳澤先生もおっしゃっていた通り、手入力の作業をスキャンに置き換えることで、たしかに大きな負担軽減が図れます。しかし、実際の作業を拝見すると先生が何千枚もの求人票を手に、複合機に張り付きになっていた。そこでハローワークが各求人票に発行するバーコードを活用して、こうした地味な作業を楽にできないかと考えたんです。

加賀江:バーコードスキャンを検討した際、スキャンに用いるデバイスについて議論になりました。最初はスマートフォンのカメラを使えないかと技術検証したのですが、満足いく精度が出ない。より良い方法はないかとディスカッションするなかで、「図書室のハンドスキャナーを活用できないか」というアイデアが出ました。

実は多くの高校では、蔵書管理のためにコンビニのレジで使うようなハンドスキャナーを導入しています。これを転用できれば余計なコストもかからずに解決できると、一気に開発が進みました。

小島:実際、現在では導入校のうち約2,000校でハンドスキャナーによるデータ登録が行われています。これは教育現場に対する解像度が高くなければできないソリューションだと思いますし、現場の先生から感謝の言葉をいただいたときは、大きなやりがいを感じました。

「3年生で手いっぱい」が、今では下級生への情報発信も積極的に

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―― 業務負担の軽減によって進路指導業務に変化はありましたか?

柳澤:以前は3年生の対応で精いっぱいでしたが、現在は下級生の支援もできるようになりました。

具体的には、就職希望者に対しては1年生の終わりに「Handy進路指導室」のIDとパスワードを取得させ、3年生向けの求人情報を閲覧できる体制を構築しました。また、高校生向けのインターンシップや合同説明会に参加する生徒もおりますので、「Handy進路指導室」を活用した企業選定の方法や情報収集のやり方などを指導しています。

求人情報をスマートフォンで手軽に見られるようになったことで、生徒も保護者さんと一緒に情報収集をしたり、電車の中で企業について調べたりと行動の変化も見られるようになりました。以前は数枚の求人票を見比べて検討するのが一般的でしたので、選択肢を増やすことにもつながっていると感じます。

加賀江:そういったお話を聞けるとエンジニア冥利に尽きます。私たちもシステムのアクティビティログの変化から、1、2年生の生徒が求人情報をチェックし、3年生の7月には志望企業を絞って選考に臨むといった、就職活動自体の行動変容が始まっているのではないかと想像していましたが、プロダクトを通して実際に社会変化を起こすことに貢献できているんだと実感できました。

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小島:東京都では未成年保護の観点から、高校生が9月の選考で受けられるのは1人1社のみと定められています。一方で、他県では1社制から複数応募可能へとルール改正が行われるケースも出てきていますが、柳澤先生はこうした動きをどう感じていますか?

柳澤:応募の選択肢が増えることは良いことだと思います。ただし、大学生ならば講義の空き時間などを有効活用して、10社20社と企業研究を行うこともできますが、高校生の場合はそもそも授業が詰まっていますし、学業がおろそかになってしまっては本末転倒です。

さらに言いますと、大学生は自らエントリーを行いますが、高校生の場合は教員が企業に電話連絡をとり、企業見学や面接の日程などを決めるんです。複数応募が可能になれば、当然こうした作業も2倍3倍と増加しますので、現場の手が回らなくなることが想定されます。

小島:高校生の将来の選択肢をより自由化していくという社会的な動きは意義深いと感じますが、一方で先生方の負担増加を考えると、闇雲に改革すればいいわけではないと痛感します。自分が開発したプロダクトを通して、社会変化の最前線に伴走できることは嬉しい反面、だからこそ積極的に現場に足を運び、リアルな状況を把握することが重要だと再認識しました。

―― AIが普及する時代において「現場に足を運んで課題を知るエンジニア」という働き方の価値をどう考えますか

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加賀江:当社では営業やCSとのコミュニケーションも活発で、Slack上で得られる情報をClaudeなどで分析すれば、ユーザーから寄せられる課題を一定把握することは可能です。しかし、当社でキャリアを重ねるなかで、実際に学校に行かなければ見られない光景や空気感があると実感してきました。

ですから、これからの時代はAIの有効活用も、地道に現場訪問を重ねてユーザーインタビューなどを行うことも、両方が大事になってくるのではないでしょうか。

小島:「PMやPdMのように、エンジニアも積極的に前に出ていくべき」という時代において、営業やCSが全国の高校や専門学校と深い関係性を構築し、開発チームが希望すればすぐに同行訪問ができる土壌と文化が育まれていることは、当社の強みだと思います。

高校生の未来を変えるポテンシャルが、ここにはある

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2026年度より企業からの求人票受付をHandyのデジタル受付に一本化。更なる業務効率化に期待が高まる(画像提供:東京都立墨田工科高校)

―― 墨田工科高校では、今年から企業からの求人票提出を「Handy進路指導室」によるデジタル受付に移行されたそうですね

柳澤:はい。デジタルで求人票を提出していただければ、生徒に対して7月1日からリアルタイムに情報公開ができ、教員側の作業負担も削減できます。企業側にはデジタル受付した情報を優先的に公開し、郵送や持参された紙の求人票はその後の対応になるとお伝えしています。

とはいえ、まだまだ紙を用いた工程も少なくありません。例えば当校では、就職試験に臨んだ生徒たちに、面接官の人数や役職、筆記試験の内容や面接の質問項目、面接会場の雰囲気やレイアウトなどを報告書にまとめて提出してもらっています。こうした資料についても「Handy進路指導室」でデジタル管理できないか、今まさに相談しているところです。

加賀江:こちらの機能は絶賛実装中で、スマートフォンから直接入力する方式と、手書きの書類を画像ファイルでアップしてもらい、OCRとAIで文書解析する方式の2通りを導入予定です。

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面接に臨んだ生徒たちが後輩のためにまとめた報告書の一部。デジタル化の余白はまだまだ残されている(画像提供:東京都立墨田工科高校)

―― 機能追加以外にも、今後のハンディに期待することはありますか

柳澤:「Handy進路指導室」については、私は非常に満足しています。一方で、当校を含む工科高校は生徒数の減少傾向が続いており、他県では統廃合も進むなど、看過できない状況にあります。

例えばドイツでは、マイスター制度によって職人の社会的地位が確立されており、若いうちから将来の進路として技術者を選ぶ人も多いと聞きます。しかし日本では、『大学には行ってほしい』と漠然と考えるご家庭が多く、工科高校が進路の選択肢として認識されていないケースも少なくありません。

ただ、実際には高卒新卒人材へのニーズは年々高まっています。卒業生の中には大手メーカーに就職し、大学院卒のエンジニアと肩を並べて活躍している者もいます。企業と学校をつなぐハンディさんには、ぜひこうした実情を広く発信し、工科高校への進学や高校生の就職に対するイメージの刷新にも力を貸していただきたいと思っています。

小島:私も当社で働くようになってから、少子化の進行や「とりあえず進学」といった社会の空気感を、自分事として強く意識するようになりました。こうした状況を変えるのは簡単ではありませんが、生まれてきた子どもたちには、自分にとって実りある人生の選択をしてほしいと本気で思っています。

当社では、高校生の進路選択をより豊かなものにすることをミッションに掲げ、さまざまな挑戦を進めています。先生方の声をヒントに、これからも技術で教育現場の課題と向き合っていきたいと思います。 柳澤先生、本日は貴重なお話をありがとうございました。

柳澤:こちらこそありがとうございました。

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―― 最後に、教育分野に関心があり、次の挑戦を探しているエンジニアやPdMへ、メッセージをお願いします

加賀江:プロダクトの開発を通して、高校の先生や生徒たちはもちろん、その先にいる保護者の方々や社会に対して直接影響を与えられる仕事は極めて稀ですし、教育の現場にはテクノロジーで改善できることがまだまだ無数に存在します。

ここにオーナーシップを持って携わる責任感とやりがいこそが、ハンディで働く一番の醍醐味です。だからこそ実際にプロダクトを扱う生徒、先生、企業の方に常に目を向け、共感できる方と一緒に、新たな機能やプロダクトづくりに挑戦していけたら嬉しいです。

小島:AIの進化によって、エンジニアには技術力だけでなく、“目の前の状況に対して正しく、スピーディに解決策を提示できること”が強く求められるようになってきました。大切なのは、フットワーク軽くユーザーに会いにいけるようなバイタリティや、ユーザーからの感謝の言葉を原動力にできるようなモチベーションです。ぜひハンディで社会に貢献する面白さを実感してください。