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インタビュー

エンジニア主導で次世代のHRテックへ。WHIの頭脳、アドバンスドテクノロジー部門に迫る

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株式会社Works Human Intelligence

終身雇用の終焉、副業・兼業の一般化、働き方改革の浸透――。急速に変化する働き方に対応するため、企業の人事システムも進化が求められています。

そんななか、1996年の誕生以来、大手法人向け統合人事システム「COMPANY」を提供してきたのが株式会社Works Human Intelligence(以下、WHI)です。2023年に新設したアドバンスドテクノロジー部門(以下、AT部門)では、生成AIの活用やプロトタイピングなど、次世代の人事テクノロジーの開発に挑戦しています。

グループで約2000人が在籍する大企業でありながら、スタートアップのような開発スピードと自由度を持つAT部門。エンジニアが企画から開発まで一貫して携わり、新しい価値の創出に挑む現場のリアルについて話を聞きました。

プロフィール

アドバンスドテクノロジー部門 部門長

加藤文章さん

2012年入社後、アプリ開発や新規プロダクトの基盤開発、SREなどを経験したのち「COMPANY」のクラウド化を推進し、2023年より現職。BtoBスタートアップでの副業も。

アドバンスドテクノロジー部門 マネージャー

吉田治史さん

2006年入社。マイナンバー管理サービスや人的資本開示関連サービスなど、複数のSaaS製品の立ち上げと運用SREを経験。現在はタレントマネジメント製品の生成AI機能に従事。

アドバンスドテクノロジー部門 マネージャー

恋塚大さん

2016年に新卒で入社し、給与システムやマイナンバー管理システムなどを担当。スタートアップ企業への転職を経て、WHIに再就職し人的資本関連の新規プロダクトに従事。

スタートアップマインドで挑む技術革新

― はじめにAT部門について教えてください。

加藤:私たちは研究開発部門として、先端技術の研究・開発に取り組んでいます。立ち上げ当初は35人規模でしたが、現在は85人規模まで成長しました。世の中の技術トレンドをリサーチし、生成AIやブロックチェーンといった新技術の研究開発を行い、それを製品に活かしていく。そのためにAI研究やプロトタイピングなど、複数のグループが連携しながらプロジェクトを進めています。

開発プロセスとしては、AT部門で企画を立ち上げ0から1を目指すケースと、別の部門からのニーズを受けてMVP(最小限の機能を持つ製品:Minimum Viable Product)を開発するケースの、2パターンがあります。

特徴的なのは、エンジニアが企画から開発まで一貫して携われること。会社自体は大規模ですが、一部門としてはスタートアップのような運営形態を取り入れています。「COMPANY」に蓄積された膨大かつ豊富な種類のデータを活用して、いかに新しい価値を創造できるかという点が、最大のおもしろみであり、やりがいです。

― AT部門でご活躍されている吉田さんと恋塚さんは、どのような経緯でAT部門に所属されることになったのでしょうか?

吉田:私の場合は、別部門で担当していた「マイナンバー管理サービス」が先進的な取り組みであると評価されて、この製品開発グループごとAT部門に異動になりました。

新規プロダクトを開発していくにあたって、マイクロサービスとして独立したアーキテクチャを持つSaaSを効率的に開発し運用する、そのノウハウを共有することが期待されていました。

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恋塚さん。先端技術に対する探究心や、新規サービス立ち上げへの情熱は、AT部門らしさを体現している

恋塚:私は新卒入社で、吉田さんのもとでシステム開発を経験した後、一度スタートアップ企業へ転職しました。その後、当社に再入社する際にAT部門に配属されました。

転職しても会社がとても好きでしたし、出戻りの自分を歓迎してくれる雰囲気、一緒に働くメンバーや環境に魅力を感じてジョインすることになりました。また「Human Capital Insight」という人的資本開示サービスを0から立ち上げる機会があり、これに強く惹かれたことも再入社した大きな決め手です。

私自身は技術者として0→1のフェーズにこだわりがあり、スタートアップでも0からサービスを世界に広げる挑戦をしていました。一方で、既存製品のノウハウや膨大なデータを活かして、新しい価値を創出する経験を積みたいと思った時に、ここが最適な環境だと感じてジョインを決めました。

技術革新を支えるAWSとの協業

― 研究開発が主な役割とのことですが、新機能の検証はどのように行われているのですか?

加藤:AT部門のプロトタイプチームが主導しており、特に専門的な検証が必要な場合は、AWS社のプロトタイプチームと協力することもあります。

吉田:AWS社には2015年頃から継続的にサポートをいただいています。契約しているサポートプランの充実度もありますが、それ以上に人的な関係性が深いと感じています。技術コンサルの役割を担うソリューションアーキテクトの方々と、日常的に相談できる関係性があり、新機能の開発時には週次で打ち合わせを行うこともあります。

恋塚:技術的な課題への対応も非常に柔軟ですよね。対面での相談時には「次回、その分野のスペシャリストを同席させます」といった形で、必要な専門家との接点を作ってくれます。専門家の知見を直接得られる点は、技術者にとって非常に貴重です。

― 米国でのAWS主催のイベントなど、海外カンファレンスへの参加機会も多いとお聞きしました。

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AWS re:Invent 2024にて。「生成AIを含む最新技術や市場動向など、現地でしか聞けない情報を知り、また世界基準の活気や雰囲気を感じて、とても刺激になりました」と恋塚さん。写真提供:WHI)

加藤:当社では海外カンファレンスへの参加を積極的に支援しています。プロダクト部門の執行役員がこうした機会の重要性を理解し、活動を後押ししてくれています。年間でAWS関連のイベントに12名程度、その他の技術カンファレンスにも10名以上が参加できています。ソフトウェア企業としては非常に手厚い投資だと思います。

恋塚:今年は私もラスベガスで開催される「AWS re:Invent」に参加します。「Human Capital Insight」へのAI活用の可能性など、最新のトレンドをキャッチアップすることが目的です。従来、ダッシュボード系のサービスではAI活用の余地が限られていましたが、最新の技術を取り入れることで新しい価値提供の可能性を探る、非常にありがたい機会だと感じています。

生成AIの活用と技術的チャレンジ

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「UI/UXに強みがあるサイダス社との協業は多くの学びがある」と吉田さん。技術力はもちろん、お人柄でも社内外から信頼を集めている

― 生成AIの活用も進んでいるようですが、それについても教えてください。

吉田:現在、各企業内の人材検索サービス「ビズマッチ」の開発で生成AIの活用を進めています。

これは当社のグループ企業であるサイダス社との共同開発で、フロントエンドとバックエンドの基本部分はサイダス社が、AI関連の部分は当社が担当しています。

このサービスは、大企業のお客さまが社内の人材を効果的に把握・活用できることを目指し、「COMPANY」に蓄積された人材データを生成AIで活用するサービスです。たとえば、情報セキュリティに強い人材を探す際には、関連資格の保有状況や職務経歴、さらには面談メモなどの定性情報まで、さまざまなデータを生成AIで分析します。

― それを実現するための、技術的な課題についてもお聞きしたいです。

吉田:最も工夫したのは、権限管理の仕組みです。

人事情報は機密性が高く、アクセス権限は役職によって異なります。そこで私たちは、情報のアクセスレベルを3段階に分けて管理することにしました。たとえば「人事部門」「上司」「一般社員」向けに、それぞれ参照できる情報の範囲を変えるということです。

これを実現するため、個人の紹介文を3種類作成することにしました。

全データを使用した完全な紹介文、上司権限で見える情報での紹介文、一般社員間で見える情報での紹介文の3種類を用意します。これらをそれぞれベクトル化し、検索時にユーザーの権限に応じた適切な結果を返す仕組みを構築しました。

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加藤:さらに今後は、組織設計支援への展開も考えています。

たとえば、新規プロジェクトのためのチーム編成が必要になった場合、チームに必要な役割は何か、求められるスキルは何か、などを生成AIとの壁打ちで具体化する。

そしてその要件に合った人材を「ビズマッチ」で探す、といった活用方法です。こうして組織設計から人材配置までを一気通貫でサポートすることを目指しています。

豊富なデータを活かした新サービス開発

― 「Human Capital Insight」「ビズマッチ」の他にも、開発中のサービスはあるのでしょうか?

加藤:複数進行中ですが、個人のキャリアをモバイルで管理する、新規サービスの開発には特に力を入れています。

現代では1社でキャリアを完結させることが珍しく、それぞれのビジネスパーソンが自律的にキャリアを考えていく必要があります。そこで、企業で働く従業員の方々が自律したキャリアパスを描き、自分らしい人生設計を行うサポートができるアプリを提供していきたいと考えています。

企業視点での人事課題を解決してきた「COMPANY」に加え、新たに個人のキャリアを支援するサービスを提供することで、企業と従業員の双方からのアプローチにより働く人々に大きなメリットを提供できると考えています。

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WHIが今後あるべき姿を想像し、そのために必要な組織づくりを行ってきた。今後のWHIの期待を背負うAT部門長、加藤さん。

― AT部門で大切にしている、開発プロセスについても教えていただけますか。

加藤:当社の特長は、エンジニアの裁量が大きいことです。プロダクトマネージャーという役職はなく、開発者自身が製品の方向性を決める権限を持っています。

つまり、当社のエンジニアは開発するだけではなく、お客さまの声を集めることや社内のドメインエキスパートとの対話を通じて、開発の優先順位の変更などを提案する裁量があるということです。

恋塚:私が担当している「Human Capital Insight」では、実際にエンジニア主導で優先順位を変更したことがあります。

当初は、国際基準である「ISO30414」への対応を優先する予定でしたが、一部では「それよりも『COMPANY』に蓄積した、豊富で膨大なデータを可視化させる機能がほしい」という声がありました。ヒアリング内容をもとに再検討した結果、開発の優先順位を変更し、お客さまが本当に求めるものをスピーディに実現させることができました。

新しい価値の創造に挑戦するならWHI

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自由度が高く、スピード感が早い。そしてコミュニケーションはカジュアルで、疑問や意見をぶつけ合える、大企業のなかでもスタートアップのような雰囲気がわかる

― 最後にWHIで働く魅力について、それぞれお聞かせください。

吉田:企画からリリース、改善まで、開発に関する権限を持てることが最大の魅力です。

また、働き方の面でも先進的です。私自身7年前に育休を取得しています。今では浸透しつつある育休の文化が、7年前からすでに根付いていたのです。現在、当社の育休取得率は、男性が77%、女性が100%、また復帰率は男女共に100%(※)と、育休取得が当たり前の文化として定着しています。
※数値はすべて2023年末時点

恋塚:私が最も魅力に感じているのは、「社員を大切にする」ということが実践されている点です。公募制度による部門異動の機会提供や、自律的にキャリアを考えて上司に相談するキャリア面談など、従業員のキャリア形成支援制度があるほか、全従業員が投稿できるiBoxという意見箱で、従業員の声を積極的に経営に反映させる仕組みがあります。

一例として、コロナ禍以前から従業員からの要望でリモートワークの検討を始めていたおかげで、緊急事態宣言後はすぐにリモートワーク体制に移行できました。このように、従業員の声が実際の施策として実現される文化が根付いているのは大きな魅力です。

加藤:私は大きく3つあります。

1つが、日本の大手企業で「はたらく人」のうち約3割のデータを「COMPANY」で管理している点です。「COMPANY」に蓄積されている豊富なデータは無限の可能性があり、それを新しい価値創出に活用できる機会は他にないと思います。

2つ目に「柔軟な働き方」です。もちろん自己管理が前提にはありますが、私自身、BtoB系スタートアップで副業もしており、そこでの知見を相互に活かせています。フレックスやリモートワークがあるからこそ、自分で工夫をして多様な働き方を実現することができます。

最後に、大手クラウドベンダーとの関係性です。各社から最新の技術情報が直接得られる環境は、技術者にとって非常に価値があります。時にはアルファ版の機能を試させていただくこともあります。

当社には、こうした新しい技術への挑戦、裁量のある開発環境、充実した技術投資など、エンジニアの成長をサポートする環境が整っています。ぜひ私たちの取り組みに興味を持っていただけた方がいましたら、一度カジュアルな形でお話できるとうれしく思います。