本記事では、2026年2月26日に開催されたオンラインイベント「技術選定を突き詰める Online Conference ――逆境を乗り越える意思決定プロセス」内のセッション「決めない技術選定」の内容をお届けします。
同セッションでは、株式会社ウルフチーフの川島 義隆(@kawasima)さんに、技術選定の場面で誰もが直面する「早く決めすぎて作り直し」と「決められず停滞する」というジレンマに対し、戦略的に決めないという選択肢の実践方法をお話しいただきました。認知的閉鎖欲求という心理学の知見を起点に、ADRや仕様設計の原則をどう仕組みに落とし込むかが語られています。
kawasima:今日の登壇資料はゲームとして作ってきましたので、ゲームプレイ実況をしていく形でお話を進めていきます。
テーマは「決めない技術選定」です。

シナリオ紹介
セッションの前半では、ゲーム内のシナリオが進行しました。ここではシナリオの概要を紹介します。ぜひアーカイブ動画や実際のゲームプレイで詳細をお楽しみください。
あるECサイトの開発現場で、マネタイズ施策をどう実装するかを巡る会話劇です。登場人物は4人。
- 施策を推進したいマーケティング/PdM担当(中島)
- 開発の意思決定を担うテックリード(佐伯)
- 実装を担うエンジニア(石田)
- 設計上の懸念を出すエンジニア(村上)
中島から、マネタイズの仕組みを今週末までに出したいという要求が出される。会員プランをゴールド、シルバー、ブロンズの3つに分け、限定コンテンツとポイント倍率で出し分けたい構成だ。佐伯は既存のStripe契約情報をそのままセッションに持たせて出し分けに使う方針を打ち出す。
ここで村上が異を唱える。プランの種類は今決めなくていい、決めるべきはプランと権限の境界だ、プランの数や名前はマーケティングの都合で変わるはずだ、という指摘だ。しかし佐伯は、今週出せるかどうかが最優先だと押し切り、3プランで実装が始まる。
実装後、ゴールド会員向けのトライアル機能を追加したいという相談が入る。村上は再び、プランはビジネスの都合で変わるが権利の制御はシステムの安定性に関わる、この2つが結びついているのが問題だと整理する。しかし設計を今ひっくり返すのは重すぎると判断され、期限の日時を持たせて分岐条件を足し、例外として吸収する方針で進む。
その後、解約済みユーザーに限定コンテンツが見えるなどの障害が発生する。さらに新規プランやキャンペーン施策が次々重なり、分岐が増えすぎて影響範囲が読めず、テストも爆発する状態に陥る。結果として、施策が来るたびに毎回リリースが綱渡りになり、売上施策がそのままリリース作業になってしまう。プランと権利を混ぜた結果がこれだ、というのがシナリオの結末である。
何が良くなかったのか――認知的閉鎖欲求
ここから先は、シナリオの結末を受けて、登場人物の佐伯と村上が振り返りを行うパート。ゲーム内では2人が論点を投げかけ、kawasimaさんがその論点を解説していく形で進行します。



