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LayerXにおけるAIオンボーディングとAIプロセスマイニング

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株式会社LayerX / 執行役員 AI・LLM事業部長

中村 龍矢

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本記事では、2025年5月28日に開催されたオンラインイベント「AIエージェントのオンボーディング-ヒトとAIの協同を支える”役割設計”とは」内のセッション「AIオンボーディングとAIプロセスマイニング」の内容をお届けします。同セッションでは、株式会社LayerXの中村龍矢(@nrryuya_jp)さんに、AIオンボーディングのコンセプトと取り組みなどについてお話いただきました。ぜひ本編のアーカイブ動画とあわせてご覧ください。


中村:

本日は、AIオンボーディングとAIプロセスマイニングと題して発表します。株式会社LayerXの中村です。私は現在、LayerXでAI LLM事業の責任者をしています。元々はLLMが登場する前の機械学習エンジニアで、その後セキュリティ・プライバシー研究を経て現職に至ります。

LayerXでは、AIオンボーディングを行うためのプラットフォーム「Ai Workforce」という製品を出しています。特定の業務や業界に関わらず、文書処理業務であればAIが幅広く対応する製品です。すでに三菱UFJフィナンシャル・グループ様や三井物産様といった日本を代表するエンタープライズ企業にご利用いただいています。

AIオンボーディングに関しては、社内ではかなり前から話題になっており、昨年11月頃に私がAIオンボーディングに関するnoteを出しましたが、当時はまだあまり馴染みのない概念だったように思います。半年ほど経ち、800人近くの参加登録があるイベントを開催できるまでに至り、非常に感慨深いです。この後、具体的な事例も出てくると思いますが、私のパートではAIオンボーディングの一般的なコンセプトと、弊社での取り組みについてご紹介します。

なぜ今、「AIオンボーディング」なのか

LLMやChatGPTが登場した頃より、私たちは事業化に向け本格的に取り組んできました。あくまで感覚ではありますが、GPT-4やGPT-4oくらいまでのLLMは、軽い幻滅期にあったように思います。

チャットUIや翻訳といったケース以外では、正直なところ従来のRPAやOCRの延長のようなケースが中心でした。非構造的なデータを扱えるのは大きなメリットでしたが、その後もできることは比較的単純なルールに基づく業務に留まっていたように思います。そのため、私たちはそれを「知的単純作業」と呼んでいました。非構造的なデータを人間が読んで解釈するという知的作業ではあるものの、反復的で単純な業務がメインのケースだと考えていたのです。

技術とエコシステムが発展し、AI、つまり人工知能に皆が期待するようなことが本当に実現できるという可能性が見えてきました。1つ目は、基盤モデルの進化です。o1を始めとする推論系のモデルや、そういったモデルを軸にファインチューニングをしながら、ユースケース特化で単純なルール以上の難しいことができるようになったことです。もう1つは、AIが自律的に活動できるようになるための周囲のエコシステムの発展が進んできたことです。

こうした背景から、AIを丁寧に扱えば理論上非常に大きな成果を出せるのではないかと考えるようになりました。ここでいう「AIをちゃんと丁寧に扱う」という点が次のテーマであり、それがまさにAIオンボーディングだと考えています。

人間もAIも「知能」という意味では同じです。人間の新入社員に対しては非常に丁寧にオンボーディングをすると思います。新入社員研修があり、様々な人との1on1、業務ドキュメントの提供などの経験を経て初めて、その新入社員は会社のエースへと成長していきます。しかし、現状多くのLLMのユースケースでは簡単なプロンプトを渡されているだけで、人間に比べて提供される情報量も試行錯誤の機会も少ない中で仕事をさせられています。そのため、現状のAIが人間ほどのパフォーマンスを出せないのは、むしろ当たり前だと考えています。

このような状況を踏まえ、AIオンボーディングの基本的なコンセプトは、人間と同じように丁寧にAIをオンボーディングするということです。現状、オンボーディングする手間は、人間とあまり変わらないか、もっと大きいかもしれませんが、一度オンボーディングしてしまえばAIは24時間365日ずっと働けるという大きなメリットがあります。なので、きちんとコストをかけてAIオンボーディングをしていきましょう。実際Ai Workforceのコンセプトも、1年半から2年くらい前は知的単純作業というものでしたが、今はAIオンボーディングをしっかりと行い、よりエージェンティックな体験を作る方向へとシフトしています。

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