はじめまして、RIóN(@rio_devops)と申します。
普段はサーバサイドTypeScriptに軸足を置きつ美容領域を核として分野問わず様々な領域でのサービス開発を行い、Honoでの開発を経験してきました。
今日は、自分のプロジェクトを含め三つの案件でHonoを導入した事例をもとに、「なぜ私がHonoを推すのか?」についてお話させていただきます。
これまで、ExpressやNestJS、Fastify、Next.jsのAPIルートやServer Actionsなどを一通り経験しましたが、私としてはHonoが第一候補として選ばれるべきフレームワークだと感じています。そこで今回は、なぜ私がHonoを推すのか、その理由をしっかり深掘りしながらご紹介することで、皆さんが今後Honoを選定する際に納得感を持って導入できるような情報をお届けしたいと思っています。
Honoは零細なプロジェクトからスタートアップ、大企業まで幅広く対応できる技術だと私は考えています。今回のテーマは「Honoはなぜ使うべきなのか?」ですが、NestJSやExpress.js、Fastify、tRPCなど多様な選択肢がある中で、実際に複数のプロダクトでHonoを使った経験から得た知見を皆さんと共有していきます。
Honoの特徴:高速性・マルチランタイム・バッテリーインクルード
Honoの基本的な特性
Honoには4つの特徴があると公式ドキュメントで説明されており、その1つ目が「Fast and Lightweight」です。
ウェブ標準に従って作られているため、バンドルサイズが極めて小さく、高速だというベンチマークも示されています。さらに、DenoやNode、Bun、Cloudflareなど、インフラのデプロイ先を考えずに、さまざまな環境に対応できる「Multi-runtime」という点も非常に強みだと思います。
また「Batteries Included」という名のとおり、必要な機能がひと通り揃っており、Delightful DXを提供してくれるフレームワークだと言えます。
新世代のフレームワークとしてのHono
私なりの一言でまとめると、HonoはサーバーサイドTypeScriptの開発で頻繁に直面する課題を一手に解決してくれる、新世代のフレームワークだと思っています。
ルーティングや型補完、型共有、バリデーション、そしてOpen APIの自動生成までしっかりサポートされているため、大変だったOpen APIを手動で書く作業などをまとめて省力化できます。バリデーションが機能して堅牢なアプリを作りやすい上に、型共有がスムーズなのでフロントエンド開発との連携もスピーディーです。
軽量かつ高速で最適
「機能が充実していると重いのではないか」と心配になるかもしれませんが、Honoはウェブ標準に準拠しているぶんバンドルサイズが小さく、実行時のパフォーマンスも非常に高いです。通信やレスポンスの速度は、多くのユーザーを抱えるサービスや検索最適化(SEO)の観点でも重要です。そうした点を踏まえても、Honoは必要な要素がバランスよくまとまったフレームワークだと思います。
サーバーサイドTS開発のボトルネックとHonoの強み
サーバーサイドTypeScriptで開発を進めるうえでは、どうしてもいくつかの課題が生じます。さらに、納期が厳守されるクライアントワークなどでは、スピーディーかつ安定したリリースを求められます。ここでは、まずサーバーサイドTS開発に共通する課題を整理し、その後Honoがどう解決策を提供してくれるかを見ていきましょう。
サーバーサイドTS開発の課題
二重管理による保守コスト
フロントエンドとバックエンドで同じ型を使いたいのに、片方で型定義を更新するともう一方がずれてしまうことがあります。結果的に二重管理となり、保守コストが増大してしまうのは大きな悩みです。堅牢性と拡張性への要求
アプリのニーズが高まり続ける中で、バリデーションをしっかり行って堅牢なアプリを作りたいという要望や、将来的に保守・拡張しやすい設計を求めるニーズが増加しています。学習コストと実装スピード
TypeScriptに慣れていないエンジニアが多いと、学習コストが高く、実装が遅れがちになるリスクがあります。特にフロントとバックをシームレスに連携させるとなると、さらなる工夫が必要です。
インフラ環境を選ばないHonoの利点
サーバーサイドTSのフレームワークはNode環境が前提のものが多く、デプロイ先が限られるケースがあります。ですがHonoは、アダプター(Adaptor)によって差分を吸収しているので、DenoやBun、Cloudflare Workersなどさまざまなランタイムに対応可能です。
これにより、インフラを自由に選定できるので、コストや運用面での最適化がしやすいのが非常に魅力的です。
チーム開発で求められるスピードと安定性
特に納期が決まっているクライアントワークでは、フロントとバックの連携がスムーズでないと、型のずれやスキーマの不整合などの差分調整に時間を奪われ、作業が遅れがちです。
Honoは、標準的に型共有やバリデーションを備えているため、フロントとバックのやり取りをシームレスにし、差分による不具合を減らしてリリースまでのスピードを後押ししてくれます。こうした安定性と効率性こそが、チーム全体の生産性を高める大きな要因になるのです。
サーバーサイドFW選定の勘所
サーバーサイドのフレームワークを選ぶときは、プロダクト全体を見渡して、フロント・バック・インフラの各視点から最適化を図る必要があります。
たとえばフロント側に大きな負担をかけると、いくらサーバーサイドが効率的でも全体の生産性が落ちますし、インフラ側で複雑な設定や保守が必要になるのも避けたいところです。
また、できるだけ軽量で高速に動くフレームワークが望ましいのは当然で、SEOやUXの観点でも速度は重視されます。加えて、壊れにくく堅牢な設計ができるものを選べば、長期的な保守効率も高まるでしょう。
一方で「そもそもフレームワークは本当に必要なのか?」という観点も重要です。CLIのようにAPIを返す必要がないケースなら、生のサーバーサイドTypeScriptコードで十分という場合もあります。
逆に、多くのサーバーサイドTSプロジェクトは「リクエストを受け取り、レスポンスを返す」というAPIサーバーの役割を担っており、この要件を満たす要は“Router”です。
Express、NestJS、Hasura、Next.js、Honoといった主要なフレームワークは、いずれもRouter機能を備えています。プロジェクトごとに必要なライブラリ──たとえばキュー、キャッシュ、認証──を追加しながら、柔軟かつ効率的にAPIを作れるかどうかが勝負になります。
Honoの利点
サイズ・速度
Honoは最小構成で14KBほどと非常に軽量で、Cloudflare Workersのベンチマークでもトップクラスの高速性を示しているとのことです。必要なミドルウェアやアダプターも、使った分だけバンドルすればいいので、オーバーヘッドが抑えられます。
ルーター機能の充実
APIサーバーの核となるRouterは、Honoが特に力を入れている部分です。
正規表現ベースやスマートルーティングなど、多彩な5種類のルーター(RegExp Router, Trie Router, Smart Router, Linear Router, Pattern Router)が標準で用意されており、さまざまなパターンに対応しやすいのが特長です。シンプルなパス指定はもちろん、複雑なルーティングもカバーできるので、開発が一層スムーズになります。
堅牢性とバリデーション
近年のアプリ開発では、バグを素早く直せないとクライアントからの信頼を失う可能性が高まります。Honoはバリデーション機能とエラーハンドリングがしっかりしており、Zodとの互換性が高いため、不正なパラメータを弾いて予期せぬエラーを回避しやすい構造になっています。
型共有と開発効率
Honoではスキーマを定義し、それをそのままバックエンドとフロントエンドで利用できるので、型を二重管理する必要がありません。
さらにサードパーティ機能ですが、Zod Open APIなどと組み合わせることで、スキーマから自動的にOpen APIを生成でき、ドキュメント作成の手間を大きく減らせます。手動で記述していた部分が自動化されることで、開発スピードと正確性が同時に向上するのは大きな利点です。
Hono導入の総評と適用範囲
結論として、サーバーサイドTypeScriptのフレームワークを探しているなら、Honoは第一候補と言ってもよいでしょう。
サイズや速度、堅牢性、型共有、開発効率など、主要な要件をひと通り満たしているからです。新規プロジェクトであれば初期段階から採用しやすいですし、既存プロダクトでも一部コンポーネントから段階的に組み込んで試すことも十分可能です。
また、OpenAPIだけをBFF(Backend for Frontend)に導入し、各クライアントに型を簡単に提供できるのも魅力の一つ。こうした使い方を検討するだけでも、既存のサーバーサイドTS開発が大きく楽になるはずです。ぜひHonoでつらい部分を解消し、快適な開発ライフを実現してみてください。
Honoの採用イメージ
最後に、実際の採用イメージをいくつかご紹介します。
まずToB向けの多機能SaaS開発では、高速な開発サイクルとフロント・バックの一体感が重要です。ロジックが複雑になりがちなので、バリデーションをしっかり組み込まないといけませんが、Honoは堅牢さとフロント・バック間のスムーズな連携が強みとなります。
次に大企業向けのインフラ系企業向けAPI開発ですね。
インフラ系企業はとにかく堅牢性を重視する傾向があります。しかも大企業の案件は納期が厳密に決まっていることが多いので、効率の良い開発が求められます。そこでHonoのOpenAPI自動生成を使えば、仕様書を自動でフロントに反映させつつ、バックエンドの実装スピードも加速できるわけです。
最後に私自身の事例として、獣医師のカウンセリングサービスを作っています。
ユーザーからの相談内容を誤って受け付けると混乱を招くため、パラメータや入力値を厳密にバリデーションする必要があるのです。Honoのきめ細やかなバリデーションはまさに理想的で、個人情報を扱う際のセキュアな実装にも向いています。加えて、通信速度や検索最適化の面でも高速にレスポンスを返せるので、非常に助かっています。[1]
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本記事は、2025年2月18日(火)に開催されたイベントの内容を元に編集したものです。
発表のアーカイブ動画については、以下のリンクからご覧いただけます。
アーカイブURL: https://findy-code.io/events/RLvdvYtU273Cs ↩