Findyスキル偏差値や発信力レベルの上位者に、日々のアウトプットで得られた経験や継続のコツを尋ねる連載企画。今回のゲストは、スキル偏差値「Go 72.4」「Rust 70.9」「TypeScript 70.4」、発信力「レベル10」のゴリラさんです! GitHubでの自作ツール公開やZennでの技術記事執筆のほか、Vimのコミュニティ活動も精力的にこなすゴリラさんへ、始めたきっかけや継続のコツを聞きました。
自分がほしいものは、誰かのほしいものだった
― 多岐にわたる活動をされていますが、アウトプット活動を始めた当時のことを教えてください。
ゴリラ: 2018年に自作したDocker向けのTUIクライアント「docui」を、GitHubに公開したことが始まりです。当時の僕はOSSについてあまり理解していませんでしたが、約2kものStarがつくほどの反響があって驚きました。この影響で「Docker Meetup Tokyo」から声がかかり、初めてのイベント登壇を経験しました。
またちょうど同じ頃、Vimにもはまっていて、他の人にも使い方を聞いてみたいと思ったのですが、適切なオフラインイベントがなかったので、自ら「ゴリラ.vim」というコミュニティを立ち上げ、月1回ペースでイベントや発信を続けていました。こうした活動をご覧いただいたのか、さくらインターネット社が運営するウェブメディア「さくらのナレッジ」から声をかけていただき、「Vimはいいぞ!ゴリラと学ぶVim講座」という連載記事を執筆することになりました。

「Vimはいいぞ!ゴリラと学ぶVim講座」(出典:「さくらのナレッジ」)
― 「docui」が始まりだったのですね! 多くの人の関心を集めたのは、なぜだったと思いますか?
ゴリラ:正直、運がよかったんだと思います。これは僕自身がDockerの操作を楽にしたくてつくったので、同じ気持ちを抱いていた人が多かったのかもしれません。その後、Kubernetesで同様の操作ができる「K9s」が発表されましたが、そちらはStarが約3万もつくほど爆発的な人気でしたから、TUIはそれくらい需要が高いと思います。
それからGitHubに公開するのと同時にRedditにも投稿したのですが、それも広まるきっかけになったと思います。GitHubのトレンドにも掲載されて、一気にStarが伸びた感じでした。
― 初めてのOSS公開とのことですが、自作ツールを公開することに抵抗はなかったのですか?
ゴリラ:抵抗はなかったです。むしろ「誰かの役に立てるとうれしい」という原体験があるので、僕にとってはとても自然なことでした。自分が不便だと思うことを見つけて、それを解消するツールをつくる。それをGitHubで公開したり、RedditやZennで紹介する記事を書く。そしてチャンスがあったらイベントで登壇する—。というように、僕にとっては、つくることと広めることは一連の流れでやっています。

― 「誰かの役に立てるとうれしい」と感じた原体験についてお伺いできますか?
ゴリラ:当時の僕はPCのキッティングや銀行ATMの清掃など、全くプログラミングに関係のない仕事をしていたのですが、とある業務を自動化するツールをつくったところ、「もう、業務自動化を専門でやってほしい!」と言われるほど、とても喜ばれたんです。自分がつくったもので役に立てたことが本当にうれしくて、プログラマーを目指そうと思いました。
― プログラミング未経験からの転職だったんですね!転職活動は大変じゃなかったですか?
ゴリラ:転職活動には、ちょっとおもしろいエピソードがあるんですよ。
「よし、プログラマーになろう」と心に決めたまさにその日、仕事で関わりのあった方から「駅まで一緒に帰りませんか?」と声をかけられたんです。普段は軽く雑談する程度の仲だったので、「珍しいな」と思いながら一緒に帰ったところ、駅で突然「転職に興味はありませんか?」と聞かれました。まるでタイミングを見計らっていたかのようですよね! このご縁で、僕はエンジニアの道に進むことになりました。
― すごい運命的なエピソードですね!
ゴリラ:そうですね。振り返ってみると、僕の人生ではこうした運命的な出来事が、必要なタイミングで、まるで用意されたかのように起こってきた気がしています。
「docui」を開発したのも、ちょうど仕事の目的を見失って休職していた時期でした。SESのエンジニアとしてキャリアを積み、マネージャーや役員も経験しましたが、ふと、何のために働いているのかわからなくなってしまったんです。
そんな時に、自分がつくったOSSが誰かに使われるということを経験して、「ああ、自分は誰かの役に立てることが、一番のモチベーションなんだ」と思い出すことができたんです。
知名度が上がり、Xで仕事のオファーがくるように
― アウトプット活動が仕事に活きていると実感することはありますか?
ゴリラ:一番の変化は、知名度が上がったことで、Xを経由して仕事のオファーを直接いただくようになったことです。
案件の切れ目のタイミングで「次の仕事を探しています」という旨のポストをしたところ、複数社からDMをもらい、そのうちの某大手企業と契約することになりました。その案件は、グローバルで使われる大規模な社内システムで、協力会社を含め最大でおよそ300名規模のプロジェクトです。それが僕にとって、初めてテックリードになったプロジェクトでした。

― 営業スタイル自体が変わったんですね。技術的なスキルアップに関してはいかがですか?
ゴリラ:もちろん活きていると思います。意外に思われるかもしれませんが、僕自身はプログラミングがあまり得意だと思っていません。つくりたいものを実現するためには、自分が持っている知見だけではいつも足りないんです。
なので、その都度、未経験の領域に手を出し、四苦八苦しながら乗り越えています。自分のコンフォートゾーンを超える機会の多さが、技術的なスキルアップになっていると感じます。
― 意外ですね。ゴリラさんの記事を見ていると、技術のコアに興味がある人なのかと思っていました。
ゴリラ:それはそうですが、より正確には、物事の仕組みを知るのが好きなんです。プログラムがどのように動いているのか、USBメモリはなぜデータの読み書きができるのかなど、気になると自作して確かめたり深掘りしたくなってしまうんです。
こうして技術的な仕組みを理解することで、パフォーマンス改善の際にボトルネックの見当がつきやすかったり、アルゴリズムを理解することで、他の言語に応用できたりもしています。
ただいずれも自分の興味が赴くままにやっていることなので、自作して公開すれば満足して、明日には興味の対象が変わるなんてことは日常茶飯事です。だから僕のOSSでは、メンテナンスが止まっているものもたくさんありますよ。
これからはもっと広く社会貢献がしたい!

― 今現在、注力していることを教えてください。
ゴリラ:最近は「VimConf 2025 Small」の成功に向けて鋭意準備中です。コアスタッフとしてCfPやLTの審査をしたり、スポンサーとやり取りをしたりと、普段の仕事では経験できないスタッフ業をしています。今回は裏テーマとして『Vimで飯を食う』を掲げてたので、ノベルティにはシャレを効かせてお箸とお椀を用意しました!(笑)
また、これはまだ模索中ですが、今の仕事や活動を活かしつつ、もっと社会貢献につながる何かをしたいと考えるようになりました。そのためにも、会社を大きくしたいという思いがあります。
― 人材募集中なんですね。会社の現在や、今後の方針についても聞かせてください。
ゴリラ:はい、株式会社テックリードは2022年設立で、主にSESでお客さまへの技術支援を行っています。テックリードという社名には、僕が抱くテックリード像である「仕事力・技術力・人間力」の3つの能力を発揮してお客さまの理想を実現する、そんな組織でありたいという思いを込めました。これから自社事業に投資するためにも、大きな仕事を受注し、社員を増やし、資本を増やし、組織を大きくしていく、そんなフェーズに来ていると考えています。
― 社会課題に関心を持ったとのことですが、どうしてそのような思いになってきたのですか?
ゴリラ:ありがたいことに仕事や私生活に余裕が出てきて、ふと世の中に目を向けたとき、少子高齢化や社会保障といった日本国内の課題を考えるようになりました。自分なりに調べていくうちに、自分って本当に社会のことを何も知らないんだなと気づいたんです。
繰り返しになりますが、僕の原動力は、誰かの役に立つことです。これまでやってきた技術を活かして、もっと社会全般に還元する活動がしたいと考えるようになりました。まだ何も決まっていないのですが、誰かの笑顔を身近に感じられるような事業やプロダクトをつくっていきたいと考えています。
きっと、これが僕のキャリアにおける第3のターニングポイントになると思います。僕の興味関心と近しい人と一緒につくっていきたいので、興味ある人はお声がけください。まずはカジュアルにお話ししましょう。
小さく始めて。背伸びしすぎず、気負いすぎず
― 最後に、この記事を読んでいる方の中には、アウトプット活動にハードルを感じている人もいると思います。なにかアドバイスはありますか?
ゴリラ:小さく始めるのがいいと思います。学習の日記をXで投稿するとか、自作ツールに関する短いブログを書くとかから始めて、慣れてきたらZennやQiitaなど多くの人が見るプラットフォームに投稿したり、ツールをGitHubに公開してみるなど、できそうなところから始めるのがいいと思います。
少し背伸びしてもいいですが、無理することではありません。自分のペースで、できそうなことを始めてみる。それくらいがちょうどいいと思います。
― ゴリラさん、ありがとうございました!

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