はじめまして、Ubieでエンジニアリングマネージャーをしている大久保(@syu_cream)といいます。今日は「Ubieが目指す、AI時代に進化するエンジニア組織のかたち」というテーマで書いていこうと思います。
皆さんも感じているように、生成AIの台頭によって開発スタイルが激変しています。一昔前は「ググってスタックオーバーフローに情報が溜まってるから、それを見に行く」というのが当たり前でしたが、最近は「ChatGPTに聞く」「検索エンジンを切り替える」といった動きが起こっています。さらに、GitHub Copilotでコード補完をすることも定番になってきています。
そこから、AIエージェント(CursorやDevin、その他類似ツール)が登場し、開発スタイルにさらなる変化をもたらしている印象を持っています。特にここ数カ月の変化は激しく、MCPのようなツール拡張の仕様が出てきいます。
なぜAIツール導入にUbieは早期に取り組めたのか?
Ubieとしては「環境の変化に早期に適応したい」という思いが強く、Devinを2024年末頃に試験導入して今も活用しています。さらに2025年の1月半ばにエンジニア40名超を対象にCursorを導入しています。
その結果、2025年3月時点では9割程のメンバーが「開発リードタイムが早くなった」と感じていました。
リソースが限られているなかで成果を出すために...
では「なぜUbieは早期に生成AIの開発エージェントを導入できたのか?」ですが、一言でいえば「成果への飢餓感」があったと思います。
Ubieは3つの事業があり、ステークホルダーもそれぞれ別の方向を見ていますが、サービスはクロスする部分も多くあります。そのようなコンパウンドスタートアップのような状態なので、やりたいことがたくさんある一方で、人数がそこまで多い会社ではないため、どうしてもリソースが限られてしまいます。
そういった限られたリソースのなかで、様々あるissueを早く解決したい、という成果への飢餓感がありました。
また、医療のドメインで戦っているからこそ、変革によって「救われる命」や「変わる人生」があるのなら、一日でも早くやりたい。社会貢献の思いが強かったということもありました。開発スタイルを変革してでも生産性を底上げしたいと考えていました。
AIエージェントの可能性
Devinを導入した2024年には既にCopilotのようなコード補完ツールは出ていましたが、Copilotは人間の能力を拡張してくれる良いツールである一方で、エンジニアが横で常に伴走する必要がある点で「もう一歩」という印象でした。
ただ、AIエージェントは「自分が仕事をしていない時間にも勝手に仕事を進めてくれるかもしれない」というテクノロジーで、大きい伸びしろがあると感じました。
「夢物語だよ」と言われそうですが、モデルや周辺技術が進化すれば、そんなに遠くないうちに実現しそうと考え、今から取り組んでおけばその未来も近づけられるのではないかという期待があり導入しています。
CursorとDevinの選定理由
現在はCursorとDevinを活用していますが、もっとツールが出てきたら乗り換えていくつもりです。
Cursorを導入している理由は「いろいろな機能があって、複雑なプロジェクトにも柔軟に対応できる」というところですね。例えば、コンテキストを結構細かく渡せるとか、リソースを使い切ったときの処理形態がスローリクエストにはなるがエージェント実行できるとか。導入初期は試行錯誤が多いので、そういった部分がマッチしていました。
Devinについては「自走力の高いAIエージェント」という理由が大きいです。業務委託のエンジニアに頼むような感覚で依頼できます。さらに現在では、エンジニアだけでなくビジネスサイドやデザイナー、現場のオペレーション担当なども開発にも参入し始めています。
AI時代に目指していくエンジニア像と開発組織
そういった状況のなかで、Ubieが今後目指していくエンジニア像や開発組織についても触れていきたいと思います。
目指していくエンジニア像
今の激変する時代の「これからの開発組織のメンバー像」としては、エンジニアに限らず変化に適応できる人・組織をつくることが大切だと思っています。Ubieで掲げる人材要件では、メタ的に変化に適応できることや、単なる作業員でなく高い視座で成果を出せることを理想としています。
AIエージェントを活用するにも、エンジニアだけでは難しいところが出てきます。その中でエンジニアとして望ましい姿としては
- テックリードタイプ:技術・ドメイン・人のバランスを見れる人
- アーキテクトタイプ:技術に超絶尖って誰も知らない未来を引き当てる人
- 高速ループ人材タイプ:少数精鋭で新規 0->1 プロダクト開発を力強く牽引する人
など、3つくらいのタイプに分かれ、それぞれの強みを活かしてくような形になると思います。
逆に、従来型の作業員状態に留まってしまうと厳しくなってしまうのではないか、というのが正直なところです。
生成AIと向き合うマインドも
生成AIを使っていく上で、スキルを育てていくのはもちろん、そのためのマインドをもっておくことも重要だと考えています。
生成AIを使ってみれば分かるとおり、ときどき微妙なコードや動かないコードが出てきます。そこで、人間がレビューしたときに「汚いコード」「静的解析できてない」「テスト少ない」といった問題が多発することがあります。
そういった状況に直面したとき「AIはまだ使えないね」で終わるのはもったいないです。そこで終わらせるのではなく、今後より利便性が高まっていくことを前提に、そこにちゃんと投資して、生成AIが出した問題にどう対処するのか、どう共存できるのかを考え対処し、自分で未来を先取りする姿勢が必要なのではないかと思っています。
開発プロセス全体を見据えたツールの最適化
CursorやDevinはコーディング支援には役立ちますが、実際の現場開発はコーディングだけでは終わらない。プランニングや受け入れテスト、リリース後の振り返りなど、脈々とつながるプロセスがあり、AIがカバーしきれない領域も大きいです。
こういった部分がボトルネックになる場合も多いので、PdMやPO、QAエンジニアと協力しながら全体最適を図っていく必要があります。エンジニアだけの力では切り開けないところを、チーム全体で変えていきたい。それがUbieが目指す「開発組織とメンバーの姿」です。
これからのエンジニアキャリアと若手エンジニアの可能性
Ubieとして目指していく姿をお伝えしましたが、より汎用的に最後に今後より求められるであろうエンジニアのキャリアについてもお話しさせていただければと思います。
技術を軸に多方面で価値創出していく姿勢
Ubieとしてはこれまで、技術を軸に戦ってきて、そこには強みがあると考えてきました。このような状況のなかだと、ただ技術一本だとバリューを出しにくい面も出てきています。
技術を深掘りするにしても「こんなものを見つけました」と皆に共有していくとか、多方面で価値を生む力が必要になってきています。
何より、先ほど触れた「斜に構えず生成AIと向き合うマインド」と近しいですが、これだけ劇的に変化する時代を乗りこなせる姿勢が大事だと思っています。
若手エンジニアの柔軟性とAI時代
多方面での価値創出が求められる時代において「若手エンジニアどうしたらいいんだろうか?」という疑問を持つ若手エンジニアの方もいらっしゃるかと思います。
正直、私でもわからない部分ではありますが、シニアエンジニアも同じく模索していると思います。Devinなどを見ていると「若手エンジニアをAIが代替するかも」みたいな話も出てきています。
ただ逆に、変化に柔軟に対応できるという意味では、若手エンジニアのほうが有利にもなると感じています。
今後、どういうキャリアにしろ「やっていくぞ」「自分でコントロールしていく」というスタンスがあれば道はあるんじゃないかなと思います。AIを使いこなして高速に成長して「もうシニア級の生産性です」といったような、今の基準からすると突拍子もないことも起こるのではないかと思います。
Ubieでは「生成AI時代にイニシアチブを取れるエンジニア」を歓迎しています。興味のある方はぜひカジュアル面談にお越しください。[1]
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本記事は、2025年3月27日に開催されたイベントの内容を元に編集した記事です ↩