2026年2月12日に開催されたオンラインイベント「システムエンジニアのネクストキャリア戦略会議~『手を動かし続けるSE』のキャリア設計図」。
シンプレクス株式会社の前田貴史氏、フューチャーアーキテクト株式会社の澁川よしき氏、株式会社豆蔵の桐原健太氏の3名が登壇し、「年次が上がっても、手を動かし続けたい」と考えるシステムエンジニア(SE)のキャリア設計について語りました。技術志向の強いSIerでキャリアを積んできた立場から、視聴者からの質問に答える形式で議論が進みました。
開発経験を積んできたSEの中には、「今の会社でPM/PL路線に進んでいいのか」「技術に関わり続ける道はないのか」「どこかで事業会社へ行くべきか」と悩む人も少なくありません。イベントでは、三者三様のキャリア観が語られ、視聴者からは「今後の道しるべを得られた」「登壇者も自分と同じ悩みを抱えていたと知り、自分だけではないとわかった」といった声が寄せられました。
キャリアに唯一の正解はありません。だからこそ、3人の転機やAI時代のスタンスを通して、読者の皆さんが自分に近いロールモデルを見つけるきっかけになれば幸いです。
転職、悔い、挑戦。それぞれのキャリアを動かした経験とは
Q. ご自身のキャリアに深い影響を与えた経験を教えてください。
桐原氏: 私の場合は、豆蔵に転職したことですね。もともと技術が好きで、今で言うエキスパート職のような形で、専門性を磨き続けたいと思っていました。
前職のSIerではキャリアパスがマネジメント中心で、「技術力だけで評価され続けるのは難しいのだろうか」「やはりマネジメント職に進むべきか」と悩むこともありました。しかし仕事をやっていく中で、自分のやりたいことや適性はやはり技術寄りだと実感し、技術に関わり続けたいという思いが強くなっていきました。
豆蔵では、一定のクラスランク以上で「マネジメント」「コンサルタント」「エキスパート」という3つのキャリアが用意されており、技術に対するリスペクトが根付いているといえます。エンジニアとしての頑張りが正当に評価され、専門性を軸にステップアップできる環境で働けていることが、自身にとって大きな転機になっています。
前田氏: これまで様々なプロジェクトに関わりましたが、足かけ3年ほど携わっていた案件がお客さまにデリバリーできずに終わってしまった経験は、深い影響を与えています。
私は学生時代に情報系の学部を専攻しておらず、社会人になってからコードを書き始めました。初めてプログラミングに触れた時、ものすごい面白さを感じ、それ以来「何とかしてコードを書けるようになりたい」「プロダクトをつくれるようになりたい」という思いで仕事を続けてきました。
だからこそ、デリバリーできなかった経験はキャリアのターニングポイントでした。どうすればエンジニア一人ひとりが力を発揮しながら、プロジェクトを成功させ、価値を届けられるのかという点に関心を持つようになったんです。
その経験もあってスクラムを学び始め、スクラムマスターなどの役割を担うようになりました。それまではマネージャーというと、「進捗を管理する」というイメージが強かったのですが、スクラムを学ぶ中でもっと奥が深い立場だと理解できるようになりました。
澁川氏: 目の前のユーザーのためにつくったものが、思った以上に広く使われた経験は、大きなやりがいがあります。例えばフューチャーアーキテクトでは、もともと一部の社員向けに作った認証システムが、想定より2桁多いユーザーを管理する規模にまで広がりました。
マネージャーかエキスパートかという二択ではなく、実際には様々な役割があると感じています。例えば、ウェブフロントエンドのプロジェクトに携わった際、当時はまだTypeScriptが主流ではなく、JavaScriptの良質な資料も少なかった中、JavaScriptの解説記事を書いたところ、雑誌掲載や書籍化につながりました。
そのほか、メンバーの育成や現行システムの切り替えプロジェクトなどを経験する中で、コーディング以外にも大事なことがあると感じるようになりました。最近は「楽しい仕事は降ってくるのを待つのではなく、自分で取りに行けばいい」と考えており、お客さまとの契約締結など、仕事の幅を広げています。
Q. 「SIerから事業会社」のルートはよく見られますが、澁川さんはなぜ事業会社からSIerへ進んだのでしょうか。
澁川氏: もともと社内SEの仕事が楽しかったほか、自社の事業だけでなく様々なドメインの案件に関わりたいと思ったからです。お客さまと直接やりとりできるBtoB領域でシステム開発をしたいという思いもありました。業態や扱う商材の好みは人それぞれですが、個人的には小売、流通、エネルギー、製造など、様々なドメインに触れられる今の環境は気に入っています。
手を動かしてきた3者が思う、AI時代のスタンスと働きかけ
Q. AI時代、PMの在り方についてどう思われますか。上流の業務だけでなく、AIを使って自分でもしっかりコードを書くべきかに悩んでいます。
澁川氏: 今後、単純なコーディングはAIに任せるのが当たり前になるので、われわれに求められる水準が一段上がるはずです。今までは「コードを書く人」をマネジメントしていましたが、これからは「AIエージェントを使いこなすマネジメント力」も求められ、従来のPMの役割を包含する形になると思います。あるエージェントにはコーディング、別のエージェントにはレビューさせて全体を見るイメージです。
前田氏: 個人的には、AIを使いながら書くべきだと思っています。これまでコーディングが難しかった立場の人も、AIを使うことでハードルが下がるはずです。本格的に書くかどうかは別として、これまで管理がメインだった人が自分でも検証してみることで、今まで見えなかったことが見えるようになると思います。この流れはチャンスだと捉えており、この前シンプレクスのデザイナーも、Claude Codeを使ってファイル圧縮ツールをつくっていました。
桐原氏: AIによって開発能力自体は上がりましたが、やはり生成されたものが完璧とは限りません。作ったものが十分なのかを判断するために、コードを理解する力は依然として必要です。コーディングルールやガードレールを設計する上で、コーディングやテストなど、基盤となる部分への理解は持ち続ける必要があります。AIによってコーディングの敷居が低くなったからこそ、「個人ができておくべきこと」が増えているのではないかと思います。
Q. 生成AIの出現によって、ここ半年の発展で目指すキャリアに変化はありましたか。
前田氏: 半年前までは、「自分の仕事がなくなるのではないか」「これからどうやって生きていこう?」とネガティブに捉えてしまっていました。しかし最近は、「これからもっとできることがあるぞ!」とポジティブに捉えています。
例えば、時間の制約などでできなかったことが、AIを使えばできるようになります。また、ソフトウェアの設計をClaude Codeと壁打ちしていると、自分一人では思いつかなかったようなレベルの設計が出てくることもあります。そうした時に、自分の能力が拡張されている感覚があります。
Q. 部下やチームメンバーの育成で意識していることはありますか。
桐原氏: 資格の取得は、共通言語や周りへのアピールとしていいと考えており、推奨しています。会社全体としても資格の取得を推奨しており、私自身、AWS認定資格をすべて取得しています。資格を取ったからといって何でもできるわけではないのですが、仕事を任せてもらうための「最初の信頼」につながると思います。
澁川氏: フューチャーアーキテクトは年次ではなく成長でクラスランクが上がる評価制度を採っており、会社としてもコンサルティング力をはじめとしたスキル育成に力を入れています。その上で僕が意識していることは「経験の場をつくってあげること」です。
例えば、同じテーマの技術ブログを書いてもらったり、最近では自分の書籍執筆にも多くの人に参加してもらっています。僕自身、初めて本を書いたのは大学生の頃で、アジャイル普及に貢献された株式会社テクノロジックアートの長瀬嘉秀さんから声をかけていただいたことがきっかけでした。
「本を書きたい」と自ら手を挙げる人は限られています。だからこそ、そうした機会をつくってあげることが、年長者として大事かなと思っています。
前田氏: 私は、「メンバーが仕事を楽しめているか」を意識しています。楽しみながら取り組む人は成長が早く、そうした人には勝てません。「楽しめてる?」と本人に直接聞くほか、まずは自分自身が前向きに仕事に取り組むことを大切にしています。楽しくなさそうな人に楽しめと言われても困ってしまうと思うので、私自身が楽しむことを意識していますね(笑)。
あなたにとっての「手を動かし続ける」とは?
今回のイベントでは、改めて「キャリアに唯一の正解はない」事実が見えてきました。だからこそ、自分の志向や強みを整理し、納得感のある選択をすることが重要になります。
ネクストキャリアの軸を見つけたい方は、Findyの専任コンサルタントによるユーザーサクセス面談をぜひご活用ください。壁打ち相手となって、悩みやニーズの言語化をサポートします。
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