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「完璧じゃなくても、まずは動く」。日本人唯一のLaravelコアエンジニアが自作翻訳アプリと国際カンファレンスに懸ける思い

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Laravel / Senior Software Engineer

濱崎 竜太

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英語でのトークを半分しか聞き取れなかったエンジニアが、いま日本で国際カンファレンスを主催しようとしている。しかも、全15名の登壇者のうち10名、参加者の約4割が海外から訪れる見込みだという。

2026年5月26日・27日に開催される日本初のLaravel公式カンファレンス「Laravel Live Japan 2026」。日本人で唯一のLaravel社エンジニアであるオーガナイザーの濱崎 竜太さんは、そこで立ちはだかる「言語の壁」の橋渡しのために、自らリアルタイム多言語翻訳アプリ「YOYO」まで作ってしまった。

かつては英語へのコンプレックスを抱えながらも手探りで海外に飛び込み、キャリアを切り拓いてきた濱崎さん。ミートアップでの小さな実験から始まり、あえてTypeScriptを採用するという現場の泥臭い技術的決断の裏側、そして日本のエンジニアコミュニティを世界とつなぐための挑戦について話を聞きました。

「自分の目で見ないと後悔する」英語への不安を抱えて飛んだシカゴ

――2018年にシカゴで開催された「Laracon US」への参加が、濱崎さんのキャリアの大きな転機になったと伺いました。当時はどのような状況だったのでしょうか?

2014年にLaravelに出会って、そのAPIやドキュメントの美しさに文字通り「恋に落ちた」んです。当時一緒に働いていたスウェーデン人エンジニアの影響もあり、プログラミングについては英語の一次情報を追うようにしていました。ただ、学生時代に英語の論文などを読んでいたので読み書きには抵抗がなかったものの、留学経験はなく、英会話はオンライン英会話を少しやっていた程度で、お世辞にも得意とは言えないレベルでした。

それでも、YouTubeで見ていた「Laracon US」の熱気を、どうしても生で味わってみたくて。日本からシカゴは遠く、費用もかかります。後から動画で見られるトークにそれだけの価値があるのか、正直かなり悩みました。でも「自分の目で見てみないと絶対に後悔する」と、思い切って行く決断をしたんです。当時は周りに一緒に行く日本人のエンジニア仲間もいませんでしたね。

――実際に現地に飛び込んでみて、いかがでしたか?

正直トークは半分くらいしか聞き取れませんでした(笑)。でも、プログラミングの話なのでスライドのコードを見ればなんとなく理解はできたんです。

それよりも衝撃だったのは、「世界中から同じ技術を使う人が集まっている」という事実でした。拙い英語ながらも「せっかく行ったんだから」と、前日の飲み会やアフターパーティーで自分から話しかけにいって、いろんな国の人と交流しました。Laravel作者のTaylor Otwellにも直接話を聞けたりして。

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言葉の壁以上に、世界中のエンジニアと繋がりができたことが大きな刺激になり、「自分もいつか、こういうグローバルな環境で働いてみたい」と、強く心を動かされました。

――そこから海外就職を目指すわけですが、具体的にどのような行動を起こされたのですか?

帰国してすぐ、「やり方はわからないけど、とりあえず来年のうちに絶対海外に行くぞ」と心に決めました。まずは年末年始の休みを利用して、セブ島へ2週間の超短期留学にも行きました。たった2週間で劇的に英語が上達するわけはないんですが、とにかく何か行動を起こしたかったんです。

その後、日本とは全く違う英語のCV(職務経歴書)やカバーレターを見よう見まねで書いて、LinkedInに登録しました。ビザが取りやすそうなヨーロッパやオーストラリアなどの企業に片っ端からオンラインで応募したんですが……まあ、最初はなかなか上手くいかない。そんな時、予想外にもシンガポールの企業からLinkedInでスカウトが来たんです。

――それがシンガポール移住へと繋がったのですね。

はい。ただ、その会社、LaravelではなくRuby on Railsを使っていたんですよ(笑)。少し迷いましたが、「今は手段を選ばず、海外に出ることを最優先にしよう」と腹をくくって入社を決めました。

――ほぼ同時期に、ヨーロッパの「Laracon EU」にも登壇されていますよね。初めてのカンファレンス登壇が、いきなり海外で1000人の前というのは驚きです。

そうなんですよ。日本のカンファレンスでも登壇経験がなかったのに、ダメ元で応募したらなぜか採択されてしまって。アムステルダムの会場で、いきなり1000人の前で30分間、英語で話すことになりました。

当然、アドリブで英語なんて絶対無理なので、2〜3ヶ月間ひたすら練習して、台本を一言一句すべて丸暗記して本番に臨みました。あの時の緊張と、やり切った後の達成感は、今でも忘れられませんね。

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スパムかと思ったオファーメール。現場で味わった「リアルな葛藤」が繋いだ出会い

――シンガポールでの多国籍な職場環境はいかがでしたか?

いきなりテックリードとして採用されたんですが、20カ国以上から人が集まる環境で、同僚の英語のアクセントが本当にバラバラで。最初は全然聞き取れなくて、毎日家に帰って落ち込んでいました。

でも、知ったかぶりをしてもしょうがないので、「僕は本当に英語が下手だから、ゆっくり喋ってほしい」とチームに正直に伝えて、泥臭く食らいつきました。

言葉だけでなく、カルチャーの違いも大きかったです。海外って、みんなの前で特定の人の仕事を大げさなくらい賞賛する文化があるんです。最初は戸惑いましたが、すごく良い文化だなと。逆に、成果を出せないとシビアな判断を下される厳しい環境でもありましたね。

――そこから、どうやって現在のLaravel社へと繋がっていくのでしょうか。

その会社で2年半働き、シンガポール国内で再びLaravelを使える企業へ転職しました。帰国後の2024年、Laravel社の求人を見つけて応募したんです。

そしたら、ちょうど第一子が生まれた数時間後に、Laravel社のVP of Engineeringから面接の案内メールが届いて。タイミングが劇的すぎて最初は「スパムかな?」と疑ってしまいました(笑)。

――すごいタイミングですね…。 面接はどのような感じでしたか?

求人には具体的なプロジェクト名が書かれていなかったので、オープンソース関連の仕事だと思って面接に臨みました。そしたら、実は彼らが当時未発表だった「Laravel Cloud」や監視ツール「Nightwatch」を水面下で作っている最中で、まさにそのAPACリージョンの担当者を探していたところで。過去にコンテナ化や監視ツールの構築など、インフラ周りの経験があったことも評価され、オファーをいただきました。本当に奇跡的なマッチングで、日本人で唯一のコアエンジニアとして入社することになりました。

小さなミートアップでの実験から生まれた自作アプリ「YOYO」

――今回のLaravel Live Japanでは、海外からの参加者が4割を占めるそうですね。言語の壁を解決するために、濱崎さんご自身でリアルタイム多言語翻訳アプリ「YOYO」を開発されていると伺いました。

はい。ただ、実はこのアプリ、いきなり今回のカンファレンス用に大規模なものを作ったわけではないんです。この大きなカンファレンスをやる前に、まずは小さく国際的なコミュニティを作って実験しようと、「PHP×Tokyo」というミートアップを立ち上げました。そこも参加者の半分くらいが海外の方なんですが、やっぱり「言語の壁」が一番の課題になったんですよね。

そこで、まずはそのミートアップでの実験用に、ブラウザベースで動く翻訳アプリ「YOYO」を一人で作り始めました。実際にミートアップで使ってみて手応えを掴めたので、それを今回の500人規模のカンファレンス用に本気でスケールさせているところなんです。

――その『YOYO』、具体的にどんな仕組みで動いているんですか?

従来の翻訳ツールのように参加者が音を拾うのではなく、登壇者の音声を直接拾ってAIで翻訳し、参加者は手元のスマホで好きな言語の字幕を選んでリアルタイムで読める仕組みです。イベント特有の専門用語や登壇者の名前も、事前に「コンテキスト」としてAIに渡しておくことで、かなり精度の高い翻訳ができます。

すでにセルビアのLaravel Servia Meetupで多言語対応のテストとして使ってもらった際には、「全く問題なく使えてよかった」という嬉しいフィードバックをもらいました。ほかにも、アメリカの大きなカンファレンス「React Miami」でもスペイン語対応のために導入される予定だったりと、正式ローンチ前にも関わらず少しずつ世界から反響をいただいており、開発していてとても楽しいですね。

――大規模なカンファレンス向けにスケールさせる上で、技術的に一番難易度が高かったポイントはどこですか?

一番大変だったのは「多数のWebSocketコネクションの管理」と「低遅延(ローレイテンシ)の実現」ですね。

音声を拾う管理者側、LLM(AI)側、そして何百人という参加者側。たとえば5カ国語に対応する場合、言語ごとにコネクションを管理して、参加者が選んだ言語に応じて正しいテキストをストリーミング配信しなければいけない。この複雑な組み合わせを、絶対に落とさずに安定して捌き切るのが大きな壁でした。

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――今後アプリを世界中のカンファレンスで展開していくとなると、イベントの開催地がサーバーから遠い場合の遅延(レイテンシ)も課題になりそうですね。

そうなんです。中間のWebSocketサーバーが東京にしかないと、たとえばアメリカで開催されるイベントで使ってもらう際に、大きな遅延が発生してしまいます。そこで、WebSocket サーバーとして「Cloudflare Workers」の Durable Objects を採用しました。Durable Objects はイベント単位でインスタンスが作られ、最初の接続元に近いデータセンターに配置されるため、東京固定のサーバーと比べてレイテンシを大幅に改善できます。

ただ、これを実現するためには、PHPやLaravelではなく、Cloudflare Workers のランタイム上で動く TypeScript で実装するしかなかったんです。本音を言えば全部大好きなLaravelで作りたかったです…でも、エンジニアとして「ユーザーの遅延という最大の課題を解決する」ことを最優先に考えたら、自分の好きな技術スタックに固執してはいけないと思って、あえてTypeScriptを選択しました。

――大好きなLaravelを使わないという選択、なかなか踏ん切りがつかなさそうですが…。

正直、かなり悩みました。でも、参加者が会場で字幕を見る時に数秒のズレがあったら、イベントの熱やトークの面白さは半減してしまいます。エンジニアとして「遅延という問題を解決する」ことを最優先に考えたら、自分の好きな技術スタックに固執してはいけないと思い、TypeScriptでの実装に踏み切りました。

――現在は字幕(テキスト)での提供とのことですが、将来的には「音声」のリアルタイム翻訳なども視野に入れているのでしょうか?

はい、もちろんです。ただ、現状の技術だと音声からテキスト、翻訳、そして再度音声へというサイクルでラグが大きい。参加者にイベントの熱量をリアルタイムで届けることを最優先した結果、今回は確実で遅延のないテキストに振り切りました。

個人的に、洋画を吹き替えではなく本人の声(字幕)で見るのが好きなんです。だから、ElevenLabsのような音声生成AIで、登壇者「本人」の声を登録し、その声色のまま日本語など別の言語の音声を生成・ストリーミングする仕組みを作りたいという野望があります。今回はローンチに間に合いそうにないですが、ゆくゆくは絶対に実現したい未来の構想ですね。

また、このアプリはイベントに特化しているので、参加者が手元のスマホで見る翻訳画面にスポンサーのロゴを表示できる機能も実装する予定です。カンファレンス側で新たに「翻訳スポンサー」という枠を設けることができるので、技術的な課題解決だけでなく、イベント運営を持続可能にする仕組みとしても役立てていきたいです。

ちなみに、今回のカンファレンス用にアプリを開発しているのは僕だけじゃないんです。共同オーガナイザーのDavidも、参加者向けの「画像作成アプリ」を一人で自作しているんですよ。彼とはシンガポールにいた頃からX上でずっとオンラインの繋がりはあったんですが、顔を合わせたことはなくて。私が日本に帰国して、彼も東京にいたので「一度お茶でもしよう」と会ったのが初対面でした。

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その後、2024年のLaracon Australiaに二人とも参加し、現地でゆっくり話す機会があって「日本でもこういうのやりたいね!」と意気投合して、今に至ります。彼も根っからのエンジニアで、運営チーム全員が「課題は技術で解決する」という強い熱量を持っています。

「グローバルコミュニティの一部になる」技術と国境の垣根を越えて混ざり合う場所

――日本で公式の国際カンファレンスを開催することには、どのような思いがあるのでしょうか?

日本の技術コミュニティって、技術的な話をするときにどうしても「日本の中だけ」で完結してしまうことが多いんです。その結果、言葉の壁や日本語の情報の少なさから、海外のコミュニティで流行しているモダンな開発スタイル(例えば、フロントエンドとバックエンドをシームレスにつなぐInertia.jsなど)が、日本ではあまり注目されないといった課題も感じていました。

言語の壁だけでなく、こうした「マインドの壁」も壊したい。X(旧Twitter)で海外の開発者に直接フィードバックを送ったり、海外のカンファレンスに登壇したりして、日本のエンジニアがグローバルコミュニティの「一部」として当たり前に混ざり合う状況を作りたい。その「ゲートウェイ(入り口)」として、Laravel Live Japanを立ち上げました。

――今回はLaravel以外のトピックも幅広いそうですね。

はい。実は「普段LaravelやPHPを使っていない」というエンジニアの方にも、ぜひ参加してほしいんです。セッションではLaravelに限らず、フロントエンドやモバイルアプリ、AI、データベース、インフラ、キャリアなど、本当に幅広いテーマを扱います。

例えば、フロントエンドで話題の「VoidZero」のDevRelエンジニア Alexander Lichterさんも来日しますし、AIやデータベース、キャリアの話もあります。Laravelを軸としつつも、普段使っているツールの「中の人」の話を生で聞いて、技術の垣根を越えて現場の空気を感じてほしいです。

――さらに今回、「学生2日間完全無料」という思い切った施策を打ち出されています。これはどうしてですか?

学生という「可能性の塊」みたいな時期に、世界の第一線で活躍するトップエンジニアや、40カ国から集まる参加者と同じ空間の空気を吸ってほしいんです。トークの内容なんて全部理解できなくていいと思っています。海外のエンジニアと1人でも知り合えるだけで、将来のキャリアの選択肢が大きく広がるはずです。僕自身がコミュニティからもらった人生を変えるような恩恵を、次の世代にそのまま還元したい、バトンを渡したいんです。

悩む暇があったら、小さく動く。「小さく試す」行動が明日のキャリアを切り拓く

――仕事と個人開発とカンファレンス主催の3足の草鞋。相当ハードな日々だと思いますが。

本当に目が回るほど忙しいです(笑)。実は運営メンバーになること自体初めてなので、ゼロから手探りでいろんな人に助けを求めながらやっています。でも、「やりたい!」と思ったら、あんまり心配せずに「とりあえずやってみる」精神ですね。やってから苦労するタイプです。

――最後に、「今の環境を変えたいけど、自分にはまだ早いかも」「新しい技術やグローバルな環境に挑戦する勇気が出ない」と迷っているエンジニアに向けて、メッセージをお願いします。

キャリアに悩んだり、一歩踏み出すのをためらってしまう時期は誰にでもあります。でも、頭の中で悩んでただ止まっているだけでは、絶対に答えは出ないんですよね。

僕の場合、最初のきっかけはシカゴ行きの航空券を買った、それだけです。当時は英語なんて全然喋れなかったけれど、そのくらい無謀で小さな行動が、今の自分に繋がっています。

小さくてもいいから、まずは何か行動してみてください。動いてみれば、「やっぱりやってよかったな」とか「自分にはこっちの方が合っているな」といった結果が必ず出ます。そのアクションが、自分の世界を広げる第一歩になります。平日開催でハードルは高いかもしれませんが、この世界レベルの熱気を味わいに来てください。それが明日のキャリアを変えるきっかけになるはずです。

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