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「難しいのに役に立たない、それが面白い」KOBA789さん |私がアウトプットを続ける理由

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Findyスキル偏差値や発信力レベルの上位者に、日々のアウトプットで得られた経験や継続のコツを尋ねる連載企画。今回のゲストは、スキル偏差値「JavaScript 74.2」「Rust 71.7」「TypeScript 71.3」「C++ 66.9」、発信力レベル「9」のKOBA789さんです!

YouTubeチャンネル「#ch789」をVTuberとして運営するKOBA789さんに、技術発信の原点や、現在の発信スタイルを選んだ理由、そしてアウトプットを継続する秘訣を聞きました。

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制服のまま勉強会へ。中学生で始めたライトニングトーク

― はじめにアウトプットを始めたきっかけから教えてください。

中学生の頃に、「クラスメイトと一緒に使う掲示板をつくりたかった」のが大きなきっかけでした。運用するうちに「レスポンスが遅いから、次はチャットをつくりたい」と考えるようになり、技術を調べる中でNode.jsに出会いました。

当時はまだNode.jsの黎明期で、国内コミュニティもごくわずか。Twitterで「Node.js」と検索し、試験的に触っているエンジニアを見つけては、自ら交流して仲間を増やしていくような時代でした。

― そこから、どのような経緯でご自身の発信活動へとつながっていったのでしょうか?

当時はちょうどGitHubが普及し始めた頃で、OSSで便利なライブラリを公開しているエンジニアたちに憧れました。見よう見まねでGitHubを始めたものの、当時は自作できるプロダクトがなかったため、まずはNode.jsのリファレンスマニュアルの日本語訳に挑戦したんです。

中学校で習ったばかりのつたない英語でしたが、その活動が目に留まり、Node.jsのユーザーグループ創設者から声をかけていただいてコミュニティに参加しました。そこでの定期的な勉強会では、参加者がこぞってライトニングトーク(LT)を行っていました。その技術的な高度さとユーモアを交えた発表に魅了され、「自分もあの場に立ちたい」と強く感じたんです。

高校生になってからは自ら登壇枠で申し込み、学校帰りに制服のまま勉強会へ乗り込みました。周囲に同世代はゼロ。ブレザー姿で「学校終わりに来ました」と初対面の方々に話しかけていましたね。

― 中高生時代に単身で技術コミュニティに飛び込むのは、心理的なハードルが高かったのではないでしょうか。

実はそこまで尻込みしたり、プレッシャーを感じることはありませんでした。登壇するにしても、LTはたった5分間のプレゼンなので、何人かの発表を見るうちに、「これなら自分にも真似できそうだ」と感じたんです。

登壇テーマに選んだのは、当時話題だった「Haskell でよく使われるモナドをJavaScriptに無理やり持ち込む」というマニアックなネタです。

「さすがに無理があるだろう」と笑いを誘いつつ、技術的な裏付けはしっかり提示することを意識しました。実際に会場で笑いを取れて嬉しかったことを覚えています。

小学生の頃って「足が速い人」が絶対的なヒーローですよね。運動が苦手だった私は、「ならば自分は面白さでポジションを取ろう」と悟りました。その生存戦略とも言える原体験が、今の私の発信の軸になっているのかもしれません。

完成品より「人が悩みながらコードを書く姿」に価値がある

― KOBA789さんは現在、VTuberとしてYouTubeで発信活動を行っています。リアルな場でのLT登壇から、現在の活動へはどのようにつながっていったのでしょうか?

きっかけはコロナ禍でオフラインの勉強会がなくなってしまったことでした。発信の場が完全に消滅した空白期間に耐えられず、「ならば自分で場をつくるしかない」と。そこで、ステイホームのご時世に相まって盛り上がりを見せていた、YouTubeというプラットフォームに、まずは実験的に乗っかってみたんです。

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VTuberとして活動するKOBA789さんのYouTubeチャンネル「#ch789」。2020年頃から配信を開始し、現在のチャンネル登録者数は4,000人を超える

― テキストではなく動画、しかもVTuberというスタイルを選択された理由は?

やっぱりしゃべるのが好きだったのが一番大きいです。ブログのようなテキストでは、人前で話すLTの代わりにはならないんですよね。あくまで「自分がしゃべりたいからやる」というスタンスなので、視聴者の受け取りやすさよりも、自分がやりたい形を優先しました。

VTuberを選んだのは、自分がカメラの前に出るのが得意ではなかったことと、アバターを動かす技術自体に興味があったからです。実は最初、動画をつくろうとしたんですが、極めて熱しやすく冷めやすいタイプなので、撮影して編集するという工程に耐えられず挫折してしまって。そこで、準備した勢いそのままに突入できる「ライブ配信」に切り替えました。当日の朝に準備して、夕方にはスタートしてしまう。準備から本番までの間を空けないことが、私にとって飽きずに続けるコツなんです。

― YouTube活動を通じて、何か新しい気づきはありましたか?

一番の驚きは、「人が悩みながらコードを書く姿」そのものに価値があると気づいたことです。完成した成果物ならGitHubで、主義主張ならブログで見られます。

でも、「その人が何を考え、どこでつまずき、どう解決したか」というリアルな思考の過程って、実はなかなか共有されないんですよね。そこを包み隠さず見せるライブコーディングが、視聴者に実はすごく好評です。

特に印象深いのは、年末に24時間かけて「TCP/IPのプロトコルスタック」をゼロから実装した配信です。解説書はあっても、人が悩みながらつくる過程を見られるコンテンツは他にありませんから。長時間の配信になるため音声機材にはこだわり、秘密情報の映り込みを防ぐために配信用の専用環境や画面キャプチャソフトまで自作して臨みました。

【前半】自作TCP/IPスタックをRustで実装するまで年を越せない【24時間耐久】| YouTubeチャンネル「#ch789」

アウトプット活動が「共通の話題」で語れる仲間を連れてきた

― これまでの活動の中で、ターニングポイントになったものはありますか?

大きく2つあります。 1つ目は、2012年出版の共著『サーバーサイドJavaScript Node.js入門』(アスキー・メディアワークス)の出版です。人脈が広がっただけでなく、プロの編集者との仕事を通じて「責任ある情報発信とは何か」を学べた非常に大きな経験でした。

2つ目は、技術誌『WEB+DB PRESS』(技術評論社)での「自作RDBMS入門」の執筆です。実は、YouTubeで最初の動画を公開したのが、この記事の公開と同じタイミングでした。その相乗効果で一気にチャンネル登録者が伸び、現在の登録者の4分の1ほどは、この記事経由で来てくださっているのではないかと思います。

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2012年出版の共著『サーバーサイドJavaScript Node.js入門』(アスキー・メディアワークス)。プロの編集者との仕事を通じ、発信者としての視座を高めるきっかけとなった1冊

― そうした執筆の機会は、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

Node.js入門は、ユーザーグループのコミュニティでのつながりからです。WEB+DB PRESSのほうは、私がネットに上げていたスライド資料(Speaker Deck)やブログを読んでくれた編集者の方から、「あの話を記事にしませんか」と直接メールでお声がけいただきました。

― この経験を経て、ご自身の中で変化したことはありましたか。

2つあって、1つは商業出版という「極めてハードルの高いアウトプット」を経験したことで、他の発信に対する心理的ハードルが下がったこと。

もう1つは、自信ですね。あれだけ広く発信してプロの目にもさらされたのに、大きな間違いは指摘されなかった。本を出した後は「Node.jsに詳しいです」、記事を書いた後は「DBMSに詳しいです」と、自信を持って言えるようになりました。

― 改めて発信活動を続けてきて最も良かったことは何でしょうか。

やはり「共通の話題」で語り合える友人が増えたことですね。自分が面白いと思う技術の話に共感してくれる人って、身のまわりにはなかなかいません。でも発信を続けていたら、距離を超えて同じ熱量の人が集まってきた。私の発信を見て「価値観が合う」と今の会社に応募してくれた方もいて、発信が自然と仲間を引き寄せてくれるんだなと実感しています。

「難しいのに、役に立たない」から面白い。経済合理性を抜け出す継続の秘訣

― アウトプットを長く継続するための最大の秘訣は何でしょうか?

やりたくないことはやらない。これに尽きますね。

私は、常に自分のモチベーションと丁寧に向き合うようにしています。SNSを見ていると、「今このトレンドに乗れば数字が稼げるな」という誘惑に駆られる瞬間があります。でも、そこで「待って、自分が本当にやりたかったのはそれだっけ?」と立ち止まるんです。

実際、今大流行している「AIコーディングツールの使い方」のようなネタをやれば、確実にウケるとは思います。でも、結局やりたくないんです。

もちろん、3回くらいは悩みますよ(笑)。「数字が伸びるかも」という誘惑と「でもやりたくない」という気持ちの間を何度も行き来します。それでも結局、3回とも「やっぱりやらなくていいか」と見送る結論にたどり着くんです。なぜなら、それは「他の誰でもできること」ですし、何より「自分が純粋にやりたいことではない」からです。

― では逆に、KOBA789さんが「やりたい」と思えることの共通点は何ですか?

そうですね。一言でいえば、「技術的に難しく、かつユーモアがあること」です。

「高度な技術を使って、本当に便利なものをつくりました」というだけでは、私の中の「やりたいこと」には入りません。だって、それは仕事でやればいいことですから。先ほど触れた「TCP/IPのプロトコルスタックの自作」なんて、まさにナンセンスの極みなんですよ。既にLinuxの中に圧倒的に高品質なものがあって、誰も自作のものなんて実用しない。

でも、自分でやると最高に面白いし、視聴者も面白がってくれる。難しいのに、何の役にも立たない。そこが面白いんですよ。私はそのナンセンスさがたまらなく好きなんです。思えば、この「無駄なものに本気を出す」価値観のルーツは、『ニコニコ動画』のタグ『ニコニコ技術部』 にある気がします。

学生からプロのエンジニアまで、とにかくナンセンスなものに全力で技術を無駄遣いしていた。あの愛すべき感覚が、私の中でずっと続いているんだと思います。

― 最後に、これからアウトプットを始めたいエンジニアへメッセージをお願いします。

多くの方は、「キャリアに有利だから」といったメリットありきで発信を考えがちです。新卒で会社に入り仕事を覚えると、骨の髄まで経済合理性に染まり、趣味や私生活までその価値観にどっぷり浸かってしまうことがあります。

でも、人生はそれだけじゃないですよね。「ただただ面白いから」というのも、立派な理由です。利益ばかりを追い求めると、「人の役に立つか」「正確か」「キャリアにつながるか」と考えすぎてしまい、アウトプットがひたすら窮屈になってしまいます。成功者が「発信したらこんないいことがあった」と語るから、皆「いいことのために発信しよう」としがちですが、実は順序が逆なんです。

まず発信したいからする。いいことは、たまたま後からついてくる。最初の一歩は、それくらい軽やかなマインドでいいのではないでしょうか。

― KOBA789さん、ありがとうございました!

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