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個人への支援に感じた壁。メルカリのデータアナリストが、データエンジニアに異動した理由

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ファインディ編集部

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2026年5月15日に開催されたオンラインイベント「Data Career Talk #2 AIエージェントを支えるデータエンジニアの仕事」。メルカリとZOZOのデータエンジニアが登壇し、AI時代におけるデータエンジニアの役割の変化と自身のキャリアについて語りました。

株式会社メルカリのじゃっこさんは、6年間データアナリストとしてキャリアを積んだ後、2026年1月にデータエンジニアへ異動しました。AIが便利になるほど、データの前提を整える仕事の重要性が増す。一人ずつの支援に限界を感じたじゃっこさんは、その仕組みをつくる側に回ることを決めたといいます。

本記事では、じゃっこさんの講演をもとに、データアナリストがデータエンジニア組織へ異動するに至った背景をお伝えします。

じゃっこ / @hira(@jackojacko_

  • 2026- 株式会社メルカリ データエンジニア
  • 2023-26 株式会社メルカリ データアナリスト
  • 2020-23 株式会社ミラティブ データアナリスト
  • 2018-19 株式会社コロプラ VTuberディレクター

データ基盤側と事業側をつなぐ「共通言語」の必要性

じゃっこさんは、最初からデータエンジニアだったわけではありません。新卒で入った会社でVTuberのディレクターとして2年間働いた後、もともと興味のあったデータアナリストに転身。その後はデータ系のキャリアを歩み、2023年にメルカリに入社しました。

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※参考:積み上げた暗黙知をAIに載せ、仕組みで届ける(データエンジニア @hira)ーYurinoの「先輩、ちょっといいですか?」vol.6

メルカリではデータアナリストとして事業に並走する傍ら、前職で経験のあったLookerの導入などデータエンジニアリング寄りの仕事にも関わっていたといいます。2025年後半からは、そうした経験を活かしてチーム内のAI・データ活用支援に専念。そして2026年1月、データエンジニアリングの部署であるJB Dataへ。長くアナリストとして事業に並走してきた経験を携えての異動でした。

ここで、じゃっこさんの話の前提となるメルカリのデータ組織について触れておきます。メルカリには複数の事業があり、データアナリストは各事業部に入って事業に密接に並走しています。一方、データエンジニアは職種別組織であるJB Dataに所属し、全社のデータ基盤を担っています。つまり、データを使う人とつくる人が、少なくとも組織上は離れたところにいる。だからこそ、両者をつなぐ共通言語が必要になるというのが、じゃっこさんの問題意識です。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

メルカリではBigQueryにデータを集め、dbtで整備し、セマンティックレイヤーを経て、分析AIエージェント「Socrates」につなぐパイプラインが構築されています。Socratesを使えば自然言語でデータの検索や分析ができ、専門職以外のメンバーも、自然言語を入り口にデータ活用へアクセスしやすくなりつつあります。一見すると理想的な状態ですが、AIエージェントが便利になるほど、その手前にあるデータとコンテキストの重要性は増すとじゃっこさんは言います。人間のアナリストであればSQLを書きながら「このテーブルは使わないほうがいいな」と途中で気づけますが、エージェントに任せるなら、そうした判断をあらかじめ言語化しておく必要があるからです。では、データとコンテキストをどうつくればいいのでしょうか。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

AIエージェントが便利になるほど、前提のズレが速く広がる

以前であれば、データ分析は専門職の仕事でした。SQLを書ける人がデータを引き出し、時間をかけて集計・可視化する。工程に人間の目が入るぶん、途中で「このテーブルは使わないほうがいい」「この数字は文脈が違う」といった補正が効いていました。

AIエージェントの登場で、この構図が変わります。自然言語で問いかければ、SQLもグラフも自動で生成される。専門職でなくても、集計や可視化など、仮説検証やPDCAの入り口に立ちやすくなった。データの民主化という意味では、これは良い変化です。

ここでじゃっこさんが指摘します。AIが生成するSQLやグラフはエラーにはならず、「それっぽい」ものが出てきてしまうこと。前提が想定とズレていても気づきにくいこと。そして前提がズレていれば、ズレた判断が一気に広がるリスクがあること。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

「ズレ」を防ぐために必要になるのが、セマンティックレイヤーの先にあるデータとコンテキストの整備です。セマンティックレイヤーはデータに加えて指標の意味まで辞書化していく仕組みですが、それだけでは足りないとじゃっこさんは言います。

たとえば架空の事例として、「新規登録者数を最大化したい」という問いをAIにそのまま渡せば、最大化する条件を探してくるでしょう。しかし実際の意思決定の現場では、「コストはどうなっているのか」「一時的に増えても意味がないのでは」「そもそもリソースは足りるのか」といった疑問が湧きがちです。こうした事業の文脈こそがコンテキストであり、直近ではデータエンジニア界隈でも「コンテキストレイヤー」や「オントロジー」といったキーワードで議論が広がり始めています。

そして、事業のコンテキストはデータ基盤側だけでは集めきれません。事業部側の意思決定の背景や、問いの立て方のなかに分散しているからです。事業側とデータ基盤側が共創し、データとコンテキストを循環させていく仕組みが必要である。じゃっこさんはこれを、データメッシュに近い考え方だと捉えています。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

一人ひとりへの支援でぶつかったスケールの壁

メルカリ社内のデータアナリストの間では、AI時代のデータ人材に必要な力を二つに分けて考えています。一つは、事業の不確実性のなかから答えを見つけにいく力(事業直接貢献型)。もう一つは、見つかった答えをデータやコンテキストとして再利用可能な仕組みに落とし込んでいく力(組織能力向上型)です。

※参考:AI時代に備える組織データリテラシー / 5年後のAnalystの姿

「組織能力向上型だからデータエンジニア」「事業直接貢献型だからデータアナリスト」と職種や組織できれいに分かれるものではなく、二つの役割はグラデーションだとじゃっこさんは言います。一人の中にも両方が併存しうるし、得意不得意がある場合はお互いに協力しながら循環させていけばいいのだと。じゃっこさん自身は、仕組みをつくるほうに自分の強みを感じていました。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

その考えが実体験で裏付けられたのが、先に触れた2025年後半の半年間です。AIを仕事に組み込む流れが急速に進むなかで、じゃっこさんはアナリスト業務から離れ、データアナリストチーム内のAI・データ活用支援に専念することになりました。

日々の仕事は、一人ひとりの元を回ることでした。事業部側のメンバーにCursorやNotion、Lookerといったツールを紹介し、使い方を一緒に試しながら仕事や分析の効率化を支援していく。個人単位では、業務効率化が進んでいる、という手応えはありました。

ただ、ある時点で気づきます。一人ひとりの仕事が少し速くなっても、それが組織全体のスピードアップにつながっているかというと、そうとは言い切れない。そもそも、一人ずつ支援するやり方自体がスケールしない。再現性がない。じゃっこさん自身もブログでこの時期を振り返り、同じ壁について率直に書いています。

※参考:Mercari Analytics Blog|「使ってもらう」「作りっぱなし」のAI活用を卒業するためにーーwith AI時代の「組織能力向上型アナリスト」としての半年間を振り返って

この経験がじゃっこさんの背中を押しました。一人の頑張りでなんとかするのではなく、みんなが使える仕組みを組織全体のプロジェクトとしてつくっていく。AIが使えるデータとコンテキストを載せられる仕組みを、みんなでつくりたい。そう考えて、じゃっこさんはデータエンジニアリング組織への異動を決めました。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

暗黙知を形式知に変える。それがAI時代のデータ人材の仕事

じゃっこさんがこの講演で一番伝えたかったこと。それは、AIエージェントにデータを使ってもらうためには、今までデータアナリストが持ってきた暗黙知を、みんなが使える形式知に変えていく役割が必要だということです。

この暗黙知から形式知への変換は、データエンジニアリングに限った話ではないといいます。これまでその領域を担ってきた人が経験のなかで培ってきた暗黙知を、AIが読み取れる形式知に変えていく。それはどの分野のAI活用にも共通する課題であり、誰かが担わなければならない役割です。

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出典:じゃっこ/hira|AI時代に、 データアナリストがデータエンジニアに異動して

ただし、メルカリでもまだ答えは出ていません。じゃっこさんはデータエンジニアリング組織に異動しましたが、それが唯一の正解というわけではありません。異動せずに組織能力向上型のデータアナリストとして取り組むべきだという考え方もありうるし、そもそもデータアナリスト・データエンジニアという職種の在り方そのものをAI時代に合わせて再定義すべきだという見方もありえます。

見た目の役割や組織上の位置にこだわらず、誰がデータやコンテキストと最前線で向き合っていて、誰がそれを仕組み化しているのか。一度考えてみると面白いのでは?じゃっこさんはそう投げかけます。

あなたの組織では、データとコンテキストを、誰がどうAIにつないでいますか。

データアナリストとデータエンジニアの境界で、次のキャリアを考える

本記事で描いたような「暗黙知を仕組みに変える」仕事は、データエンジニアリングとデータアナリティクスの境界領域で生まれています。職種名にとらわれず、データとコンテキストを組織の能力に変えていくことに関心のある方は、以下もあわせてご覧ください。

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「自分のデータアナリストとしての経験がデータエンジニアリングにどう活きるのかわからない」「データ領域でのキャリアの方向性を整理したい」と感じる方もいるかもしれません。Findyのコンサルタントとの面談は、自身のスキルや経験、価値観を整理するきっかけになります。



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