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計画しすぎず、痛みを指針に~クレディセゾンが選んできた内製化の全貌〜

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株式会社クレディセゾン / 取締役(兼)専務執行役員CDO(兼)CTO

小野 和俊

本記事では、2025年5月14日に開催されたオンラインイベント「【技術選定を突き詰める】Online Conferenc​​e 2025」内のセッション「計画しすぎず、痛みを指針に~クレディセゾンが選んできた内製化の全貌」の内容をお届けします。同セッションでは、クレディセゾン 取締役 専務執行役員 CDO/CTOの小野和俊さんに、約6年間にわたる内製開発の取り組みにおける技術選定の勘所をお話しいただきました。ぜひ本編のアーカイブ動画とあわせてご覧ください。


小野和俊さん:クレディセゾンで取締役 専務執行役員 CDO/CTOを務める小野和俊です。「計画しすぎず、痛みを指針に」というテーマで、クレディセゾンにおけるDXの取り組みを解説します。私は2019年にクレディセゾンに入社してから約6年の間、ゼロから内製開発チームを立ち上げ、同チームは200人ほどの規模に成長しました。当社では、この内製開発チームを変革のキードライバーにしながら、DXを推進してきました。約6年間にわたる取り組みを振り返り、Phase1~3、そして2025年に始まったPhase4における技術選定のポイントに触れながら、当社のDXの全貌をご紹介します。

クレディセゾンは、クレジットカード事業に加え、住宅ローンや資産形成ローン、家賃保証といった不動産関連のファイナンス事業も展開しており、収益面ではクレジットカード事業に匹敵するほど成長しています。インドを中心としたグローバルサウスにおける金融事業も急速に拡大しており、新たな収益の柱となっています。かつてはクレジットカード中心の当社でしたが、現在では多角的なポートフォリオを持つノンバンクへと変貌を遂げています。

Phase1:内製開発チームをスモールスタート

多様なチームを実現する「HRT(ハート)の原則」とは

2019年3月に着任したとき、社内にプログラマーは私一人しかいませんでした。情報システム部門は存在したものの、プロとしてプログラミングを行う人材はいなかったのです。Phase1の始まりは、まさに“ゼロからのスタート”でした。

IT関連の業務を外部のSIerやベンダーに委託することは決して悪いわけではありませんが、内製の選択肢が全く存在しない、技術に詳しい人材が社内にいないために、技術選定まで外部に委託してしまう状況は、やはり問題だと感じていました。そこで私の個人ブログを使って、内製開発チームを作る活動を始めました。

スタートアップ出身者、エンタープライズ系のSIerやソフトウェアハウス出身者、双方の人材に来てもらいたいと考えていたため、最初からキャリアやスキルといった面での多様性を重視したチームを目指しました。以下の「内製開発チームの4原則」は、発足当初から今日に至るまでの約6年間、一貫してチームに伝え続け、現在では深く浸透しています。

内製開発チームの4原則

  1. 「さん」付けの徹底、役職呼びおよび「くん」付けゼロの徹底。
  2. 「HRT(ハート)の原則」を100%守り切る。頭にくることがあっても絶対に怒らない(言うべきことは言う。しかしできるだけマイルドに)。
  3. 短所ではなく長所を見る。短所は辛くても苦しくても全力で受け止める。
  4. 世の中を良くする、企業を成長させるなど、成果を出すチームであることを最重視する。

2つ目のHRTの原則は、11年ほど前から私が大事にしている考えで、謙虚さ(Humility)、敬意(Respect)、信頼(Trust)で成り立ちます。多様な価値観を持つ人々が集まるチームでは、意見の対立は避けられませんが、それは健全な議論として受け止めるべきです。ただし、失礼な言い方や敬意のない態度は厳禁です。

“痛み”を感じるたびに新たにした内製化への決意

最初に手掛けたのは、クレジットカード会員向けのアプリでした。しかし、全てを内製で開発することは困難だったため、「セゾンのお月玉」という企画に絞り、企画、開発、運用、データ分析、デザインまで、その領域は全てわれわれが担当しました。セゾンカードの利用者にデジタル抽選券を付与し、月に一回の抽選会をアプリ上で実施するもので、3Dのカプセルトイが現れ、当選すると現金1万円が届くという体験を提供しました。

この取り組みを進める中で、スマートフォンアプリにかなりの技術的負債が蓄積していることに気づきました。特定の箇所を改修しようとすると、コピー&ペーストされたコードが複数の場所に存在するほか、それぞれが微妙に修正されている状況に直面し、愕然としました。これは、開発を担当したベンダーの責任ではなく、事業会社である当社が適切なリファクタリングなどの技術的投資を怠ってきた結果だと認識しています。

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