「何から始めよう」「どこまでやればいいんだろう」——「エンジニア転職ガイド」は、転職準備から書類作成、面接、オファー、退職・入社までを、エンジニアキャリアのプロの視点で解説するシリーズです。順番に読むことも、気になる記事から読むこともできる内容になっていますので、ぜひご活用ください。
本記事は、エンジニア転職ガイド『転職軸編』(全2回)の第2回として、転職軸の具体的な整理方法と、よくあるきっかけ別の整理例を解説します。転職軸を整理する必要性やメリットは、以下の記事をご覧ください。
📌 この記事でわかること
・転職軸は、転職を考えたきっかけに「なぜ?」を繰り返し、「どんな環境なら実現できるか?」を条件にすることで言語化できる
・複数の軸はMUST(必須条件)とWANT(希望条件)に分類して優先順位をつけることで、企業選びの判断基準になる
エンジニアが転職軸を整理する際の考え方
転職軸はどのように整理すると良いのでしょうか。
転職軸の整理とは、転職先を選ぶときの判断基準を言語化することといえます。転職を考えたきっかけ(不満でも、前向きな動機でも)に対して「なぜ?」を繰り返して自分が本当に実現したいことを見つけ、「どんな環境ならそれが実現できるか?」を条件にしたものが転職軸です。
具体的には、次の4つのステップで整理していくのがおすすめです。
転職軸の考え方
STEP1転職を考えたきっかけを書き出す
STEP2「なぜ?」を繰り返して、本当に実現したいことを見つける
STEP3「どんな環境なら実現できるか?」を考えて転職軸にする
STEP4転職軸が複数ある場合は優先順位をつける
STEP1. 転職を考えたきっかけを書き出す
まずは、転職を考えたきっかけをすべて書き出してみましょう。現職への不満や課題だけでなく、「新しい技術領域に挑戦したい」「プロダクトの立ち上げフェーズに関わりたい」といった前向きな動機も含めて、思いつくものをすべて箇条書きにします。
スマホのメモや手帳・ノートなど、使いやすいツールで構いません。「スキルアップをしたい」「ワークライフバランスを見直したい」「もっと裁量のある環境で働きたい」など、まずは量を出すことを意識しましょう。
また「やりたいこと」だけではなく、「やりたくないこと」も書き出すのもポイントです。例えば「人間関係で消耗したくない」という気持ちの裏には、「本質的な業務に集中できる環境で働きたい」という前向きな希望が隠れていることもあります。
STEP2. 「なぜ?」を繰り返して、本当に実現したいことを見つける
次に、STEP1で書き出した内容に対して「なぜそう思うのか?」を繰り返し、自分が本当に実現したいことを掘り下げていきましょう。
掘り下げの目安は、次の2つのどちらかの状態です。
- 自分が目指すキャリアの方向性やライフプランと、現状との間にどんなギャップがあるかが見えている
- そのギャップが現職で解消できるかどうかを判断できている(会社の仕組みや構造の問題か、自分の努力や時間で変えられるものか等)
どちらかの状態になっていれば、「自分が本当に実現したいこと」を一言で言える状態になっているはずです。そうなったら、次のSTEP3に進みましょう。
そして、掘り下げていくと、複数の「本当に実現したいことを叶えるための構成要素」が見えてきます。それぞれについてSTEP3で転職軸にしていきましょう。
STEP3. 「どんな環境なら実現できるか?」を考えて転職軸にする
STEP2で見つけた「本当に実現したいこと」に対して、「どんな環境ならそれが実現できるか?」などと問いかけてみましょう。その答えを条件の形にしたものが、転職軸です。
例えば、「自分の技術力が正当に評価される環境で働きたい」(本当に実現したいこと)に対して、「技術的な貢献が評価基準に含まれており、昇給・昇格に反映される仕組みがある環境であること」(転職軸)のように整理します。
また、最初の転職軸の具体度は人それぞれです。例えば「評価基準が明確であること」くらいの粒度でも、「技術的な貢献が昇給に反映される仕組みがあること」まで具体化しても、自分が企業を比較・判断できるレベルであれば問題ありません。最初は大まかでも、企業研究やカジュアル面談を通じて具体化できますので、少しずつブラッシュアップしてみましょう。
STEP4. 転職軸が複数ある場合は優先順位をつける
転職軸は複数挙がることも多いです。その場合は、次のような手順で優先順位をつけていきましょう。
【優先順位の付け方】
- 転職軸を「MUST(譲れない条件)」と「WANT(できれば叶えたい条件)」に分類する
- 「MUST」の中で重要度を比較し、順位をつける
希望する条件すべてを満たす企業はなかなか見つからないものです。また、好条件がそろっている求人は倍率が高く、内定を得るのが容易ではありません。MUST/WANTの優先順位を決めておけば、重要度の高い条件を軸に企業選びができ、転職活動を効率的に進められるでしょう。
💡 キャリアのプロからのワンポイントアドバイス
転職軸は最初から完璧に言語化できなくても問題ありません。転職活動を進める中で、カジュアル面談で企業の話を聞いたり、他のエンジニアのキャリアを知ったりすることで、「自分はこの観点を重視しているんだな」と気づくこともあります。また、整理していく中で、現職でも実現できることがあると気づくケースも少なくありません。転職ありきで考えるのではなく、軸を少しずつ更新していくものとして、焦らず言葉にしてみましょう。
よくあるきっかけ別・転職軸の深堀り例
ここからは、よくあるきっかけ別にSTEP1〜3の流れを具体例で見ていきましょう。
(STEP4の優先順位づけは複数の軸が出そろってから行うため、ここでは省略しています)
よくある転職活動のきっかけ
1 給与・待遇を改善したい
2 今の働き方を変えたい
3 開発環境を良くしたい
4 ワークライフバランスを整えたい
5 スキルアップ・キャリア形成したい
給与・待遇への不満
【STEP1. きっかけ】 給与が低いと感じている
【STEP2. 本当に実現したいこと】
「なぜそう思うのか?」を順に掘り下げていきます。
業務の難易度や技術的な貢献に対して、給与が見合っていないと感じている
→ 評価基準や昇給・昇格の仕組みが見えにくく、何をすれば評価されるのかがわからない
→ 評価制度は会社全体の仕組みで、個人の働きかけでは変えにくい。また、エンジニアとして何が評価されるのかの軸も会社によって異なる
→ 自分の貢献が何によって評価され、どう昇給・昇格につながるのかが見える環境で働きたい
【STEP3. 転職軸】 技術的な貢献が評価基準に含まれ、昇給・昇格の仕組みに透明性があること
短納期対応に追われている
【STEP1. きっかけ】 残業時間が多い
【STEP2. 本当に実現したいこと】
「なぜそう思うのか?」を順に掘り下げていきます。
短納期の開発対応が常態化しており、技術負債の解消やアーキテクチャ改善といった中長期的な取り組みに時間を割けない
→ 上長にも相談したが、案件の納期設定や人員配置は構造的なもので、個人の努力だけでは変えにくい
→ 短期対応だけでなく、中長期的な改善にも時間を使える開発体制の中で、エンジニアとして力を発揮したい
【STEP3. 転職軸】 短期対応だけでなく、中長期の改善にも時間を使える開発体制であること
開発環境・体制への不満
【STEP1. きっかけ】 開発環境が整っている環境で働きたい
【STEP2. 本当に実現したいこと】
「なぜそう思うのか?」を順に掘り下げていきます。
コードレビューやテスト、CI/CDといった開発プロセスが十分に整備されておらず、品質担保よりもスピード優先の開発が続いている
→ 結果として手戻りや不具合対応も増え、生産性も思うように上がらない
→ 改善を提案したこともあるが、組織的な優先度が低く、個人の働きかけだけでは変えられない
→ 品質と生産性の両方を大切にする組織の中で、エンジニアとして経験を積み、力を発揮したい
【STEP3. 転職軸】 品質と生産性の両方に組織として投資していること
ワークライフバランスの悩み
【STEP1. きっかけ】 ワークライフバランスを見直したい
【STEP2. 本当に実現したいこと】
「なぜそう思うのか?」を順に掘り下げていきます。
ライフステージの変化により、これまでと同じ働き方を続けるのが難しくなってきた
→ 上長にも相談したが、業務量や勤務形態の柔軟な調整は制度上・構造上難しい
→ ライフステージが変わっても、エンジニアとして力を発揮し続けられる環境で働きたい
【STEP3. 転職軸】 ライフステージに応じて働き方を選べる環境であること
スキル・キャリアの停滞感
【STEP1. きっかけ】 スキルアップやキャリア形成をしたい
【STEP2. 本当に実現したいこと】
「なぜそう思うのか?」を順に掘り下げていきます。
今の業務では、自分が目指すキャリアの方向に必要な経験を積む機会が少ない
→ 社内異動も検討したが、ポジションの空きがなく実現が難しい
→ 自分が目指すキャリアに近い実務に携わりながら、エンジニアとして成長したい
【STEP3. 転職軸】 目指すキャリアに近い実務に関われること
エンジニアが転職軸を整理する時の注意点
最後に、転職軸を整理する際に気をつけたいポイントを2つ紹介します。
1. 退職理由と転職軸を切り分ける
退職理由は「現職をなぜ辞めるのか」という過去〜現在の事実であり、転職軸は「次の環境に何を求めるか」という未来の判断基準です。STEP1-2で書き出した退職理由を掘り下げた先にあるものが転職軸になります。面接では退職理由をそのまま語るのではなく、掘り下げた結果である転職軸として伝えるのが効果的です。
2. 転職そのものをゴールにしない
「今の仕事を早く辞めたい」という気持ちが先行すると、転職先で何を実現したいのかが曖昧なまま企業を選んでしまい、入社後のミスマッチにつながりかねません。転職はキャリアを実現するための手段の1つです。長期的な視点で軸を整理しましょう。
転職軸の整理に迷ったら、キャリアのプロに相談するという選択肢も!
転職軸の整理方法について解説してきましたが、自分の本音を言語化したり、優先順位をつけたりする作業は、1人では行き詰まることもあります。
そういったときにおすすめなのが、エンジニアに特化したキャリア・転職支援サービス「Findy」です。
Findyには、専門的な技術・知識を持ち、企業の情報にも精通したユーザーサクセスメンバーがいるので、求人紹介や選考対策はもちろん、「まずはキャリアを整理したい」「壁打ち相手がほしい」といった場面でも、希望に応じて活用できるのが特徴です。
気になった方は、無料で利用できる「ユーザーサクセス面談」でお気軽にご相談ください。
まとめ
転職軸は、必ずしも完璧に言語化できてから動く必要はありません。きっかけを書き出し、「なぜ?」で掘り下げ、「どんな環境なら?」で条件にしていくプロセスを重ねるうちに、少しずつ精度が上がっていきます。最初から正解を出そうとせず、まずは転職を考えたきっかけを1つ書き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、自分のキャリアの軸を見つける出発点になるはずです。
なお、整理した転職軸を面接でどう伝えるかについては、面接準備の記事で解説していますので、そちらも参考にしてみてください。
監修者
中村 弘平
Kohei Nakamura|ユーザーサクセス マネージャー
これまでにキャリアアドバイザー、組み込みエンジニア、ITコンサル企業の共同創業者・人事統括と、複数のフィールドを経験。共同創業した金融特化のITコンサル企業では、経営に携わりながらエンジニアの中途採用に従事した後、2023年10月にファインディ株式会社へJoin。エンジニア・人事・キャリアアドバイザー、そして経営・採用と多角的な視点を生かして、これまでに累計2,000名以上のエンジニアと面談をしてきた。現在はユーザーサクセスチームのマネージャーとして、エンジニア一人ひとりのキャリア支援に取り組んでいる。

