「スキルや経験が蓄積されている実感が持てない」――。入社して数年が経ち、そんな悩みに直面するエンジニアも少なくありません。
新卒で業務DXなどを手がけるSIerに入社した大前 廉さんも、その1人でした。「スキルセットを広げて、AI時代でも代替されない人材になりたい」という思いから、新卒3年目で転職活動を決意し、2025年12月に株式会社ヘッドウォータースへ転職しました。
同社は2016年からマイクロソフトのパートナーとしてAI事業を展開し、多様な業種の企業のAI活用を支援しています。
なぜ大前さんは、ヘッドウォータースへの入社を決めたのか。本記事では、前職で感じていた「言える実績がない」という悩みを出発点に、転職活動中の対話を経て「自分が伸ばすべきスキル」を見いだした過程を紹介します。
転職活動時の開発経験、保有資格
- Java / C# / TypeScript / Python
- AWS Certified Solutions Architect – Associate / G検定(ジェネラリスト検定) / 基本情報技術者試験
開発経験を積みたいが、主な業務は保守運用。3年目の危機感
― 転職活動を始めたきっかけは何でしたか。当時、悩んでいたことがあれば教えてください。
社会人3年目に入った頃、「このままでいいのか」という危機感が強くなり、転職活動を決意しました。2025年5月頃のことです。
一番の悩みは、「具体的な開発経験がほとんどない」という点でした。当時勤めていたのは独立系SIerでしたが、いわゆるクライアントワークの開発ではなく、OCR関連の自社製品を扱う部署に所属していました。その製品は開発フェーズを終えており、主な業務は保守運用でした。そのため、要件定義から実装まで一通り関わった経験がなく、「こういうプロジェクトを担当しました」と言える実績を十分に積めていない状況だったんです。
技術部門の責任者に相談はしたものの、会社としては今後別の事業領域に注力していく方針があり、自分が望むような開発や顧客折衝の機会を得るのは難しいと感じていました。新卒から3年以内での転職ではありましたが、このまま5年、7年と過ごしてしまうと、エンジニアとしてのキャリアが狭まってしまうのではないかという不安もあり、環境を変える決断をしました。
開発経験を積んでこその提案力。転職活動で得た気づき
― 転職を考え始めた当初は、どのような選択肢を検討していましたか。
企業規模については、実務経験が十分とはいえない中で、周囲のメンバーから学びながら経験を積める環境がいいと考え、スタートアップというよりは100人〜500人規模の企業を中心に見ていました。
業態については、自社SaaSを開発する企業とSIerのどちらも検討していました。その上で重視したのは、エンジニア自身が技術やアーキテクチャを調査・選定し、その結果が実際の開発に反映される文化があることです。
― 比較的広い選択肢ですが、転職活動を進める中でキャリアの軸が固まるきっかけはありましたか。
選考を受ける中で、企業の担当者の方からフィードバックを頂くようにしており、それが1つの転機になりました。特に印象に残っているのは「まだ伸びしろがある段階で転職活動をしている印象なので、今の会社の業務をやり切ったほうがいい」という指摘でした。
その言葉を受けて、今の環境でも学べることがあるのではないかと考えるようになりました。実際、ちょうど内定を頂いた頃には、お客さまに自社製品を説明するなど、役割の幅が少しずつ広がり始めている感覚がありました。今振り返ると、前の環境で経験を積む選択肢もあったのかもしれません。
一方で、要件定義から実装、運用まで1つのプロジェクトに一貫して関わりながら、開発や実装の経験を積みたいという思いも強くなっていきました。
― 転職活動中は、ITコンサルのキャリアも視野に入れていたと聞いています。
はい。背景としては、AIコーディングツールが日々進化する中で、開発以外のスキル、特に顧客の課題を整理して提案するような領域にも関心があったからです。
しかし、企業からのフィードバックや自分自身の志向と向き合う中で、まずはエンジニアとして開発や実装の経験を積みたいと考えるようになりました。知識や経験が十分でない状態で提案を行っても、説得力のあるアウトプットにはつながらないと感じたんです。
AI時代というと、開発以外のスキルを伸ばすことに目が行きがちですが、自分の場合は、まず開発や実装の経験を積むことが、将来的な提案力にもつながると考えるようになりました。
今の職場では、前職では得にくかった開発や実装の経験を積みながら、長期的には課題の整理や提案を行う領域にも関わり、自分のスキルセットを段階的に広げていきたいと考えています。
自分のやりたいことはできそうか。カジュアル面談で企業を知る
― 転職活動中は、どのように情報収集をしていましたか。
Findyの面談を活用したり、同じ会社の同期と情報交換したりしながら進めていました。特に意識していたのは、カジュアル面談を積極的に受けることです。実際に話を聞くことで、企業の方向性と自分の志向が合っているのかを確認するようにしていました。カジュアル面談は合計で10社ほど受け、複数の企業と接点を持つ中で、企業によって目指す方向性が大きく異なると理解できました。
― ヘッドウォータースの求人を紹介された時、どのように感じましたか。
企業規模や事業内容を見て、「自分の志向と合いそうだな」という印象を持ちました。マイクロソフトのパートナーとしてAI事業を展開しており、幅広い業種のエンタープライズ企業とのプロジェクト実績がある点から、技術志向の高さと安定性を感じました。また、平均年齢が比較的若く、組織としての風通しも良いのではないかと思ったのを覚えています。
資格取得や個人開発が転職活動の可能性を広げてくれた
― 転職活動では、どのような点をアピールしていましたか。
経験年数が3年未満だったこともあり、会社での実績だけで評価してもらうのは難しいと感じていました。そのため、AI関連の資格取得や個人開発といった自己研鑽の取り組みを積極的にアピールするようにしていました。実際に、ヘッドウォータースからの選考フィードバックでも、新しい技術への関心を持ち、行動に移している点を評価いただきました。
もともとAIを社内業務に活用できないかと考え、自主的に学習を進めていたほか、システムの中身を理解するためにも、身近な困りごとを解決するためのツールを開発していました。振り返ると、こうした取り組みを継続していたことが、結果的に今回の転職活動の可能性を広げてくれたと思います。
― 最終的にヘッドウォータースへの入社を決めた理由を教えてください。
最終的な決め手は、会社が目指す方向性が自分の志向と合致していたことです。面接や現場エンジニアの方とのオファー面談を通して、「技術力だけでなく、現場利用まで伴走する姿勢や、コストを含めてプロジェクトを俯瞰する力が重要である」という価値観に共感しました。実際に、お客さまへの提案業務など、従来のエンジニアの枠を超えて活躍している方が多いと聞きました。
先にお話ししたように、「開発経験を積みながら、将来的には課題の整理や提案といったコミュニケーションを必要とする領域にも関わりたい」と考えていたので、自分の志向と一致していると感じ、入社を決めました。
勉強会や技術発信。学習を後押しするヘッドウォータースの文化
― 現在はどのような業務を担当されていますか。
まだ準備段階ですが、AIツールの導入支援に関わる業務に携わる予定です。お客さまの業務内容をヒアリングし、どの部分にAIを活用できるかを検討した上で、実装や効果検証までを一貫して担当する予定です。
― 転職活動時に希望していた顧客折衝の要素もあるのですね。前職では金融系の顧客が多かったそうですが、様々な業界の企業を担当する面白さはありますか。
はい。業界によってセキュリティ要件やシステムの使い方が大きく異なるので、それぞれの特性を理解する必要があります。一方で、ある業界で得た知見を別の業界に応用し、付加価値を提供できる場面もあると感じています。入社してまだ4カ月ほどですが、こうした横断的な経験が積める点は、現職の面白さの1つだと感じています。
― ヘッドウォータースの第一印象は「技術志向と安定性のバランスが、自分の志向に合いそう」でしたが、実際に入社して企業文化はどのように感じますか。
入社してまず感じたのは、コミュニケーションが非常に活発という点です。現職ではリモートワークが中心で、私自身も入社後に出社したのは2~3回です。そのため、対面で会ったことのないメンバーも多い状況です。
それでも、ビジネスチャットツールなどによるオンラインでのコミュニケーションがしっかり機能しており、相手の意図を汲み取りながらやりとりする文化が根付いていると感じます。私自身、わからないことがあれば積極的に通話で確認するようにしており、そうしたコミュニケーションも取りやすい環境です。
― 学習環境についてはいかがですか。
前職では自主的に学習している人は少ない印象でしたが、現職では学習を後押しする文化があると感じています。現在は、会社の支援を活用しながら、GitHub Copilotを使って個人開発をしています。
そのほか、エージェンティックワークフローなど、興味のある分野への理解を深めるための勉強会が開催されています。部活動のようなイメージですが、会社として正式な取り組みとして位置付けられており、業務時間内に実施されています。会社のテックブログで発信する機会もあり、学びをアウトプットにつなげやすく、モチベーションになっています。
モヤモヤしているなら、一度動いてみる。その上でよく考える
― 転職前の自分に声をかけるとしたら、どんなことを伝えたいですか。
「焦らず、でも慎重になりすぎないでほしい」と伝えたいですね。あらかじめ自分がやりたいことや希望する条件を整理し、チェックリストのように可視化しておくと判断しやすくなると思います。その上で、8割ほど条件に当てはまる求人があれば、一度挑戦してみるといいのではないかと感じます。
― 最後に、転職を迷っているエンジニアの方にメッセージをお願いします。
やはり、モヤモヤした状態で立ち止まっていることが、一番もったいないと思います。「もう少し今の環境で頑張ったほうがいい」というケースもありますが、個人的には年次が上がるにつれて選択できるキャリアの幅は徐々に定まってくると思います。迷いを抱えたまま過ごすよりも、一度動いてみることが大切だと感じます。
最近はカジュアル面談など、企業の担当者の方と気軽に話せる機会も多いので、そうした場を活用しながら、自分の考えを整理し、納得のいくキャリア選択につなげていくといいのではないかと思います。
AI時代、必要なスキルは人それぞれ。自分に合った選択を見つけるには
「AI時代に必要なスキル」と聞くと、明確な正解があるように思えるかもしれません。しかし実際には、これまでの経験や目指したいキャリアによって、答えは大きく変わります。今回お話を聞いた大前さんも、Findyの面談や企業とのカジュアル面談を通して、「自分が次に伸ばすべきスキル」を見いだしていきました。
現職にモヤモヤしている時や、転職活動の中で自分の方向性に迷った時は、1人で考え込むのではなく、誰かと話しながら整理することも有効です。Findyのユーザーサクセス面談では、これまでの経験が市場でどのように見られるのか、次にどのようなスキルや経験を伸ばしていきたいのかを担当者と一緒に整理できます。
取材・執筆:大場みのり

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