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【#も読】Vibe coding時代のリスク/ぷまソフト問題/Unityランタイムの脆弱性/LLM×n8nペンテスト自動化(@yousukezan)

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三井物産セキュアディレクション株式会社 / セキュリティエンジニア

東内 裕二

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「あの人も読んでる」略して「も読」。さまざまな寄稿者が最近気になった情報や話題をシェアする企画です。他のテックな人たちがどんな情報を追っているのか、ちょっと覗いてみませんか?


こんにちは。東内(@yousukezan)です。

相変わらず引きこもってAIとセキュリティの記事を中心に読んでいます。ようやく秋らしくなってきましたが、季節とは裏腹にセキュリティの世界ではアサヒグループホールディングスやアスクルがランサムウェアで被害を受けるなど、まったく落ち着きません。それでは、最近読んで良かったコンテンツの一部を紹介します。

Vibe coding時代に抑えておきたい5つのセキュリティリスク

AIアシスタントがコード生成を主導するVibe codingスタイルの開発手法が注目されています。筆者も幾つかのアプリをVibe codingで作成していますが、生成結果を無条件に実行するのは危険だと感じており、注意して使うようにしています。本記事では、AI主導開発環境において見過ごされがちな5つのセキュリティリスクを具体例とともに整理しています。

例えば、AIによって生成されたコードに秘密鍵やAPIキーが埋め込まれてしまう可能性、プロンプトや補完の流れを悪用したプロンプトインジェクションによる挙動の逸脱、依存ライブラリの脆弱性やサプライチェーンリスク、入力値のバリデーション不備、ログや例外処理の抜けによる情報漏えい、「AIに任せた結果の責任は誰が負うのか」という倫理的課題などが挙げられています。

これらのリスクに対して、プロンプト設計の工夫、ガードレールの導入、静的解析や二重チェックといった対策が解説されており、AIと人間の責任分担をどう設計すべきかを考える良い材料になります。

筆者はこれらに対して、プロンプトの明示的な制約、コード生成後の静的解析とレビュー体制、さらには人間側のリテラシー教育の重要性を挙げ、AIと共創するための安全な指針を提示。AIの力を開発現場に生かしつつ、セキュリティを犠牲にしないための意識と実践を促す、今の潮流を捉えた記事といえるでしょう。

「ぷまソフト」が送信していたデータ及び今後の対応について

VRプラットフォーム向けに配布されたツール「ぷまソフト」が、利用規約に抵触するだけでなくセキュリティ的にも怪しい挙動を行っていたことから、大きな議論となりました。その問題のソフトの作者であるねむねむねむり氏が、ぷまソフトが配布期間中にどのようなデータを取得・送信していたか、そして今後の対応方針を詳細に説明している記事です。

技術的な説明では、ぷまソフトがサーバーへ送信していたデータを列挙しています。主な送信項目は(1)初回起動時に生成されるランダムな16進文字列のclientID、(2)BOOTHダウンロードリンクの末尾7桁、(3)ZIP内のUnitypackageの位置・ハッシュやPrefab名称などを含む「対応衣装データ」、(4)ソフトのバージョン、(5)エラーログとBOOTHニックネーム──という構成です。

これらは開発者側の説明では個人情報やログイン情報を含まない設計だったとされますが、ローカルに多数のファイル名・サムネイル・GUID等を保存しており、ユーザーからは不安に映る挙動だったと述べられています。

記事はまた、ウィンドウを閉じても機能が動作し続ける常駐仕様、自動アップデートの仕組み、一時的に導入されたハッシュ送信機能(所有証明のため)についても説明しています。作者は自身の誤認(BOOTHの利用規約や脆弱性の軽視など)を認め、透明性不足を反省するとともに、ソフトの永久配布停止、サーバーデータの削除、限定的なアンインストーラ提供、購入者対応を行う方針を表明しました。

まとめとして、本件は「機能の利便性」と「説明責任・設計の透明性」が衝突した典型例といえます。実害の報告はないとされていますが、ソフトが持つ常駐性や通信の設計は利用者にとって重大な関心事であり、今後ソフト配布やアバター周辺ツールの開発では、事前の運営確認・明確なデータ説明・最小権限設計がより一層求められるでしょう。

関連URL:「ぷまソフト」問題に見る法令遵守と技術者倫理の課題

Unityランタイムにおける任意コード実行が可能な脆弱性の技術的解説

Unityエンジンを使って構築されたゲームやアプリに、インテントハンドラの処理に起因して、任意のネイティブライブラリを読み込ませ実行できてしまう脆弱性(CVE-2025-59489)が発見されました。その脆弱性を発見者が詳細に分析した技術解説記事です。

ゲームエンジンという巨大なソフトウェア基盤で、どのようにして攻撃者が.soファイルを読み込ませ、任意のコードを実行できてしまうのか、その具体的なメカニズムを、内部構造とともに解説しています。

記事ではまず、UnityがAndroid環境で利用するインテント機構の概要を整理し、-xrsdk-pre-init-library引数の悪用によって不正ライブラリが実行される流れを再現しています。攻撃成立の条件、必要な権限、そして実際にどのような被害につながる可能性があるかを、段階的に説明しています。さらに、脆弱性がOS権限管理やSELinux設定との兼ね合いでどう挙動するのか、Unityのビルドフローにおける根本原因、修正版バージョンでの緩和策まで丁寧に検証されています。

Unityを利用する開発者にとっては、単なる「Unityの脆弱性」ではなく、「エンジンという抽象化層の裏に潜む危険」を理解するための教材ともいえる内容です。Unityを使っている開発者は安全なゲーム開発やアプリ配布を行ううえで、この記事を通じて「潜む危険」と「修正対応」の両方を押さえておくべきだと思います。

Automating Hack The Box 'Editor' with an LLM-driven n8n Agent

ペネトレーションテストに興味のある人ならほとんどの人が知っている「Hack The Box」という演習プラットフォームがあります。そこにある課題「Editor」を、LLMと自動化ツール「n8n」を連携させて解くという実験的な取り組みを詳細に紹介した記事です。AIエージェントがどこまで攻撃的タスクを自律実行できるのか、その設計思想と限界を探る実践的なドキュメントになっています。

記事は、まずn8nエージェント構成とLLMを連携させる設計方針を示し、それを用いてファイル操作、入力生成、反復的な探索などの操作を自動化する流れを具体的に記しています。注目点は、LLMの曖昧な指令解釈とn8nのアクション実行をどう橋渡しするかという設計上の工夫です。また、LLMに特有の曖昧な指令解釈問題や、権限、安全面の取り扱い、n8n側での安全装置設計など、AI×セキュリティ自動化の現実的な課題にも踏み込んでいます。

このような自動化アプローチは、ペネトレーション演習だけでなく、セキュリティ検査・日常運用の省力化にも応用できるモデルケースとなりえます。AI/自動化ツールを使った攻撃支援・運用支援を考えている方には、特に刺激と示唆に富む記事だと思います。今まで高度なプロフェッショナルのみが行えると思われていたペネトレーションテストがAIに代行される日も近いのかもしれません。

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