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地方移住って実際どうなの?メルペイ・ミラティブで働くエンジニアに聞いたメリット・デメリット

コロナ禍で地方移住を検討するエンジニアが増えている中、ファインディでは「ぶっちゃけ地方移住ってどうなの?実際移住したエンジニアにメリデメを聞いてみる」と題したイベントを開催。東京から地方に移住した上田さんと近藤さんにお話をお伺いしました。

移住して感じたことについて質問してみると、お二人ともが「移住してよかった」と回答。一方で「子どもの教育面」「コロナ禍でのコミュニティのあり方」については、考える必要があるともお話してくださいました。

本稿では、イベント中に語られた地方移住の実情についてまとめています。

パネリスト 上田拓也さん / @tenntenn
株式会社メルペイ

バックエンドエンジニアとして日々Goを書いている。Google Developer Expert (Go)。一般社団法人Gophers Japan代表。Go Conference主催者。大学時代にGoに出会い、それ以来のめり込む。人類をGopherにしたいと考え、Goの普及に取り組んでいる。複数社でGoに関する技術アドバイザーをしている。マスコットのGopherの絵を描くのも好き。

近藤宇智朗さん / @udzura
株式会社ミラティブ

福岡在住。社内SE、ECサイト、オンラインゲーム、技術基盤・データ基盤整備などを経て2022年より株式会社ミラティブに入社。インフラ・ストリーミングチーム所属。 RubyKaigi(2016、2018、2019、2021)、CloudNative Days(2019 Fukuoka/Tokyo/Osaka)などでの登壇経験あり。 またRubyKaigi 2019では福岡のローカルオーガナイザーも務めた。 一番長く書いている言語はRuby、直近書いている言語はGo。最近はWASM、eBPF、Rustなどの素振り中。好きなtraitはPartialEq 。

モデレーター 佐藤 将高 / @ma3tk ファインディ株式会社 取締役CTO 東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。 2016年6月にファインディ立上げに伴い取締役CTO就任。

コロナ禍や子どもの誕生など、生活環境の変化をきっかけに移住を決意

──お二人が地方に移住した経緯をお話しいただけますか。

上田さん:もともと江東区に住んでいました。移住を考えるようになったきっかけは、新型コロナウイルス感染症の拡大による働き方の変化です。

リモートワークとなり自宅で仕事ができるようになったのはいいものの、仕事環境を整えるのが難しかったのです。通勤する必要がなくなったことで、都会に住み続ける理由が減ったというのも理由の一つですね。私自身は宮崎県出身で東京での生活に特別な思い入れがなく、自然豊かな場所で暮らしたいという思いがありました。

そういった背景もあり、親戚が北海道に住んでいることから、思い切って苫小牧に移住したのです。移住時に転職はしておらず、北海道からフルリモートで働いています。

──コロナ禍での生活スタイルの変化が大きな理由だったのですね。近藤さんはいかがですか。

近藤さん:私は家族が増えたことをきっかけに、2013年に福岡県に移住しました。候補地はいくつかあったのですが、子育てしやすい環境を求めて、妻の実家に近い福岡県に移住しました。

──実はファインディのエンジニアメンバーも半数くらい福岡県にいるんですよ。スタートアップも多いですし、福岡県にはエンジニアが集まっているような印象があります。

近藤さん:移住した理由として、福岡県はコミュニティが活発だと聞いていたため、「エンジニアらしい生活ができるのではないか」という期待もありました。

また、私は移住に合わせて転職をした形でした。移住したあとは当時所属していたGMOペパボ株式会社の福岡オフィスに勤務する形でしたね。コロナ禍で2020年からオフィス出勤をしなくなり、転職してミラティブにジョインした後もフルリモートで働いています。

住居面ではメリット大。教育に関しては地域差を感じる?地方移住の実情

──実際に移住して良かったこと、困ったことについてもお話しいただけますか。

上田さん:良かったのは、家がとても広くなったという点ですね。都内に住んでいた時は仕事部屋がリビングの隣にあり、プライベートとの線引きが難しかったのです。私がミーティングしている時は家族がテレビを見れないなど、生活の中に仕事が侵食してしまって……。

現在は一軒家を購入して仕事部屋を2階につくったため、私が仕事中であっても家族は1階でのびのびと生活できています。また、都内に住んでいた時と比べて家賃が月10万ほど下がったのは大きなメリットですね。家賃が浮いた分は貯蓄したり、家の設備に投資したりしています。

ただ、地方の方に行けばいくほど、都内と比べて不便な面があるのも事実です。メガバンクのATMはほとんどないですし、チェーン店も東京と比べると少ないです。。私の場合は車を持っているものの免許を取得しておらず、気軽に出かけられないというのも不便さを感じるところです。徒歩圏内にコンビニなどがあるため、仕事をする上では困っていませんが、遠出するには家族に送ってもらう必要があります。

──地方は車社会ですものね。とはいえ、北海道は食事の面が魅力的です。

上田さん:お肉や果物、海鮮など、なんでもありますね。車で1~2時間ほど走ったら農園もありますよ。「食」に関しては恵まれていると思います。

──現地でしか食べられないものも多いでしょうしね。近藤さんは福岡県での生活で良かったこと、困ったことはありますか?

近藤さん:私も住居面は非常に良くなったと感じています。東京都の場合は都心部に近づくほど家賃が跳ね上がりますが、福岡県ではそういったことはありません。博多や天神といった都会に近い場所であっても、家族で暮らすのに充分な広さの家が良心的な値段で借りられます。

また先述の通り、福岡県はコミュニティが活発で、さまざまな勉強会が開催されています。私自身はインフラ寄りのエンジニアですが、フロントエンドの勉強会に行くこともあります。コミュニティの境界線がなく、受け入れてくれる土台があるため、さまざまな勉強会に参加できるんですよ。

移住して困ったことは特にないのですが、子どもの教育面については東京都の方が選択肢も情報も多いように思います。学校教育の現場でICTの導入が進んでいるとはいえ、現時点では地域による教育格差があるのは否めません。

コロナ禍によって生まれたメリット・デメリット。変わりつつある地方コミュニティ

──実際に地方のコミュニティに参加してみていかがでしたか。

近藤さん:福岡県に住んでいれば、基本的な技術トピックは把握できますね。RubyやGoなど、さまざまな言語のコミュニティがあり、それぞれレベルも高い。ネットでも情報収集できますし、最新情報は問題なくキャッチアップできる環境です。

とはいえ、コアな技術のコミュニティは東京にしかないものもあります。具体的にお話しすると、私は「Kernel/VM探検隊」という勉強会に出るのが夢だったのですが、基本的には東京都のみでの開催でした。コロナ禍でオンライン開催されるようになり、最近になってようやく少しだけ話ができたのは嬉しかったですね。

──住む場所は関係なくなってきていると。北海道はどのような状況なのでしょうか。

上田さん:北海道ではGoのコミュニティが立ち上がり始めていますね。

私個人としては、北海道に移住する前から全国を飛び回ってコミュニティの立ち上げをお手伝いしていました。その経験を踏まえてお話しすると、オンライン開催が浸透したことで、勉強をする上では住む場所による格差が減ったと言えると思います。

ただ、それはメリットがある一方でデメリットもあります。というのも、コロナ禍前のコミュニティは、同じ地域に住むエンジニアとの繋がりができる場所でもありました。しかし、オンライン開催が浸透することで、そういったことは難しくなったように思います。

地方に住むエンジニアのコミュニケーション方法については、改めて考える必要があるのではないでしょうか。

──オフラインイベントをどのように開催していくのか、今後の動きを見ておく必要がありそうですね。ちなみに、地方のコミュニティを探すにはどのような方法があるのでしょうか。

近藤さん:福岡県の場合は、天神にあるEngineer Cafeと、スタートアップ支援施設のFukuoka Growth Nextを要チェックですね。その2つの動向を見ておけば、コミュニティの情報を手に入れられますよ。

フルリモート勤務では「丁寧なコミュニケーション」の心がけを

──参加者からの質問にも回答していきたいと思います。まずは「地方に住みながら東京都の会社にフルリモートで勤務する上で、困ったことや問題はありますか?」といった質問が届いています。

上田さん:私はメルペイの中でも特殊なチームに所属していて、基本的には単独で仕事を進めています。東京在住のメンバーもほぼフルリモートですし、私以外にも地方在住のエンジニアがいますので、住んでいる場所は関係ないと思っています。実際、仕事をする上で困ったことはありません。

気をつけているポイントでいうと、丁寧なコミュニケーションを心がけることですね。「言い方に気を付ける」「詳細をドキュメントで残す」など、リモートでもワークするような仕組み・文化をメンバー全員でつくっています。

──近藤さんはいかがですか。

近藤さん:上田さんと同じく、特に問題はありません。とはいえ、情報共有の面では試行錯誤しています。

ミラティブが現在どのようなことをやっているのかというと、いわゆるtimesの活用ですね。各メンバーがSlackで自由につぶやくチャンネルをつくっていて、困ったことがあればそこに投稿する。そうすると、誰かがコメントを拾ってくれるような文化ができています。

また、ミラティブは映像配信事業を行っているからか、情報共有の練度が高いのも特徴です。チャットのコメントも上手に拾ってくれますし、自身の考えを整理して相手に伝える技術が優れているメンバーが多いです。

──「時間は同期的な働き方が多いですか?それとも、非同期ですか?」「出退勤はどのように管理しているのですか?」など、働き方についての質問が多くきています。

近藤さん:ミラティブの場合は、フレックスタイム制度を導入していてコアタイムも設定されています。コアタイムがあるとはいえ、家族の都合で抜けたり、病院に行ったりといったことはできますし、非常に柔軟な働き方ができていますね。

国内で時差があるわけでもないですし、ある程度は同期的な時間があった方がコミュニケーションはスムーズに取れると思います。

私のチームでは非同期化が進んでいて使用していないのですが、ミラティブではバーチャルオフィスツールの「Gather」も導入していますよ。出退勤についてはSaaSで管理していて、ボタンを押すだけで打刻できるようになっています。

上田さん:メルペイもフレックスタイム制度を導入していますね。柔軟な働き方ができる企業が増えているなと思います。

出退勤はSlackのbotで打刻しています。会社として実際の稼働状況を把握したいというよりも、メンバーを信頼して任せてくれていますね。

──「移住前の不安はありましたか?その不安はいつ解消されましたか?」という質問も来ています。

上田さん:私は雪が不安でしたね。しかし、苫小牧市は太平洋側であまり雪が降らないため、不安はすぐに解消されました(笑)。

近藤さん:そのお話を聞いていて思ったのは、移住する際には気候も考慮した方がいいということですね。福岡県は日本海側で曇りや雨の日が多いんですよ。東京都や愛知県など、太平洋側に住んでいる人が日本海側に引っ越す場合、各土地の気候をチェックしておいた方がいいかもしれません。

支援制度を活用するのもおすすめ! 地方移住で働き方の多様性を広げる

──最後に地方移住を検討している、もしくは移住した方に向けてメッセージをお願いします。

上田さん:移住をするとなると「経験が足りないかもしれない」「新卒で地方フルリモートは難しいかも」など、若手エンジニアには色々な悩みがあると思います。しかし、エンジニアは実力主義の世界ですし、経験はあまり関係ない。また“東京しか選択肢がない”なんてことはありません。

家族がいる方の場合はじっくり検討する時間が必要だと思いますが、挑戦してみるのは決して悪いことではないと思います。

近藤さん:現在はフルリモートでの募集も多くなっていますし、コロナ禍前よりも転職はしやすくなっていますよね。

各自治体の産業振興課で地域のITコミュニティを支援する制度もありますので、そういったものを活用するのもおすすめです。コミュニティが少ない地域であれば、勉強会を自ら開催するのもいいかもしれませんね。コロナ禍前の福岡県ではノンジャンルの飲み会なども頻繁にありましたよ。私はそういった場に参加することで、知人が増えるだけでなく、自分自身の技術に対する幅を広げることができました。

福岡県に引っ越してから9年ほど経ち、色々な経験をしてきていますので、移住を検討している方はぜひ一度お話ししましょう!

──コロナ禍でエンジニアの働き方が広がる中で、地方移住は大きなトピックだと思います。移住に興味のある方は各自治体の制度などをチェックしてみるのも良さそうですね。上田さん、近藤さん、本日はお話をお聞かせいただきありがとうございました!