ファインディでは、8/25(火)に「子育てエンジニア大集合!育児と開発ってどう両立してる?」と題したイベントを開催。子育てをしながら現役エンジニアとして活躍する鳥井さんと江部さんをお招きしました。
どのように学習しているのか質問したところ、江部さんは「朝と夜に学習している」と回答。一方で、鳥井さんは「業務時間内にインプットしている」とお話しされました。
方法は違うものの学習を続けているお二人に、子育てと開発を両立するコツや仕事に対する考え方についてお伺いしました。
■パネリスト
鳥井 雪さん/@yotii23
株式会社万葉
二児の母/ Webプログラマー/ 翻訳家
十数年くらいずっと現役Webプログラマー。二児の母。
翻訳書にレシュマ・サウジャニ著『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング 』(日経BP社)、リンダ・リウカス著『ルビィのぼうけん』シリーズ(翔泳社)、デイブ・トーマス著『プログラミングElixir』(オーム社、笹田耕一と共訳)など。『ルビィのぼうけん』ワークショップ展開や、Rails Girls Tokyoコーチおよびオーガナイザー、プログラミング初学者のためのオンライン講座講師等、女性や初学者のための活動経験多数。
江部 隼矢さん/@junyaebe
アソビュー株式会社
3児の父/CTO/大学院生
取締役・上級執行役員CTO
豪・スインバーン工科大学情報技術学科卒。2008年フューチャーアーキテクト株式会社入社。大手企業向け案件を中心に、サービス・技術共に多様な分野での開発を経験。2012年4月、カタリズム株式会社(現:アソビュー株式会社)参画。取締役CTOに就任。 休日は料理、釣り、ドライブなど。
2人目から変わる?子育てルーティン
──1日の仕事の流れや子育てのルーティンはありますか?
鳥井さん:ルーティンだらけですね。朝は子供を起こして登園準備をして送り出して、仕事を終えたらお迎えをしてご飯を食べさせて歯を磨いてお風呂にいれて、寝かしつけの時には本を読んで……といった流れです(笑)。
江部さん:私の場合、朝8~9時の間に幼稚園の送迎をして、余裕がある日は夜も子どもたちを見るようにしています。夜については、夕食を食べさせてから寝かしつけるまで。ピークタイムをいかに乗り切るか、といった部分が私のルーティンですね。20時に子どもを寝かしつけたあと、仕事したり勉強したりしています。
子育ては決まった時間に同じことが起こるので、予測を立てやすい面もあるのですが、ハプニングやイレギュラーも頻発します。最近は、子どもが習い事を始めたので、日によってスケジュールが大きく異なるようになりました。
──イレギュラーというと、例えば子どもが体調を崩すこともありますよね。そのような時はどうやって対応されているのですか?
鳥井さん:夫と話し合い、どちらかが休むようにしています。リモートワークしているとはいえ、子どもを見ながら仕事をするのは難しいですからね。体調が1日で戻らない場合は、順番で休むこともあります。
江部さん:我が家は妻が専業主婦をしていて、基本的には彼女が対応してくれています。ただ、3人目や2人目を妊娠していた時に子どもが体調を崩した場合は、私が対応していました。
──なるほど。子どもが増えると、子育ての方法が変わってくるのですね。
江部さん:子どもが3人になると、いい意味で“適当に”できるようになったなと感じています。
鳥井さん:私は1人目のときは何もわからない状態で、“とりあえず一生懸命”やっていました。2人目になると加減がわかるようになってきて、楽になった部分もあります。
ただ、同時に2人の子どもを育てることになるので、ペース配分を考えるのは大変でしたね。産まれたばかりの2人目をみている時に、1人目のカットインが発生した際の“良い対処法”は、未だにわかりません(笑)。その場で「どちらの優先度が高いのか」「この訴えを無視することで何が起こるのか」といったことを考えながら対応しています。
会社の制度や便利家電を活用し、子育て・仕事を両立
──子育てが始まってから、業務の進め方で変わった点や、工夫しているところがあれば教えていただけますか。
江部さん:業務時間内に仕事を終わらせようと、強く意識するようになりました。面談など、就業時間後の稼働が発生するものもありますが、タイムマネジメントは常に意識しています。一定の作業時間が必要な場合は、ミーティングが入らないようにブロックするようにしていますね。
夕食~就寝まで、ピークタイムの子育てができるのは、フルリモート・フレックスタイムという労働環境のおかげだと思います。
──鳥井さんはいかがですか?
鳥井さん:江部さんと同じく、タイムマネジメントを意識するようになりました。保育園の送迎時間に間に合わなければ、子どもも保育園も困ってしまいます。絶対に間に合わせなければならないラインがあるんです。
夫婦ともにリモートで働いていて、柔軟に対応しやすい環境ではあるのですが、残業は一切しないようにしています。具体的には「作業状況を周囲に共有する」「間に合わなくなった際にお願いできる状況を作っておく」といった二つを意識していますね。
作業状況については、ミーティングでこまめに報告していて、コードも常に触れる状態にしています。Draft Pull RequestでGitHubに出しておくなど、工夫していますね。
──万葉もアソビューも、子育てをされている方が多いと聞きますし、環境が整っているのだろうなと思いました。
鳥井さん:そうですね。万葉は受託やSESの形で仕事をすることが主で、SESの場合は時間外で働くと超過料金になってしまうんです。そのため、時間内で業務を終わらせる習慣が根付いているように思いますね。
会社としてもワークライフバランスを大切にしていて、稼働時間は1日7時間に設定されています。創業者も子育て経験があり、周囲の理解もある環境ですので、子育てがしやすい会社だと思います。
江部さん:アソビューも子育てをしているメンバーが非常に多いですね。子どもを寝かしつける際に自分も寝て、朝4時ぐらいから活動を始めるという人もいます。
中抜けもできるので、送迎や食事の間は退席して、子どもが寝た後に業務を再開する人も珍しくありません。みんな会社の制度をうまく活用していますね。
──鳥井さんは夫婦ともにエンジニアをされていますよね。どのような家事分担をされているのですか?
鳥井さん:私が大まかに子どもの世話をしていて、食器洗いや洗濯などは夫の担当ですね。料理は私がつくっています。
──家事や子育ての負担を軽減するために工夫されていることはありますか?
鳥井さん:お掃除ロボットや自動洗濯機、食洗機、自動調理器はフル活用しています。ミールキットも便利ですよ。食材の調達や配分に悩まなくていいので、時間を捻出できます。
子育て中のインプットは「頑張りすぎない」のも一つの方法
──技術やスキルのキャッチアップ、インプットの方法についてお話いただけますか。
江部さん:子どもを幼稚園に送ったあと、始業する10時までの隙間時間にインプットすることが多いです。Slackの「techtalk」という技術に関する投稿が集まっているチャンネルやネットの情報をチェックしたり、読書したりすることもありますね。
大学院に通っているため、夜は学校の勉強をしています。その際は、カフェや24時間営業の飲食店などに行くようにしていますね。自宅だと1階は「子育て」2階は「仕事」をする場所になっているので。スイッチを切り替えるために、場所を変えています。出社した日は、帰宅する前にカフェで勉強することもありますよ。
──江部さんがどのようにして体力を維持されているのか気になります。
江部さん:体力勝負です(笑)。また、これは家族が理解してくれているからこそ、できることだと思います。パートナーとの関係を良好に保ち、かつ体力を維持できなければ成り立たせるのは難しいかもしれませんね。
──鳥井さんのお話もお聞かせいただけますか。
鳥井さん:私は業務時間内にインプットするようにしています。読書会や勉強会など、社内で開催されているものは、業務時間内に参加していいルールがあるんです。社内ハッカソンで知見を共有したり、情報をキャッチアップしたりすることもありますね。
また、会社が推奨している技術は業務時間内に勉強していいと言われているので、午前中に1時間ほど学びの時間をとることもあります。
──ハッカソンなどがあると、勉強する意欲が湧いてきますよね。
鳥井さん:ええ。それ以外だと、副業をするのもオススメですね。私は翻訳のほかに、出版される前段階の本を確認する翻訳レビューも行っています。
最近は小学高学年向けにプログラミングの考え方の入門書も書いていて、原稿を書くために5時半に起きて執筆することもあります。
──朝早いですね!お二人のように勉強や副業を続けるコツがあればお教えいただきたいです。
江部さん:続けるコツというより、あえて“頑張りすぎない”のも、一つの考え方だと思います。実際に、アソビューの中には「今は子育て期間だ」と割り切って、インプットの優先順位を下げている人もいますね。
鳥井さん:子育ては20年ほど続くものですし、無理はしないのが一番ですよね。私も5時半に起きて執筆するとお話ししましたが、毎日しているわけではありません。できなくても後悔はしない。「起きられない時は仕方ない」と割り切るようにしています。
大事なのは、続けられるかどうかだと思います。「これは子どもが大きくなるまで続けられることなのか?」と自問自答してみるのもいいかもしれませんね。
──お二人は精力的に活動されているイメージがありますが「疲れてしまって今日はもう何もしたくない」なんて日もあるのですか?
江部さん:疲れた時は何もせず、子どもを寝かしつけたあとにお酒を飲むなど、自分のための時間を確保するようにしています。私は食器洗いや洗濯を担当しているのですが、「明日にしよう」となることもしょっちゅうですよ(笑)。
鳥井さん:私は「睡眠」が大切だと考えていて、疲れたら寝るように心がけています。
──お二人の睡眠時間はどれくらいなのでしょうか?
鳥井さん:21時に子どもの寝かしつけを始めて、22時ぐらいに自分も一緒に寝ていることがありますね。5時半起きだとしても7時間半は寝ている計算ですので、睡眠時間はしっかり確保している方だと思います。
江部さん:私も睡眠時間はある程度確保できていますね。
──そういえば、江部さんはお子さんを20時に寝かしつけるとお話しされていましたよね。何かコツがあるのですか?
江部さん:睡眠時間が長い方が脳に良いらしくて。昔から「20時に就寝、6時に起床」の生活を続けているので、コツは特にないかもしれません。とはいえ、20時に必ず寝るわけではなく、22時くらいまで起きていることもありますけどね。
子どもとの向き合い方は人それぞれ。子育てを通して、学びを得る
──子育てをする上で「大切にしていること」について、お話しいただけますか。
鳥井さん:先述した通り「〇〇しなければならない」など、自分を追い詰めてしまうような考え方はしないように気をつけています。これまでの経験上、自分に厳しくすると、子どもに対しても怒りっぽくなってしまうと思っていて。
というのも、2人目が生まれてから、1人目に対して怒ってしまうことが増えたなと思った瞬間があったのです。そういった経験から、できる限り自分に余裕のある状況を確保しようと意識するようになりましたね。
江部さん:子どもとの向き合い方は人それぞれですよね。私の場合は興味を持ったことは何でも挑戦させるようにしていて、現在上の2人は三つの習い事をしています。
「自分が悪い時は素直に謝る」「子どもの話を対等な目線で聞く」「諭すときは必ず理由を説明する」といったことも心がけていますね。子どもとはいえ、口が達者で言い返してくることも多いので、ついカッとなってしまうこともありますが……。できる限り、冷静さを保てるようにしているつもりです。
鳥井さん:子どもは真正面からぶつかってくるので、こちらも突発的に言い返してしまう時がありますよね。
江部さん:子どもと喧嘩した後に「俺は何をやってるんだろう……」と思うことも珍しくないです。
鳥井さん:大人しかいない空間に行くと「大人ってなんて理性的なんだろう」って感動しませんか?
江部さん:しますね。「人間の社会性ってこういうことなのか」と思います(笑)。
──「子育てあるある」なんですね(笑)。カッとなってしまう瞬間について、具体的なエピソードなどはありますか?
江部さん:ありすぎて思い出せないです(笑)。子どもの希望通りにしたのに、グズり出すとかね。
大人とのコミュニケーションでは発生しないようなハプニングが起こるので、人間力が試されているなと感じます。
鳥井さん:子は自分を映す鏡と言いますか、自分自身が成長しなくてはいけないポイントが映し出されているように感じる時もあります。子育ての中で学ぶことは多いですよね。
焦らず、無理せず。仕事も子育ても楽しもう!
──お二人のお話を聞いていると、子育てをしている方は、みんな同じような悩みを抱えているのだなと感じました。
鳥井さん:詳細はそれぞれに異なると思いますが、似たような思いを抱えている人は少なくないのではないでしょうか。
子育ては自分にとってはもちろん、社会にとっても大事なことですし、その誇りを持って日々を大切に過ごしていきたいですね。
江部さん:大変なこともありますが、個人的には楽しいことの方が圧倒的に多いですね。
「周囲と比べて技術のキャッチアップができていない」と焦ることもあるかもしれませんが、仕事を通して充分インプットはできていると思います。頑張りすぎず、自分のペースでやっていきたいですね。
鳥井さん:私は子育ても仕事の一つだと考えてます。とはいえ、体は一つしかないですし、2倍働くなんて無理ですよね。 「2倍は働けない」ということを前提に、自分ができる枠の精一杯を出し切るという感覚で働いています。
子育てをすることで、自分の強み・弱みの解像度も上がりますし、そういった部分は仕事にも活かせるはず。子育てを楽しみながら、仕事もこなしていきましょう!