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シリコンバレーで働くエンジニアが語る! 海外での働き方やキャリアの実情とは【イベントレポート後編】

2021年7月13日(火)、ファインディ株式会社が主催するオンラインイベント「シリコンバレーで働くエンジニアのキャリア論〜川邉さん@Facebookと今井さん@ChompCTO(元メルカリUS)が語る〜」が開催されました。

シリコンバレーといえば、 Google や Apple 、 Facebook などの巨大IT企業をはじめ、スタートアップがひしめき合い、世界中の優秀なエンジニアが集まっているIT企業の聖地として知られています。

現地のリアルな情報を得るためにも、シリコンバレーで働く川邉さん、今井さんのお二人に登壇していただき、現地でどのようにしてキャリアを形成してきたのか、海外で働くために何が必要なのか語っていただきました。

本記事では後編と題し、パネルディスカッション最後のテーマとQAコーナーでお話いただいた内容についてお届けします。海外で働くことに興味があるエンジニアは必見です!

前編はこちらから

パネリスト

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川邉 雄介さん / Facebook [@ykawanabe]

ベイエリアのソフトウェアエンジニア。現在はFacebookでアプリ基盤チーム所属。リクルートテクノロジーズ、Gunosyなどを経て、カリフォルニアに移住。 著書に「よくわかるAuto Layout」、「iOS 11 Programming」など。

Today I Learnedポッドキャスト: https://anchor.fm/todayilearnedfm

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今井 智章さん / Chomp, inc. CTO [@tomoaki_imai]

日本IBM, 株式会社メルカリを経てMercari USに転籍し、2016年からカリフォルニア州ベイエリアに移住。Chomp, inc.に2018年にジョインし、2020年7月より現職に就任後、レストラン向けのファンコミュニティサービスの開発や組織マネジメントをリードしている。

モデレーター

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山田 裕一朗 / ファインディ株式会社 CEO [@yuichiro826]

同志社大学経済学部卒業後、三菱重工業、ボストン コンサルティング グループを経て2010年、創業期のレアジョブ入社。 レアジョブでは執行役員として人事、マーケティング、ブラジル事業、三井物産との資本業務提携等を担当。 その後、ファインディ株式会社を創業。求人票の解析とアルゴリズムづくりが趣味。

技術を極めて次のステップへ。日本人のプレゼンスを上げるべく、新たなステージに挑む

──ディスカッションテーマの最後は「今後のキャリアの方向性は?」です。まずは川邉さんからお伺いしてもよろしいですか?

川邉さん: 今後のことはあまり考えていなくて、面白そうな技術的挑戦を続けていけるのであれば、ソフトエンジニアリングでなくてもいいかなと思っています。まずは今のスキルをもっと極めていきたいので、インディビジュアルコントリビューターとして次のステップに行くことが向こう1年の目標ですね。あとは技術的なアウトプットをどんどん出していくことと、人を巻き込みながら自分の作ったプロジェクトを動かして、ビジネスに関わっていきたいと考えています。

──今井さんはまさにキャリアの転換点に立たれているとお伺いしたんですが、いかがですか?

今井さん: そうなんです。実は7月いっぱいでChomp, inc. が解散することになったので、今後は起業についても検討しています。ベイエリアにいる日本人エンジニアで起業しているケースとして、 Treasure Data の太田さんや、Launchableの川口さんなど有名な方もいるものの、数としては少ないんですよね。

そもそもこのエリアは、中国やインド出身のエンジニアがとても多く、彼らは独自のコミュニティを作って、その中でいろいろなことをやっているのです。例えばビザの取得についても、日本人がビザを取るのはとても大変ですが、中国人のエンジニアは4~10社くらいの中国系企業に応募して、その中からビザが取れたところで働くというアプローチをとっている。それは彼らのコミュニティが大きいからできることだと思っていて、日本人はまだまだ海外での存在感が薄いというか、地位が低い。

日本人のプレゼンスを上げるためにも、自分が切り込み隊長としていろいろやってみて、それによって日本人の海外進出のハードルが下がるといいなと。もっとたくさんの人が海外に出て、世界中に日本人のコミュニティができたらいいなと思っています。

──素晴らしいですね! 現段階で何か決まっていることはあるのですか?

今井さん: 今はいろいろなドメインを見ていて、ゼロベースで考えています。今の会社のCEOと一緒にやっていこうという話をしていて、自分はどういう立場でもいいかなと思っています。

現在のビザだとアメリカでの転職もできたのでそれも考えたのですが、自分が行動することでもしかしたらもっと違ったインパクトを世の中に与えられるかもしれないと思い、もう一回やってみることにしました。

──会社の解散というハードシングスをリアルタイムで経験されている中で、もう一回新しいことに挑戦しにいくエネルギーがすごいですね。

今井さん: けっこう大変ですね……。山田さんもご存知だと思うのですが、本当にいろいろなことが起こるので、大変なことが多いのですが挑戦したいなと。楽しい面もありますし、こういうチャンスはそんなに多くないと思うんですよ。

例えば自分が大企業にいて、「起業しようよ」と誘われたときに同じような決断ができるかというと、それはわからない。海外にいるからこそという話ではないのかもしれませんが、この状況だからこそできることだと考えています。

──家族にできると納得してもらうのも大変だし、そもそも挑戦する時には恐怖がつきものですよね。それを異国の地でやるのはすごいことだと思いますし、尊敬します。日本人が日本でやるよりはるかに大変でしょうし。

今井さん: ありがとうございます。

川邉さん: かっこいいですね。

今井さん: でもまだ何もやっていないので(笑)。今後はちゃんと発信していこうかなと思っています。どういう失敗をしたかとか、うまくいったかとか。

アメリカに限らずいろいろな働き方のチャンスがあると思うので、チャンスを常に探すというのは大事だと思います。変化があるときは必ずチャンスがあると思っているので、変化がきていると思ったら迷わずそれに乗り込むというのは重要だと思います。

海外でエンジニアとして働くために必要なスキルや経験とは?

──ここからは参加者のみなさんから届いている質問に答えていただきたいと思います。「英語力と開発力だとどちらを先に高めた方が良いですか?」という質問がきているのですが、いかがですか?

今井さん: どちらかではなく、どちらも鍛えておいた方がいいです。日本人はおそらく基本的な読み書きには強いですし、DeepLや翻訳サービスもたくさんあるので、読み書きはそちらにまかせてしまって、とにかく英語で会話をできるようにすることが大切。英会話を学んでおくのがおすすめです。

── TOEIC か TOEFL ではなく、英会話なんですね。

今井さん: 英語力でいうと、TOEICよりもアメリカにいる5歳児の方がよっぽどスキルが高いですし、文法的なことを学ぶよりも英会話に慣れることが重要です。

川邉さん: 僕はアメリカの小学生の教科書を読んで勉強していましたよ。あとは英会話をやるなら、まずは“音”として聞いて発音を真似してから意味を勉強するという方法もありました。音がわかるようになると、意味がわからなくても「何の単語を言っているのか」が聞き取れるようになるので、英会話力向上に繋がりやすいと思います。

──続いてビザについて「どうやったら取りやすいですか?」「EUで働いていたから取りやすかったのですか?」といった質問がきています。川邉さんの場合はドイツでの経験がビザ取得に有利だったのでしょうか?

川邉さん: ドイツに行く前に H-1B に申し込んでいるはずなので、EU で働いていたことは全く関係ないですね。 就労するためのビザが取得しやすくなる方法でいうと、アメリカの学位を取得するなどさまざまな方法がありますが、働き先を見つけることが一番有効です。

あと、僕はアメリカにいますが、そのほかにもヨーロッパ圏やカナダなど、楽しい国がいっぱいあるんですよ。ベルリンもヨーロッパの中ではスタートアップハブとして機能しているし、パリもそうですし、イスラエルもアメリカで多くの会社が買収されています。ソフトエンジニアリング的には面白い国がたくさんあるので、いろんな国について調べてみると楽しいと思います。

──オランダも行きやすいと聞きますしね。次は「 PM になるよりも専門性を突き詰めた方がいいですか?」という質問もきています。日本にいる間に専門性を身につけるか、もしくはマネジメントも少し経験しておいた方がいいのでしょうか?

今井さん: 最初のステップとしては絶対に専門性で攻めた方がいいですね。マネジメントするにもやはり現地のことをわかっていないとできないと思うんですよ。正直に言うと、マネジメントについては後からいくらでも経験できるので、専門性を高めておいた方がいいと思います。そうしたら向こうからお呼びがかかるかもしれませんし、実際に専門性を極めて海外からスカウトを受けた人は何人もいます。

川邉さん: 僕はそれに関して、 海外で PM をしたいなら 日本でも PM をした方がいいと思うんです。あくまでサービスが作られている場所(国)が変わるだけなので、将来的に PM として働きたいなら、日本で PM になって専門性を高めてから海外にいく方がいいんじゃないかな。

──ビジネスサイド出身で PM をやっている人で、 PM として海外に行くという人もいますよね。「情報系の学位を持っていることは必須ですか?」という質問も来ていますが、お二人とも情報系の学位をお持ちなんでしょうか?

今井さん: 私は持っています。

川邉さん: 僕は持っていません。ただ、シミュレーションをやっていたので、技術的なバックグラウンドがあると説明して、情報系との関連性についてちゃんと証明できるようにしていました。

質問への回答としては、アメリカに関しては H-1Bビザを取得するなら情報系じゃないと不利だと聞いたことはあります。でも、他の国では情報系の学位がないと不利という話は聞いたことがないと思いますね。

──なるほど。ありがとうございます。次に「アメリカと日本でエンジニアが共感するポイントや理想の会社像は違うのでしょうか?」という質問も来ていますが、こちらはいかがですか?

今井さん: アメリカで限定するのであれば、エクイティはとても大事ですね。どれだけのストックオプションがもらえるかなど、そういった条件をちゃんと提示して求職者のモチベーションをどう上げるかが大事だと思います。日本にいた時よりも、アメリカで働いている人の方が、その辺は意識しているなと思いますね。

──確かに、ファイナンス系の人からはそういったところも聞かれますが、エンジニアから聞かれることはまだまだ少ないですね。

今井さん: 私も日本にいたときは全く知らなかったのです。アメリカで税金回りの苦労も少なくなかったので、こちらに来てから知識がついてきました。

川邉さん: 僕も日本にいる時はストックオプションなんて言葉すら知らなかったです。アメリカだとサインオン・ボーナス、給料、ストックオプションの3つを組み合わせて合計金額が決まるのですが、面接後に交渉しなければならないのですよ。サポートしてくれるサービスもあるので、必ずしも自分で交渉する必要があるというわけではないですが。

──一部例外はありますが、日本では求職者自身で給与交渉すること自体がまだ珍しい印象があるので、そこは大きな違いの一つですね。最後に英語力に関して「多国籍チームだと、アクセントが違うので会話するのが大変じゃないですか?」という質問がきています。こちらはいかがでしょう?

今井さん: うちは多国籍チームだったのですが、基本的にゆっくり話す感じではあったような気がします。日本人もそうですが、それぞれの国やエリアによってどうしても癖はあるので、アクセントについては慣れていくしかないと思います。

川邉さん: あと、アクセントよりも文化的なコンテキストを理解する方が難しいかもしれませんね。そもそもの考え方や価値観も違いますし、お互いの文化についてもある程度理解していないと、会話を成立させるのは難しいです。

興味があるならまずは飛び込んでみる! 挑戦するかどうか、決めるのは自分自身

──それでは時間も迫ってきたので、海外で働きたい人へのメッセージをいただいて、最後の締めに入っていきたいと思います。まずは今井さんから一言いただけますか。

今井さん: 海外で働くと日本にいるよりもいろいろな環境の人と交流できるので、すごく刺激的で楽しいことが多いと思います。合う合わないはもちろんありますが、もしチャンスがあるのならショートタイムで働いてみるとか、あるいは今はリモートで採用している企業もたくさんあるので、そういうところに応募してみるのもいいんじゃないかなと。

面接するだけでも雰囲気がわかりますし、カジュアルに受けてもいいと思います。面接だけでも受けてみるという人は珍しくないですし、私もそのような形で何社か受けたことがあります。

──ありがとうございます。川邉さんもお願いいたします。

川邉さん: 海外で働きたい人は「Today I Learnedポッドキャスト」をサブスクライブしていただけると、とてもいいと思います(笑)。

真面目にお伝えすると、海外で働くことは一つのオプションです。日本語しか話せないと日本の会社でしか働けませんが、英語が話せるようになると世界中のどんな会社でも働けるようになる。そう考えるととても可能性が広がると思うのですね。

金銭的にはもちろん、生活スタイルの幅が広がるかもしれない。そういうものへの憧れや、やってみたいという気持ちがあるなら、まずは飛び込んでみるのがよいと思います。今は Twitter などさまざまなサービスがあるので挑戦しやすいです。実際に僕は20代の時に、知らない人に DM を送って一緒にご飯を食べに行き、そこで多くのことを学びました。みなさんもいろいろな人と触れ合って、いろいろなことにチャレンジしてみて欲しいですね。

──海外にチャレンジする機会を作るか作らないかは自分次第ではあると思うのですが、なかなか一歩を踏み出すのが難しい中で、実際に海外で活躍されているお二人の話をお伺いして、一つの方向性みたいなところを学べたのかなと思います。

本日は貴重なお話をありがとうございました!