2020年1月30日、都内・大崎ブライトコアホールにて、ファインディ株式会社・品川区・Gotanda Valleyが主催するイベント「エンジニア副業Night~キャリアと年収アップのリアル~」が開催されました。
ここ数年、エンジニアの副業が広がりつつありますが、その実態が語られる機会はさほど多くありません。そこで今回、お呼びしたゲストの方々に、副業エンジニアとして働く側や、副業エンジニアをマネジメントする側の立場として、その実態をさまざまな角度で語っていただきました。
本記事では、パネルディスカッションのトーク内容を中心に、イベントの模様をお届けします! なお、参加者の皆さんのツイートを「togetter」で追うことができますので、ぜひ合わせてご覧ください。
スピーカーのご紹介
羽田 健太郎(ジャンボ)/株式会社レアジョブ (@jumboOrNot)
学生時代よりRettyやgloopsでエンジニアとして働き、新卒でyahooに入社。2016年に株式会社レアジョブに入社し、ただ1人のアプリエンジニアとしてネイティブアプリ事業を立ち上げる。現在は、技術本部副部長 兼 デザインチームリーダーを務めており、UX・デザインからアプリケーション開発まで広く責任者を担当している。副業エンジニアとして開業しており、Firebase/Flutter/Electron/Nuxtなどの領域でプログラマ・技術アドバイザとしてスタートアップの立ち上げをサポートしている。
須藤 槙(akatsuki)/株式会社Timers (@akatsuki174)
株式会社Timers所属。10月の転職を境に、約4年間携わってきたiOSからAndroidに主担当分野を変更。現在副業ではU30の、エンジニアになりたい学生/社会人を対象にしたメンタリング業を行っている。
大原 和人/ファインディ株式会社 (@kaacun)
2012年、株式会社オールアバウトに新卒エンジニア1期生として入社。サーバのクラウド移行やDevOpsの推進、サイトリニューアルの開発などを担当。その傍ら、週末に3社ほどのスタートアップの開発や立ち上げの手伝いを行う。2017年11月よりFindyに正社員1人目として参画。プロダクトマネージャー兼エンジニアマネージャーとして、副業エンジニアを巻き込んだプロダクト開発を推進。
桑原 宜昭/フリーランス エンジニア (@bouzjp)
IAMASメディア表現研究卒。実家が寺であることもあり、IAMASでは仏教xメディアテクノロジーをテーマに研究を行う。 卒業後は中小企業の新事業開発室でセールスエンジニアとして自社の基礎技術を用いたセールスを行う。 その後にWEB Developerに転進し、フルスタックエンジニアとしてスタートアップを2社経験した後に独立。 現在はフリーランス兼、寺院の副住職、高校の講師も務める一方、Findyでのイベントプランニングや記事のライティングも行っている。
パネルディスカッション
副業を始めたきっかけは、”知り合い経由”
「初めての副業はどのように始めましたか?」という質問から、パネルディスカッションがスタート。3人の回答に共通していたのは、最初は知り合い経由で副業を始めたというエピソードでした。
大原:
新卒で入った会社でインフラの部署に配属されたんですけど、自分はどうしても開発がやりたくて。そんな時、地元の先輩が起業して「サービス開発をやりたいけど、頼める人がいない」と言っていたんです。それで、その先輩の事務所に週末泊まり込みで開発したのが、最初の副業です。
羽田:
4年前くらいにネイティブアプリのエンジニアをしていて、その時に知り合いから「今はPHPでAPIを動かしているんだけど、作り直したい」という話をもらいました。その時に声を掛けていた方が僕以外、Goのエンジニアだったので、Goで作り直そうという話でした。
ただ、副業をしてお金まわりがややこしくなるのが嫌だったので、「1エンドポイントあたり、焼肉おごってください」みたいな感じで(笑)、焼肉を対価に仕事をしたのが最初です。
須藤:
知り合いの人事系の企業の社長さんが、Facebookに「副業エンジニアを募集したい企業と、副業したいエンジニアを繋げます」と投稿していたんですね。それまでは副業を考えたことはなかったんですけど、やってみるのも経験かなと思い、声を掛けて案件を取ったのが最初です。
副業によって得た経験で、キャリアの幅が広まる
続いての質問は、「副業によってキャリア・お金はどのように変わりましたか?」。これに対して挙がったのは、副業によって本業では得られない経験ができる、そしてそれによって自身のキャリアの幅が広がるという回答でした。また、まずはお金よりも経験を重視していたという意識も、3人に共通していたようです。
大原:
本業ではインフラエンジニアをやっていたので、副業でRailsを勉強できたことは、将来的に開発エンジニアになっていく上でありがたかったですね。他にもいくつか副業をして、例えば技術顧問がいるスタートアップで、厳しくコードレビューしてもらったり、熟練者の設計思想やスクラム開発の回し方を学んだり。そういった経験はとても大きかったです。
お金の面に関しては、どちらかというと経験重視で、そこまで貰わずに引き受けていました。当時は、時間あたり2000円くらい。もし今やるとしたら、内容によりますが3000~4000円くらいでしょうか。
羽田:
僕は副業によって、ポートフォリオが広まったと思います。ネイティブアプリのエンジニアは、次のキャリアとしてプロダクトオーナーを目指すのか、そのままネイティブアプリのエンジニアとしてAPIの方にいくのか悩むことが多いのですが、そういった面でいろんな規模の企業で幅広く経験できたことは、非常によかったです。
お金の面で言うと、最初は単価も安くて、なんとなく時間あたり2000~3000円くらいで始めたんですが、途中から修正していきました。この3年くらいで、最終的には中央値を5000円くらいにして、得意な内容かどうかで判断をしています。
それに加えて、時間単価だけで計るのが難しい面もあるので、相談料を設定しています。イニシャルで相談料として3万円くらいいただいて、いつでも質問を投げていいですよという形ですね。
須藤:
私が本格的に副業を始めたのはここ1年くらいで、キャリアに関しては幅が広がったという感覚はあります。現在やっているメンタリング業では、プログラミングを始めた人が躓くポイントを再認識したり。本業で今はAndroidをやっていますが、副業では基本的にiOSを見ていて、iOSを忘れないようにという面で役立っています。
お金に関しては、メンタリング業を始めた頃は時給2000円くらいでした。半年くらい経って、雇用者全員の時給が上がったので、今は時給4000円くらいです。
副業エンジニアを活用することで、組織はどう変わった?
続いては、副業エンジニアをマネジメントする側の目線に移り、「副業エンジニアを活用することで、組織はどのように変わりましたか?」という質問へ。これについては、実際にマネジメントする側の立場であるFindy大原さんが、「技術の幅が広がった」と答えます。
大原:
元々の背景として、初期のスタートアップでなかなか売上も立たない状況で、いきなりフルタイムで来てくれるエンジニアを探すのが難しいという事情がありました。でも、面談をしていると「副業で手伝うならいいですよ」という反応が結構あって。しかも、非常にハイスキルの方がそう言ってくださるんですね。
そういう方に副業としてお願いして、一緒に開発してきたという経緯があります。それで組織がどのように変わったかと言うと、技術の幅がすごく広がったなと。それぞれに本業を持っている人たちが集まることで、「本業ではこうやってる」と幅広い知見が集まるので、結果としてベストプラクティスに近づいていく感覚があります。
あとは、僕自身が追いきれていない箇所があっても、テックリードクラスの人が副業で入ってくれているので、技術選定やアーキテクチャー、コードレビューなどで、悩んだ時に相談できるのは大きいですね。
組織サイドから見て、副業で関わって欲しい人材とは
組織のマネジメント側から見た場合のトピックスとして、もう1つ投げかけられたのは「どんな人材に副業で関わって欲しいですか?」という質問。これに対して、大原さんは自発的に仕事を進められるエンジニア、羽田さんは自身の能力をパッケージ化できるエンジニアが求められていると語ります。
大原:
例えば、技術面でも仕様面でも、「これどうしたらいいですか?」という方だとちょっと困ってしまう。「こうしておいたんですけど、どうですか?」みたいに自発的に進めてくださると、スムーズに進むというのはありますね。
あとは、プルリクエストの出し方1つにも、結構表れるなと思っていて。例えば、週末に与えられたタスクが終わらなかったとしても、ワークインプログレスでとりあえずプルリクを上げておくとか。あとは、気になったことや不安な点を、プルリクエストのコメントで残しておいてくれるとか。そういう工夫があるだけで、よりマージしやすく、サイクルも早くなると思います。
羽田:
自分をパッケージ化するのが苦手な人は、向いていないかなと感じます。QiitaやGitHub、WantedlyやLinkedInでもいいんですけど、そういうところに「自分はこれができます」と明確に説明できていると良いかなと。
自分も管理者として発注側にいることがありますが、週2日しかいなくてコミュニケーションコストのかかる人を雇うにあたって、「こういうメリットがあるからです」と説明できないと、我々も予算が取れない。そういう時にしっかり「これができます」と言える方だと依頼をしやすいと思います。
副業の大変さとは? 両立のためには工夫が必要
副業をするにあたって、メリットもあればデメリットもあるもの。「副業の大変さ、泥臭さ、苦労話をしてください」というテーマに対し、羽田さんは本業と副業を両立させていくにあたって、仕事の受け方や状況の伝え方に工夫が必要であると語ります。
羽田:
大変なところは多くあるんですけど、週5で社員として働いて週2で副業をするので、やっぱり精神的に疲れてしまう時があったりして。それをパフォーマンスに出さないための工夫は必要ですね。
例えば、週末に投げたレビューの結果が良くなかった時、本業が忙しいと5日間のリードタイムがかかってしまう。そうすると、お互いに疲弊してしまうので、初めからそうならないような作業を発注してもらうとか。
本業と両立させていく上で、どうしても手一杯になってしまう状況というのは、絶対に起きます。社員の方と比べれば信頼が崩れやすい立場ですから、何かある時は「この時期は本業が忙しくなるので」とか、しっかりと事前に伝えていくことが大事だと考えています。
副業だからこそ、触れられる技術や仕事がある
大変さや苦労もある一方で、副業ならではの面白さも。「副業の楽しさ、素晴らしさを語ってください」というテーマに関しては、本業では触れられない技術や仕事ができることの面白さが挙げられました。
大原:
副業では、コードを書くことに集中できるのが楽しいですね。本業だと、ミーティングだとか諸々の調整だとか、いろいろ気にしながら仕事しなければなりませんが、副業では純粋にコードを書くことを味わえたというのはあります。
羽田:
僕が今お手伝いしているスタートアップでは、FlutterとFirebaseで開発しているんですけど、やっぱり私が所属している会社のように、ある程度の規模になってくると、どうしても新しい技術の導入は優先度が下がることが多いんです。なので、まったく自社とは関係ない技術に触れられるというのは、単純にエンジニアとしてすごく面白いですね。
須藤:
幅が広がるので面白いと思います。若い人に対してコードレビューをするのは、本業にはない仕事なので楽しいなと。あと、最近始めようとしている副業は、エンジニアに対して採用のスカウト文を打つというものなんですけど、本業だとそういう役割は回ってきません。そういうことを副業の場を使ってできるのは、面白いなと感じています。
副業を始めるためには、やはり知識や経験が求められる?
続いての質問は、「副業を始めるために必要な知識や経験、可能と考えるボーダーラインとは?」。副業を考える人にとってハードルの高さは気になるものですが、これに関しては一概に言えず、ケースバイケースと捉えられる回答となりました。
羽田:
これを明記するのは難しいと思っています。副業エンジニアが欲しい状況になった時、基本的にはある程度の経験がないと、短時間のコミットで成果が出せないと多くの人は考えるので、やはりベテランが求められるかなと思います。
一方、そうではないケースもあって。業務経験はそんなになくても、アウトプットとしてブログを書いていたり、サンプルを公開したりしているパターン。そういう場合は、こちらとしては単価をそれほど高く設定しなくてもいい可能性があります。
そういった意味では、業務上未経験でも全然仕事は取れるかなと。実際に、僕もFirebase未経験でしたが、その両サイドにある技術の経験を強みとして携わっていますし、そういうケースもあると思います。
須藤:
技術的な面では、個人的にはそれほどボーダーラインという程のものはないように感じます。例えば、ある程度調べてそれができなかった時、「ここが詰まっていて、できません」と、話ができるコミュニケーション能力があれば、おそらく大丈夫なんじゃないかと思います。
副業をするにあたって、知っておくべき税務の知識とは
パネルディスカッションの中では、「税務に関して知っておいた方がいいことは?」という話題も挙がりました。これについては、やはり税務まわりの知識はあって損することはない、という回答に。また、税理士との契約のほか、クラウド会計ソフトの活用が勧められていました。
羽田:
税理士さんに入ってもらっていた時期もあるんですけど、その後は基本的にクラウド会計ソフトで完結しています。自分の商売のログを残しておくという意味でも、僕はクラウド会計ソフトを使うことをオススメしていますね
個人事業主として開業する場合に限りますが、経費という概念が生まれるので、資産を使って自分への投資がしやすくなるというメリットもあります。節税などについて学ぶことは悪いことではないと思いますし、メリットを最大限享受するためにも、やはりある程度は税務まわりの知識を持っている必要があるかなと思います。
確定申告に関しては、平日夜や土日の時間を使って整理しているんですが、僕はすごく心配性なので丁寧にチェックして、だいたい1~2週間くらいかけて作業しています。
魅力を感じる副業案件は、やはり本業ではできない仕事
パネルディスカッション最後の質問は、「どんな副業案件に魅力を感じますか?」。これに対しては、先ほどの副業の楽しさや素晴らしさに関するテーマでもあったように、やはり本業ではできない仕事や経験ができることが、主な答えとして挙がりました。
大原:
状況によっても変わると思いますが、技術的な面であれば新しい技術に触れるとか、技術顧問に有名な方が入っていれば、その人からコードレビューを受けられるとか。それ以外だと、プロダクトが面白くて、それをモチベーションに頑張るというケースもあると思います。
羽田:
まだ何もできていないスタートアップで、これから立ち上げていく事業に魅力を感じます。やはり大きな組織にいると、どうしても制約が生まれたりするものなので。いろんな技術を組み合わせて、コーディングするだけでなく、時にはよくわからない資料を書いたりしながら(笑)、総合力で価値を出せる場が面白いと感じます。
須藤:
本業ではできないことに魅力を感じますね。あと、本業の方である程度は満足しているので、条件面はやはりできるだけ良いところがよくて。例えば、リモートでできるだけ負担なくやれるとか、ある程度はお金も良い方がいいなとか。当たり前ではありますが、そういった条件の良さは魅力になると思います。
最後は、来場者からの質問に答えるQ&Aへ
パネルディスカッションの終わりには、イベント来場者からのQ&Aを実施。「Sli.do」を使って会場から募った質問に対し、一問一答形式でスピーカーの3人が回答していきました。
Q:副業はどうやって探していますか?
大原:
「TechCrunch」などを見て、興味のあるスタートアップを日頃から探しておいて、気になったスタートアップの人が参加するイベントの懇親会で話しかける、というのがオススメです。僕はそれで副業が決まったことがあります。
羽田:
当初は知り合い経由だけだったんですが、最近だとそれ以外にも、例えば「TIME TICKET」で買ってくれた人からその後にも繋がったり、「yenta」などのビジネスマッチングサービスで会った方に、「こういったことができますよ」と営業をかけたりだとか。あとは、勉強会で知り合ったケースもあるので、いろんな接点を作っておくのはいいと思います。
須藤:
私は最近「bosyu」を眺めていて、そこでいいなと思ったものがあれば、実際に声を掛けてみるというのはやったりしました。
Q:どの時間に副業をやっていますか?
羽田:
平日夜と週末がメインというか、それ以外にはないです。ただ、今はいろんなコワーキングスペースがありますから、作業環境はすごく工夫しています。やっぱり週7で働くって正気じゃないんですよ(笑)。疲れてしまうので、ちょっと遊び心を入れつつ、パフォーマンスを出すためにバランスを取りながら作業していますね。
Q:副業メンバーとのコミュニケーションはどのようにしていますか?
羽田:
焦点になるのが、コミュニケーションコストの単価の部分かなと思います。例えば、ミーティング1時間であればわかりやすいですが、Slackでのコミュニケーションに「これっていくらですか?」となってしまうのは、関係性として良くないかなと思っていて。
先ほどお話ししたように、ベースで相談料いくらと設定しておいて、「2~3営業日までには返しますね」みたいな。少しカジュアルな関係性にしておくのがいいかなと思いますね。
あと、やはり本業やフルタイムでのコミュニケーションよりは、うまく気を使えるといいのかなと。レビュー1つとっても、コメントが来た時にリードタイムが絶対に発生してしまうので、お互いにフラストレーションが溜まらない仕組みやルールを、こちらから提案するのも重要だと思います。
Q:本業に黙って副業しているんですか?
羽田:
僕の会社は副業OKなので。もちろん申請して、「やります」と伝えています。経営層も理解があるし、逆に副業をしているからこそ出せるバリューがあるよね、と。なので、僕は普通にオープンにやっています。
Q:本業と副業でいっぱいいっぱいの時、どうすればいいですか?
大原:
やっぱり事前に相談してもらえると、ありがたいですね。僕も週1くらいで、「最近どう?」と聞くようにしてます。それで忙しそうなら、ちょっと軽めのタスクにしようとか、事前に言ってもらえれば調整ができるので。
以上で、会場からのQ&Aは終了となりました。パネルディスカッション後には、副業にまつわるテーマでのLTを実施。並行して、イベント参加者による懇親会が行われ、賑やかな交流が行われる中、本イベントは締めくくられました。
読んでいただき、ありがとうございました! よろしければ、エンジニアの皆さまはFindyでご自身のスキル偏差値を測定してみてください。
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