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英語で苦労も、技術力は通用。海外発テック企業にフルリモートで働いて感じたギャップとは?

2020年以降、欧米のテック企業では「リモートワーク」を掲げる求人が大幅に増えています。日本に住むエンジニアのなかにはリモートで海外のテック企業で働く選択肢に関心を寄せている方も少なくないかもしれません。

2021年8月18日に開催したオンラインイベント『海外発テック企業で働くエンジニアのキャリア論』では、海外発のテック企業にフルリモートで働くFUJI GoroさんとKenta Suzukiさんが登壇。働くうえでの苦労話から求められる技術力、カルチャーギャップまで幅広く語り合いました。

この記事では当日話された内容のサマリーをお届けします。

登壇者プロフィール

FUJI Goroさん(@__gfx__) 株式会社ディー・エヌ・エー、クックパッド株式会社、株式会社ビットジャーニーでのソフトウェアエンジニア経験を得て、 2021年現在 Fastly, Inc. にリモート勤務。 インターネットとプログラミングが好きで、ツールやライブラリをOSSとして多数公開。

Kenta Suzukiさん(@suusan2go) 大手SIer、WEB系企業、フリーランスなどを経て2021年にShopifyにDeveloperとして入社。現在までフルリモートで勤務。

英語でのコミュニケーションは苦労の連続、それでも周囲の暖かいサポートがありがたかった

イベント前半では入社してからのチャレンジや苦労について語りました。二人が真っ先に挙げたのは英語でのコミュニケーション。

FUJIさん「以前からGitHubのOSSでイシューやプルリクを英語でやりとりしていましたし、読み書きはある程度できたと思っていたんです。

ただ、Slackでバーっと英語のやりとりが起きると、コンテクストを追うのが難しい。辞書的な意味はわかる単語なのに、ポジティブなのかネガティブなのか、Goなのかキャンセルなのかが判別できない。機械翻訳にかけても意味がなく、最初は何とか推測する、随時確認するなどして乗り越えました」

また、英語でのテキストコミュニケーションのみならず、Zoomなどでの口頭のコミュニケーションでも苦労があるとのことでした。

SUZUKIさん「リスニングはある程度得意だったのですが、瞬発力高く、的確に発言するのは難しい。入社してすぐ企画段階の機能に取り組むデザインスプリントにアサインされたんです。デザイナーやエンジニアが7、8人集まってホワイトボードアプリで議論するのですが、入社してから日が浅かったため、コンテクストもわからないし、英語も追いつかない。

『こういう意見を言おうか』と考えているうちに、トピックが変わっていたり、他の人がその意見を言ってしまったりする。これは非常に辛かったです。」

一方、社内のメンバーは快くサポートしてくれていると言います。周囲も必要に応じて話している内容をチャットにタイプしたり、わかりやすい言い回しで言い直すなど、快く対応してくれるそう。

FUJさんは「冷たく扱われて辛かった経験はほとんどないです。シリコンバレーの会社は英語が第一言語ではない人に慣れているのだと思います」と語り、SUZUKIさんも「自分が喋れなくて凹むのはありますが、相手が冷たくて凹むとかはないですね」と同意していました。

日本で培ってきた技術力は海外テック企業でも通用した

コミュニケーションの苦労に続いて「求められる技術力やレベル」も話題に上りました。SUZUKIさん、FUJIさんともに「日本で通用するレベルと大きく変わらないのでは」と語ります。

SUZUKIさん一概には言えませんが、個人的には、少なくともWebアプリケーションを開発するエンジニアとして働くうえで、海外のテック企業だから特殊な技能が必要とかはないように思います。日本企業で活躍できる技術力の方なら問題ないのではないでしょうか。

採用のプロセスや内容などもホワイトボードでのプログラミング面接などで、日本の企業と大きく違うとは感じませんでした」

FUJIさん「技術力で言うと日本で求められるレベルと変わらない気がします。国や地域による違いよりも、個人による違いの方が大きいのではと思いますね。

私の場合、そもそも作っているものや技術領域が変わったので、勉強なり意識改革なりは必要でした。ただ、全体的にはGitHubを使って、ビルドはJenkins、GitHub Actions、インフラ構成はChefでという感じで、聞いたことのないツールを駆使するとかはないです。

日本のウェブ業界は、シリコンバレーの言語や技術を規範として取り入れようとしていますし、それが概ねできているのかなと捉えています」

海外企業で感じたカルチャーギャップとは?

イベント後半では「海外企業で働いて感じたカルチャーギャップや発見について」語り合いました。

FUJIさんが挙げたのはCEOのメッセージです。新型コロナウィルス感染症の状況やBlack Lives Matter(黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動)などについて、CEOが全社メールを頻繁に送り、自身の考えや「不安があったら教えてほしい」と社員へ共有しているとのこと。

また、SUZUKIさんの働くShopifyでも、欧米でアジア人へのヘイトクライムが増加した際に、上司やマネージャーレベルの方がSlackで「万が一、何か辛いことがあればいつでも教えてほしい」とアジア系の社員へメッセージを送っていたそうです。

さらに、同僚のエンジニアはもちろん、リードエンジニアよりも上のポジションに女性が沢山いる環境があるのも大きな違いだと、SUZUKIさんは言います。「ジェンダーや人種などダイバーシティを掲げるだけでなく、少なからず投資をし、行動によって良くしようとする姿勢を感じる」と共有してくれました。

その他のカルチャーギャップとして、二人は「『自分の出したインパクトをちゃんと伝えてほしい』と言われること」や「出したインパクトや成果を共有すると褒め合うカルチャー」についても言及していました。

FUJIさんも、少し前に全社のエンジニアが使うツールに手を入れて改善したところ、「機能の改善や要望などのフィードバックをくれる人がいた以外に、特にフィードバックはなくても『サンキュー、役に立ったよ』とレスをくれる人もいて、嬉しかった」経験があったそうです。

チャンスがあるなら飛び込んで試してみる

イベントの最後、海外発のテック企業で働きたいエンジニアへのメッセージをお願いすると、二人とも共通して「チャンスがあれば飛び込んでみる大切さ」に触れつつ、エールを送ってくれました。

SUZUKIさん「入る前は不安もあるが飛び込んでみないとわからないことがほとんどです。日本から働けるチャンスがもしあるのなら、とりあえず試してみるのが良いのではと思います」

FUJIさん「僕自身『こんなに英語ができないのによく仕事できているな』と思うくらいです。私が入社できたのも、偶然ポジションが空いていたから。チャンスがあれば、とりあえず入ってみるのは大事なのかなと感じます」

コミュニケーション面の苦労はあれどサポートしてくれる周囲の環境があること、日本で目の前の仕事を通して技術力を高める大切さ、ダイバーシティへの取り組みや仕事のインパクトの伝え方のギャップなど、「海外発テック企業にフルリモートで働くこと」への解像度が上がる時間になったのではないでしょうか。

今後もFindyではエンジニアのキャリアや働き方に関連するイベントを開催予定です。興味のある方はぜひこちらをフォローいただけたら嬉しいです!
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また、当日はTwitterも大いに盛り上がりました、ツイートをTogetterにまとめていますので、よろしければこちらもご覧ください!
Togetter:海外発テック企業で働くエンジニアのキャリア論〜FUJI Goroさん@Fastlyとす〜さん@Shopifyが語る〜