一次面接を担当するCTOが考えていること 株式会社Facilo梅林さんに聞く“エンジニアが本来の仕事に集中するための組織論”

「優秀な人材を確保したい」「採用のミスマッチを減らしたい」

スタートアップやテクノロジー企業では、さまざまな理由でCTOが採用にコミットするケースが多く見られます。不動産仲介会社向けSaaSを企画・開発するスタートアップ、株式会社Faciloの梅林 泰孝さんも採用に積極的に関わるCTOのひとりです。

Facilo社は、2024年2月にシリーズAラウンドで12億円の資金調達を実施するなどテクノロジーへの投資を強化しています。全従業員51名中、エンジニアの数はCTOを含めて15名(2025年3月現在)。さらなる成長を見据えてエンジニアを積極採用中です。

Findy編集部では、CTOが採用にコミットする理由や、採用で重視するポイントを聞くために梅林さんにインタビューを実施。すると、Facilo社ならではのユニークな組織づくりや、梅林さんのメンバーに対する思いが見えてきました。

梅林 泰孝(@ystk_u
株式会社Facilo 取締役 CTO Googleに入社し検索結果の品質向上チームに参画。サイバーエージェントに転職後、「AirTrack」の開発責任者として開発およびプロダクトのKPIやOKRの設計などの戦略にも携わり、国内最大規模の位置情報プラットフォームに成長させる。その後、SmartNewsに参画し、TechLeadとしてシリコンバレーで米国エンジニアリングチームを立ち上げ。Push通知基盤のTechLeadとして日米中にまたがる組織を牽引し、MAU2000万を超える大規模なPush通知基盤をマネジメント。Faciloを共同創業し、2025年に帰国。

CTOが書類選考から一次面接を担当する理由とは?

――FaciloではCTOの梅林さんが書類選考と一次面接を担当しているそうですね。選考のプロセスと背景をお聞かせください。

Faciloの採用プロセスは次のようになっています。

  1. カジュアル面談(CTO、HR)
  2. 書類選考(CTO)
  3. 1次面接(CTO)
  4. 2次面接(エンジニア、PdM)
  5. 3次面接(エンジニア、PdM)
  6. 最終面接(CEO)
  7. オファー面談(CTO)

まず、応募いただいた方の書類は、HRがポジション要件やご希望条件などを確認します。その後、私が書類を拝見し、面接に進んでいただくかどうかを判断。一次面談までを私が担当しています。

Faciloでは、あらかじめ評価項目を固定する構造化面接のフレームワークは採用していません。なぜなら、技術力やコミュニケーション能力、カルチャーマッチだけでなく、メンバーが「この人と一緒に働きたい」と感じるかどうかを重視しているからです。そのため、各面接では面接官がその場の状況に応じた質問を行い、さまざまな観点から総合的に判断し、最終的にはインタビューコミッティー内で意見をすり合わせています。

誰にオファーを出して、誰と働くか、既存メンバーにいい影響があるか。カルチャーマッチは十分か。そういったことを見極めるのが非常に大切で、採用にはいちばんの責任を持って取り組むべきと考えています。そして、エンジニアには開発にもっとも集中してほしいという思いもあります。採用関連の業務やコーポレートIT・セキュリティ関連の対応といった開発以外のタスクは、できるだけ私(CTO)が引き受けることで、エンジニアがプログラミングや技術検証などに専念できると考えています。

――CTO が採用プロセスの冒頭から関わるメリットはどんなところにあると感じていますか?

開発だけでなく、組織やプロダクトの中長期的なビジョンもいちばん詳しい自分が対応することで、不動産に無関心な候補者も一気にFaciloで働きたいとアトラクトできます。次の面接でも温度感高く面接に挑んでくれるので、順番をあべこべにするよりも通過率や承諾率をあげられるメリットはあると思います。

――Faciloのエンジニア採用では、どんな点を重要視して選考を進めていますか?

Faciloでは、チームで成果を出すことが最優先です。自分のタスクだけやって終わりというタイプだと合わないかもしれません。逆に、「チーム全体のアウトプットを最大化しよう」と考えられる人が多いほど、自然と助け合いが生まれて誰もが働きやすい環境になります。結果的に、会社としても高いパフォーマンスを出せますし、その点を重視しているんです。

もちろん技術力は必要ですが、それ以上にわからないことを素直にわからないと言えるか、積極的にコミュニケーションが取れるかを重視しています。

Faciloはフルリモート・ハイパーフレックス制なので、わからないことや困ったことがあっても、本人が声を上げない限り周囲は気づきにくいんです。だからこそ、「わかりません」と言ってもらえる方が安心感がありますし、チームとしても素早く助けやすい。そうした前向きなコミュニケーションを取れるかは、面接の段階でしっかり確認しています。

専業マネージャーは置かない。目指すのは「究極のマネジメント」

――Faciloではエンジニアリングマネージャーを置かない方針だと聞きました。その理由を教えてください。

Facilo でエンジニアリングマネージャーを置かないのは、エンジニアが技術的なアウトプットに集中できる環境をつくりたいからです。私自身、これまで大企業からスタートアップまでさまざまな規模の組織でエンジニアとして開発に携わってきましたが、やはり「コードを書き続ける」という行為こそがエンジニアの大きな価値だと感じてきました。

もちろん、専任のマネージャーが必要なケースもあると思いますし、チーム内での調整やメンバーをサポートする役割自体を否定するわけではありません。ただ Facilo では、マネジメントというロールを切り分けずに、フラットで風通しのいい組織運営を心がけることで調整コストを減らす。わからないところがあれば「わかりません」と素直に言ってもらい、周りのメンバー全員でサポートしたい。シンプルですが、このやり方のほうがエンジニア全員のアウトプットが最大化しやすいと感じています。

だから、マネジメントを必要としない人を採用することで、自律分散型の組織を目指しているんです。

――なるほど。チームが拡大してもその方針は変わらないのでしょうか?

チームが大きくなれば調整業務は増えるかもしれませんが、トップダウンで「明日からマネージャー制度を導入します」という形にはならないですね。メンバーそれぞれに自律的に動いてもらう前提を大事にしているので、必要があればプレイングマネージャー的なロールを増やす可能性はあるものの、「開発者はコードを書くのが本分」という姿勢は変わらないと思います。結果的にこれが、Faciloの自律分散型組織を支えているからです。

――今後組織が拡大するにつれて、採用プロセスが変わっていく可能性はありますか?

そもそも、エンジニアの皆に開発へ集中してもらうために私が担っていた部分もあります。ただ、人数が増えてくると採用関連の業務も増大してくるでしょうし、そのときに「人を見るのが好き」とか「得意」だというメンバーがいれば、その人に任せたい気持ちもあります。いずれにしても、組織が拡大した際は柔軟に体制を変えていくつもりです。

チーム全員のアウトプットを最大化するために

――先ほど、「Faciloは自律分散型の組織を目指している」とおっしゃっていましたが、具体的にはどのような状態を指しているのでしょうか?

簡単に言うと、上から管理せず、それぞれが自律的に動くことで、チーム全体のアウトプットを最大化するという考え方です。

Faciloでは朝会やスプリント管理など、一般的にプロダクトマネジメントの型だとされるやり方をあえて採用していません。メンバーそれぞれが必要だと思うタスクに手を挙げ、複数同時に進めていくケースも多いんです。

――いわゆるスプリントや進捗管理ツールを使わないことで、混乱したり遅延が起きたりするリスクはないのでしょうか?

そこは、「サボっている人はいない」と信じる性善説をベースにしています。実際、わざわざ日次で進捗を報告し合うより、必要に応じて非同期コミュニケーションで情報共有していくほうがスムーズなんですね。

もし大きなタスクが遅れそうなときは、自分から「ここが詰まっています」と声を上げる仕組みになっていますし、逆に「このタスクを手伝いたい」という人も自発的に動いてくれる。管理に時間をかけるくらいなら、その分コードを書くほうが生産的ですから。

また、チーム全体が見える形でタスクが進んでいるので、責任を個人に押し付けるようなことはほぼありません。「必要なところはメンバーと共有する」という考え方が浸透しているので、トラブルやブロッカーが発生してもすぐに相談が出てきます。

結果的に、早期にケアできる環境が整っているんですよね。誰かが見落としていても、他の人がカバーするから大きな問題になりにくい。これも自律分散型組織の大きなメリットだと思います。

――管理を削減することで生まれる利点を教えてください。

大きく2つあります。1つは、エンジニアが本来の仕事に集中できること。朝会やタスクの細かい報告に時間を取られるより、コードを書いたり設計を考えたりするほうが、エンジニアにとっては価値が高いです。

もう1つは、意思決定が早くなること。全員が自律的に動くため、いちいち上司の承認を待つ必要がなく、思いついたアイデアをすぐ形にできます。

不要な管理プロセスを省くことで、結果的にチームのアウトプットが高まると考えているんです。

――自律分散型の組織を目指す中で、メンバーが気持ちよく働き続けるために工夫していることを教えてください。

Facilo では、「個人のパフォーマンス」だけを追うのではなく、チーム全体で成果を高めることを重視しています。そのために重要なのが、メンバーそれぞれの納得感。たとえば、チケットの優先順位はPdMであるCEOから直接説明を受けたり、チケットの要件が曖昧なときはその案件に関与しているセールスやカスタマーサクセスと直接コンタクトをとって確認ができたり、すべてのタスクで腹落ち感を持って取り組んでもらえるような環境になっています。

他にも、セルフサインアップでタスクを選べるため、自分が得意な分野や興味のある領域に進んで手を挙げることができます。こうしたメンバーが能動的に仕事を選べる仕組みは、会社への帰属意識と自分ごと化を加速させられるため、feedback loopも早まりますし、サポート業務も自然に行えるようになり、結果として強いカルチャー形成にも繋がります。

また、チケットの消化速度や納期の厳守だけでエンジニアを評価しないようにしています。誰かが困っていたとして、そのサポートに回っても評価が下がらない仕組みにする。それによって自発的なフォローが自然に生まれますよね。

チーム全員のアウトプットを最大化する行動が正当に評価されるようにしています。

――とはいえフルリモート・ハイパーフレックスの環境だと、コミュニケーション不足になる不安はありませんか?

月に一度のエンジニア飲み会などを用意して、物理的に会える場をあえて設けています。オンラインだけだと伝わりにくい部分も、お互いに顔を合わせて雑談するだけで、その後のやりとりがとてもスムーズになるんですよね。

実際、フルリモートだとしても「みんなサボってるかも」と疑う必要がなければ、むしろ作業効率は上がります。Facilo では「お互いを信用する」「困ったときは声をかける」ことが浸透しているので、不安はほとんどないですね。

Faciloはチームプレーの会社。仲間と成長を実感できる

――お話を伺っていて、Faciloはチームプレーを大切にしているのだということがよくわかりました。トップダウンで何かを決めるようなケースはほぼないのでしょうか?

普段はできるだけメンバーとの合意形成を重視しています。ただ、生成AIの活用については、可能性を大きく引き出すためにあえてトップダウンで進めました。具体的には「コードを書いたら負け」キャンペーンと題して、1か月の間は強制的にAIでコードを書かせるようにしたんです。おかげで生成AI活用の知見が一気に蓄積しましたね。

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Faciloは「いいやつ」が多いので、みんな前向きに取り組んでくれました。有益な情報は独り占めせず組織内で共有してくれて。結果として、一人が得た学びがチーム全体に素早く広がり、開発効率が大きく向上する可能性が見えました。トップダウンで何かを決めたのはこの一度きりですが、こうしたチャレンジが成功したのも、お互いを助け合うカルチャーが根付いているからですね。

――CTOとして、今後Faciloをどのように成長させたいとお考えですか?

まずはプロダクトをしっかり軌道に乗せることが最優先。そのうえで、メンバーに十分還元できる形での事業拡大や上場も視野に入れています。私たち経営陣を信じてついてきてくれるメンバーたちのためにも、面白い仕事に集中できる環境をつくってみんなが報われる状態を目指しているんです。

今後も自律分散型のカルチャーを守りつつ、必要に応じて柔軟にアップデートしたいです。何を変えるにしてもメンバーとの合意形成を大切にし、「いいやつ」が能力を存分に発揮できる土壌を維持することがFaciloらしさだと思っています。

――最後に、Faciloに興味を持った読者へメッセージをお願いします。

Faciloの魅力は、管理を最小限にした自律分散型のカルチャーです。合意形成を大事にしつつも、トップダウンでガチガチに固めることはしません。僕自身が100%正しいとは思っていないので、みんなで議論しながら決めていくスタイルを続けています。

いまはエンジニアが15人の規模ですが、いずれは30人、50人と増えていくはずです。その成長過程に直接関わり、組織づくりを肌で感じられるのは大きなチャンスだと思います。CTOとの距離感も近く、フラットに意見を交わせる環境がここにはあります。ぜひ、Faciloで一緒に「面白い仕事ができる場所」を育てていきましょう。

取材・執筆・文責:河原崎 亜矢
編集・制作:Findy Engineer Lab編集部