大石 貴則(おおいし たかのり)と申します。高専の機械工学科を卒業後、建設業界の製造業で働く機械設計のエンジニアでしたが、新卒2年目にWeb業界に転身。現在は物流業界向けSaaSプロダクトの開発に従事しています。
専門が機械系にも関わらず、私は第二新卒でWebエンジニアにキャリアチェンジをし6年が経過しました。今回は、そのキャリアの分岐点と、変わらない情熱についてお話しします。
キャリアチェンジを目指されている方々の後押しができれば幸いです。
機械設計エンジニアのキャリア
まずはじめに、機械設計エンジニアのキャリアを始めた経緯についてご説明します。
小学生の頃、当時住んでいた地域は工業団地がそばにあり、工場が身近な存在でした。ある日、地域住民の学生を対象とした工場見学に参加したことが大きな転機になります。工場の内部では計算され尽くされた設計をもとに、製品を安全に効率良く生産するための工夫がされていました。そして作られた製品が世界中で使われ、人々の生活を支えていることに心動かされました。
そこから機械業界に興味を持ち、モノづくりに携わりたいと高専に入学し機械工学を学びました。高専卒業後、新卒で建設業界の機械メーカーに就職し、機械設計エンジニアとして活動していました。
メーカーでは、建物の外壁をメンテナンスするために使われる機械足場の設計・検査を担当しました。自分が設計した図面が実際にモノになり現場で使われることを通じて、世の中の建物がより安全に、美しくなることにやりがいを感じていました。
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Webエンジニアとしてのキャリアは「趣味」から始まった
他方で、Webエンジニアのキャリアは「趣味」から始まりました。きっかけは、小学生の頃に父親からパソコンを買ってもらい、ホームページ制作を始めたことです。
当時は個人サイト全盛期の時代で、多くの人が自分のホームページを持ち、運営していました。また、Twitterやニコニコ動画などのプラットフォームも台頭し、各々が様々な自己表現を行い、多くのコミュニティが生み出され、温もりのあるWebの力に魅了されました。
そこで私も自分の場を持ちたいと中学生の頃にホームページビルダーを購入してWebサイトを開設しました。しかし、ホームページビルダーだけでは作りたかったインタラクティブなコンテンツが実現できず、JavaScriptやCGIを調べながら独学で実装するようになりました。今となればこれがプログラマーとしての第一歩でした。
メーカーに入社してからは、独学でWordPressを用いたアフィリエイトサイトの運営を始めました。しかし、アフィリエイトの収益よりもPHP、CSSやJavaScriptによって思い描いたWebサイトを構築することの方が楽しく感じるようになりました。
キャリアの分岐点 ―Web開発が「趣味」から「キャリア」へ―
新卒1年目の頃、機械設計エンジニアのキャリアは順調に進んでいたものの、「趣味」で始めたWeb開発の活動において、様々な良い影響が現れました。
- 職場で業務効率化ツールを開発し、社内表彰制度で受賞
- 運営していたアフィリエイトサイトを見たWeb企業の方にお声がけを頂く
- 弟が関わっていたコミュニティの公式サイトを構築し、コミュニティメンバーを増やすことに成功
内発的動機に目を向けると、Web開発を通じたモノづくりを行うことで自分自身が楽しみながら力を発揮でき、結果として周囲から評価されるようになったのだと感じました。
さらには世の中を見渡すと、Web業界がDXやSaaSなどのプロダクトを通じて人々の生活を支え世の中にインパクトを与えて始めていることに気が付きました。自分もWebエンジニアとして活動することで世の中を良くしていきたい思い、新卒2年目の春、Webエンジニアへの転向を決意しました。
Webエンジニアとしてのキャリア
Webエンジニアは業務未経験であったため、運営していたサイトをポートフォリオとして提出し、企業にアピールしました。その結果、SES企業にWebエンジニアとして採用され、キャリアがスタートしました。
最初はPHP・Pythonのエンジニアとして業務経験を積みました。仕事として開発することは趣味とは違う難しさがありましたが、業務を通じてステークホルダーとのコミュニケーションやチーム開発の大切さを学びました。また、新たなチャレンジに何でも手を挙げるようにしました。例えば、フロントエンドができるエンジニアが不足していると聞いたので、自ら勉強してReactとVueの案件に参画しました。
SES企業に入社してから2年後、SaaSのビジネスモデルの美しさや、お客様を含む様々なステークホルダーと関わりながら仕事をしたいと思い、物流業界向けのプラットフォームを経営している現職に入社しました。現職に入ってからは、SaaSのグロースに携わりました。プロダクトマネージャーやお客様と連携を取りながらアップセルの新機能を担当しリリースを行いました。
その後、iOS, Androidアプリのリプレイスプロジェクトが始まると聞いて、自らFlutterを勉強して参画しました。業務経験はありませんでしたが、Webプロダクト側の視点からプラットフォーム上で一貫した体験を実現することができました。
Webエンジニアになってから6年が経過した現在は、ディスカバリーフェーズから新規SaaSプロダクトの開発に携わっています。
ここまでキャリアを積み上げられたのは、常に幅広くアンテナを張り、チャンスが来たら手を挙げて未経験でもチャレンジする姿勢を持ち続けてきたからだと思います。後から、このような行動が「計画的偶発性理論」と呼ばれるものだと知りました。
また、直近は登壇やブログの執筆などでのアウトプット活動を増やすようになりました。独学で勉強した際に様々な個人サイトやブログにお世話になっていることもあり、自分もナレッジをシェアすることを通じて、誰かの役に立てられたらと思っています。
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キャリアチェンジによって変わったこと
機械設計エンジニアからWebエンジニアへ転身したことによる最も大きな変化が、イテレーションサイクルの速さです。
機械業界の場合、設計後に承認・製造・組み立て・検査・設置の行程を経るまでに数カ月の時間がかかります。ミスをした場合には手戻りが発生し大きなコストが発生するだけでなく、人命に関わることもあります。そのため、機械設計エンジニアは失敗をせずに着実に成果を出すことが求められます。また、価値提供できたかどうかの検証にも時間がかかります。
一方でWeb業界の場合、無形物だからこそ修正にコストがあまりかからず、毎日リリースを行うことができます。そのため、アジャイルに価値を届けることで仮説検証を高速で回すことが求められます。ステークホルダーからのフィードバックを受けて迅速に修正・改善を行い、プロダクトへ迅速に反映することで価値提供の検証を行います。
小さく失敗しても良いのでアジャイルに価値を届け、フィードバックを受けて改善するを繰り返すループが速くなったという点で働き方が大きく変わりました。
キャリアチェンジによって変わらなかったこと
転身しても変わらなかったのは、モノづくりへの情熱です。
機械業界では、自分の設計したモノが実際に作られ、建物のメンテナンスに使われることを通じて、世の中の建物がより安全に美しくなることにやりがいを感じていました。
一方で現在開発しているSaaSプロダクトは無形物でありながらも、作ったプロダクトを通じてお客様の労働時間の削減や属人性の解消に寄与しています。結果的にプロダクトを通じて物流業界を持続可能にすることに貢献ができ、モノづくりとしてのやりがいを感じています。
キャリアチェンジを振り返って
以上、機械設計エンジニアからWebエンジニアへの転身を通じて、今のキャリアに至るまでの私のキャリアをご説明しました。
Webエンジニアのキャリアとしては遠回りしており、小学生から途絶えずにWebエンジニアとしての活動を続けていけていれば、より強いエンジニアになることができたのではないかと思うこともあります。
しかし、機械工学の学びや、新卒で入社した機械業界での経験も積めたことで視野が広がりました。現在でも、物流業界向けのSaaSプロダクト開発において活かせている場面が多々あります。
将来的には今までの経験をかけ合わせたキャリアを模索していきたいです。例えば、工場などの巨大なアセットを持ちながらもDXが遅れている企業に対して改革を主導することで、世の中により大きなインパクトを与えていくようなことができたら…
そのためにも、今後もアンテナを張り能動的に行動することでキャリアを積み上げていきたいと考えています。
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