「パパ、どうして技術記事を書くの?」無職やめ太郎が関西型言語でアウトプットを続ける理由

無職やめ太郎(@Yametaro1983) さんは、株式会社ゆめみに所属するエンジニアです。エンジニアコミュニティサービス「Qiita」にて、関西型言語(関西弁)を駆使した文体で記事を執筆・投稿しており、多くの読者からの人気を集めています。

Findy Engineer Lab編集部はそんなやめ太郎さんに「普段どおりのポップな文体で、ご自身のキャリアを振り返る記事を書いてください」とリクエストしてみました。知られざる「やめ太郎さんが技術記事を書き続ける理由」とは?

とある休日

「ねぇ、パパ?」

ワイ「なんや?娘ちゃん」

「パパはどうして、関西弁のコントみたいな記事をQiitaに書くの?」

ワイ「コント・・・?」
ワイ「ああ、関西型言語による技術記事のことやな」

「なんでもいいけど、あの関西弁の会話調の記事を書き始めたきっかけを知りたいな〜と思って」

ワイ「うーん、それはなぁ」

きっかけは2ちゃんねる

「もしかして、2ちゃんねると間違えて投稿しちゃったの?」

ワイ「そこまでアホちゃうわ」
ワイ「でもな、確かに2ちゃんねるも関係あるんや」
ワイ「ワイは昔、引きこもっててヒマやったから、2ちゃんねるをよく見てたんや」

「へぇ〜、かわいそうだね」

ワイ「いや勝手に同情すな」
ワイ「こちとら楽しく見てんねん」
ワイ「とにかく、2ちゃんねるが大好きで、人気のスレッドなんかをよく見てたんや」
ワイ「そしたら、関西弁の独り言形式で自分語りをしている人らが沢山おってな」
ワイ「それを読んでて、こう思ったんや」

独り言形式の文章って、まるで自分が体験したみたいに、頭にスッと入ってくるなぁ・・・

「なるほどねぇ」
「2ちゃんねるのパクリだったんだね」

ワイ「い、いや・・・関西弁はみんなのものやから(震え声」
ワイ「OSSを利用させてもらってる感じや」
ワイ「パクリとは似て非なる行為やな」
ワイ「とにかく、この書き方はプログラミングの記事にも使えそうや!って思ったんや」

「へぇ〜」
「なんで関西弁の独り言形式が、技術記事に使えそうだと思ったの?」

ワイ「それはな」
ワイ「たとえばプログラミングの勉強をしてて」
ワイ「うーん、難しくてよく分からん!ってことあるやろ?」

「うん」

ワイ「そんで、最初はよく分からんかったけど」
ワイ「もしかして、こういうことか?ってだんだん分かってきて」
ワイ「ああ、こういうことだったんや!ってなる瞬間があるやろ?」

「よくあるね」

ワイ「その一連の理解のプロセスを」
ワイ「独り言形式で、余すことなくワイ君に語ってもらえば」
ワイ「読者さんにも、理解のプロセスを追体験してもらえるんやないか、って」
ワイ「そう思ったんや」

「なるほどね」
「パパの理解のプロセスを、没入しやすい一人称視点で再現すれば」
「読者さんも、階段を一段一段のぼるように理解にたどり着けるんじゃないか」
「そう考えたわけね」

ワイ「その通りや」

作詞の経験が役に立った

「でも、自分が理解したプロセスを独り言形式の文章で再現するなんて」
「思いついてすぐにできるものなの?」
「自分の考えを俯瞰で見つめなきゃいけないから、なんか面倒くさそう」

ワイ「えっと、それはな・・・」
ワイ「ワイは昔、バンドをやってたんや」

「知ってる」
「前に曲を聴かされたもん」
「あのバンドのボーカル、歌ヘタだったよね」

ワイ「いやワイがボーカルやっちゅうねん」
ワイ「それはええねんけど」
ワイ「バンド活動をする中で、よく歌詞を書いてたねん」

「へぇ〜」

ワイ「そんで、作詞をするために」
ワイ「自分が物事をどんな風に感じているか、とか」
ワイ「そういう事を俯瞰してみて、文字として書き起こしてたんや」

「なるほどね」
「作詞をするという行為が、自己の認知の仕方を認知するための訓練・・・」
「つまり、メタ認知の訓練になっていたんだね」

ワイ「よく分からんけど、そういうことや」

コールセンターでの勤務経験も役に立った

「でも、自分の考えを俯瞰で見つめるだけじゃ、プログラミングに関する記事は書けなくない?」
「技術的なことを分かりやすく説明するスキルは、どうやって身につけたの?」

ワイ「それはな、昔コールセンターに勤務してた時の経験が役に立ったんや」

「へぇ〜」

ワイ「ワイは30歳まで、IT系のコールセンターで働いてたんや」
ワイ「来る日も来る日も、色々なことを電話でお客様に説明してたで」

「へぇ〜、30歳までかぁ」
「じゃあ、プログラマーとしてのデビューは遅かったんだね」

ワイ「せや」

「コールセンターでは、どんなことをお客さんに説明してたの?」

ワイ「パソコンをインターネットに接続する方法とか」
ワイ「メールソフトの設定方法とか」
ワイ「あとは、レンタルサーバの使い方なんかも説明してたで」

「なるほどね」
「そこでIT的な説明スキルを養ったんだね」

ワイ「そんな気がするわ」
ワイ「毎日毎日、色んなお客さんにパソコンの操作を説明する中で」
ワイ「この言い回しだと、お客さんを誤解させてしまったな〜、とか」
ワイ「この順序で話すと伝わりやすかったな〜、とか」
ワイ「そういうパターンを大量に学習できたんや」

「へぇ〜」
「その経験が、今になって活きてるんだね」

ワイ「せやな〜」
ワイ「そのコールセンターでは、派遣社員だったから」
ワイ「あんまり将来に繋がりそうな仕事ではなかったけど」
ワイ「それでも一生懸命やっといて良かったわ」

「そうだね」
「なんだかんだ、自分の力になるからね」

Qiitaの記事のおかげで転職もできた

「パパ、今の会社には何がきっかけで転職したの?」

ワイ「実はそれがQiitaきっかけやねん」

「へぇ〜、そうなんだ」

ワイ「32歳で初めてWeb制作会社に就職して、HTMLコーダーとして働いていたんやけど」
ワイ「その会社を2018年に辞めてしもうてな」
ワイ「しばらく無職だったんや」

「そういえば、家で毎日アニメを見てた時期があったね」

ワイ「せや」
ワイ「そんで、就職活動をするのがイヤやったんや」

「分かる」
「色んな会社に面接を受けに行って、けっこう大変だよね」

ワイ「なんで6歳で分かんねん」
ワイ「面接というより、ワイの場合は書類審査を通過するのが難しかったんや」

「ああ、確かに」
「高卒だし、30歳までほぼプログラミング未経験だったし」
「要は・・・終わってるもんね」

ワイ「せや」
ワイ「無職オワ太郎、いうてな」
ワイ「ええ加減しばくぞ」

50社に応募して、面接してもらえるのは3社

ワイ「ワイは30歳のときに独学でJavaScriptを勉強し始めて」
ワイ「31歳で初めてのエンジニア転職に挑んだんやけど」
ワイ「実務未経験者やし、さっき娘ちゃんも言うてたとおり、高卒やし」
ワイ「転職サイトでいくら応募しても、ほとんど書類審査で落とされてしまってたんや」

「けっこう大変なんだね」
「ドットインストールでいっぱいプログラミングのお勉強してたのにね」

ワイ「ほんまやで」
ワイ「50社くらい応募して、面接してもらえたのは3社だけやったわ」
ワイ「しかも、手当たり次第に応募してたもんやから」
ワイ「間違ってWebデザイナーの枠に応募してもうたこともあったわ」
ワイ「そしたら逆に書類審査を通過してもうてな」

「え、それでどうしたの?」
「間違えましたって言ったの?」

ワイ「いやもう、デザイナー志望です!って言い張ったわ」

「そんな、デザインなんてできないじゃん」

ワイ「そこは大丈夫や」
ワイ「ちゃんと落ちたから」

「何も大丈夫ではないけどね」

ワイ「まあとにかく、その時の経験があったから」
ワイ「もう、履歴書や職務経歴書で勝負するのは無理やろ!と思ってたんや」

技術記事に賭けてみることに

「それでQiitaに記事を書いてみたってこと?」

ワイ「そうや」
ワイ「面白く分かりやすく、変な関西弁の記事を書き続ければ」
ワイ「誰かが、なんやこのアホは!?って見つけてくれて」
ワイ「どこかの会社さんが、ワイにオファーをくれるはず・・・」
ワイ「そう考えてたんや」

「こ、子供もいるのに無茶な戦略を立てたね・・・」
「それで、結果的に今の会社からオファーがあったってこと?」

ワイ「いや、どこの会社さんからもオファーはなかったんや・・・」

「え・・・」
「技術記事って、プログラマーとしての人となりが表れるから」
「意外と良い作戦かと思ったんだけど、ダメだったんだ・・・」

ワイ「技術記事を書くことが就職活動に繋がるのは間違いないと思うんやけど」
ワイ「ワイの記事がフザケ過ぎてて、企業さんに敬遠されたのかもしれんな」

「それはそうね」
「でも、じゃあどうやって今の会社に就職したの?」
「さっき、Qiitaがきっかけって言ってなかったっけ」

ワイ「せやで」
ワイ「Qiitaを通じて、ゆめみの社員さんと仲良くなったんや」
ワイ「お互いの記事を読んだり、Twitterでも相互フォローになったりしてな」

「そこから紹介してもらったってこと?」

ワイ「紹介というか、2018年のクリスマスイブに」
ワイ「誰かクリスマスプレゼントに職をくださいやで〜」
ワイ「そうTwitterで呟いてみたんや」

「そしたら、サンタさんが職をくれたの?」

ワイ「いや違いまんがな」
ワイ「サンタさんなんて実在・・・いやいや実在するんやけど」
ワイ「パパは大人やから貰えへんかったんや」

「そうだよね」

ワイ「でも、そのツイートを見た、ゆめみ社のカリポリ君ていう子が」
ワイ「カジュアル面談をしてくれたんや」

「わ〜、変わった人もいるんだね」

ワイ「せやな〜」
ワイ「無職のクリスマスツイートを見て」
ワイ「面談してくれるんやもんな〜」

「ね〜」

ワイ「それで、カジュアル面談して、正式に面接を受けて」
ワイ「落とされそうなギリギリだったみたいやけど」
ワイ「なんとか今の会社に就職できたんや」

「Qiita書いてて良かったね」
「私も食いっぱぐれないで済んだよ」

ワイ「ほんまやで」

今でも書き続ける理由

「でも、今の会社に就職した後もQiitaに記事を書いてるよね」
「就職のためだけじゃなかったの?」

ワイ「いやぁ、書くことにハマってしまってな」
ワイ「単純に楽しいから書いてんねん」

「そっかぁ」

ワイ「あとは、Qiitaで記事がバズると」
ワイ「所属会社の宣伝にもなるみたいなんや」

「ああ、そうみたいね」

ワイ「実際、ワイの記事を読んでゆめみ社を知った若い子らが」
ワイ「何人も入社してきてるんや」

「へぇ〜、良かったね!」

ワイ「それが、あんま良くないねん」
ワイ「ワイの記事をきっかけに応募してきたのに」
ワイ「スキルがワイより遥かに高くて、逆にワイの首を閉めてんねん」
ワイ「そのうちワイがクビになりそうやで」

「あらら・・・」

ワイ「でも、いいこともあったで」
ワイ「会社の採用広報に貢献してくれてありがとう〜、って」
ワイ「たまに会社から20万円くらい特別手当が振り込まれんねん」

「へぇ〜」
「エンジニア不足の時代だしね」
「パパも意外と役に立ってるんだね」

ワイ「せやで」

エンジニアが情報発信をする意義

「パパはそんな感じで、お金のために技術記事を書いてるみたいだけど」

ワイ「いや、言い方」

「色んなエンジニアさん達が情報を発信してくれることって、すごく意義があるよね」

ワイ「せやな〜」

「やっぱり一番は、ライブラリやフレームワークの公式ドキュメントを読むことかもしれないけど」
「それ以外にも色んな人が記事を書いてくれると、やっぱり学びやすいもんね」

ワイ「そうそう」
ワイ「ワイの記事なんかは、たまに間違ってたりしてアレやけど」
ワイ「有名なつよつよエンジニアさん達が書いた記事なんかは」
ワイ「すごく勉強になるよな」
ワイ「何回もお世話になってる記事もあるわ」

「私も〜」

ワイ「それにやっぱり、誰かに伝えるために記事を書くことで」
ワイ「自分の理解も深まる気がするわ」

「分かる」

ワイ「例えば、ある技術について記事を書こうとした時なんかに」
ワイ「けっこう自分自身の知識の穴に気づくねん」

「なるほどね」
「なんとなく理解はしていて、それなりにその技術を使いこなしてはいるけど」
「人に伝えようとしてみると、細かい知識不足が浮き彫りになってくることがあるよね」

ワイ「そうやねん」
ワイ「そういう意味では、技術記事を書くことは、自分のためにもなるな」

セルフブランディングとしても効果的

「あと、Qiitaを書き始めて、ちょっと有名になったんじゃない?」

ワイ「せやな〜」
ワイ「大した技術力もないのに、ありがたいことやで」

「Qiitaに記事を書き始めた頃なんて」
「Twitterのフォロワー数は50人以下だったよね」

ワイ「そうやったな」
ワイ「Qiitaで記事を書くたびに」
ワイ「そこからの流入でフォロワーさんが100人以上増えたりして」
ワイ「3年半でフォロワー数が200倍近くに増えたで」

「200倍はすごいね・・・!」

業務上のコミュニケーションにも好影響が

ワイ「あとは、たくさん記事を書いたことで」
ワイ「テキストでの表現力が鍛えられて」
ワイ「仕事中にもその恩恵を感じてるわ」

「そっかぁ」
「今や、大リモートワーク時代だもんね」
「昔と比べて、Slackなどのチャットツールでやりとりをする機会が」
「すごく増えてるよね」

ワイ「そうやねん」
ワイ「ビデオ会議とかもあるんやけど」
ワイ「やっぱ、チャットでのやりとりも多いねん」
ワイ「そこで、ちょこちょこっと分かりやすい説明をできたりすると」
ワイ「けっこう捗るねん」

「それはありそうだね」

ワイ「箇条書きとか、引用とか、太字とか」
ワイ「そういう、普段からQiitaで使ってる装飾なんかを上手いこと使って」
ワイ「ちょっと工夫して伝えるだけで」
ワイ「今までだったら何往復も必要だったやりとりが」
ワイ「一回で済んだこともあるで」

「技術記事を書くことで、そんな素敵な副産物もあるんだね〜」
「私もなるべく書くようにしよ〜っと!」

その日の夜

「パパ、今日は色々と教えてくれてありがとう」

ワイ「かめへん、かめへん」
ワイ「でも、なんでパパの話を聞きたかったん?」

「実は小学校の宿題で、親の仕事のことを作文にしないといけないの」

ワイ「そっかそっか」
ワイ「メモとか取ってないけど、大丈夫かいな?」
ワイ「もう一回お話しよか?」

「ううん、大丈夫」
「パパの経歴、無職期間とかでスッカスカだから」
「ママに聞くことにした!」

ワイ「ファーーーーーー(失神)」

〜おしまい〜